スマートテクノロジー 新技術説明会(3)
日時:2019年01月24日(木) 10:30~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、大阪府立大学、大阪市立大学、兵庫県立大学
後援:特許庁、関東経済産業局、関西SDGsプラットフォーム
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)アプタマー修飾粒子の誘電泳動に基づく分離操作不要な簡易センサの開発
兵庫県立大学 大学院物質理学研究科 物質科学専攻 教授 安川 智之
新技術の概要
アプタマー修飾微粒子に標的タンパク質が結合することにより、誘電泳動挙動が変化するシステムを開発した。アプタマーは標的タンパク質の選択的識別能を、微粒子の誘電泳動挙動はシグナル変換能を担うため、標的タンパク質溶液を混ぜる、デバイスに混合溶液を導入、電圧印加で標的タンパク質を迅速・簡便に計測できる。
従来技術・競合技術との比較
イムノクロマトグラフィーは、自動分離機能を採用した迅速計測可能であるが、POCTの観点から更なる迅速化が切望されている。本システムは、アプタマー修飾微粒子への標的タンパク質の結合により誘電泳動挙動がすぐに変化する迅速性と分離操作を加えることなく計測可能な簡便性を有する検出法である。
新技術の特徴
・混ぜるだけで標的タンパク質を測れる
・迅速に標的タンパク質を測れる
想定される用途
・血中タンパク質濃度の定量
・インフルエンザなどの感染症診断
- 情報
2)歩き方でわかる! 疾病診断支援と人物同定
大阪市立大学 大学院工学研究科 電子情報系専攻 准教授 中島 重義
新技術の概要
歩行者の動きを測定することにより、疾病診断と人物同定の二種の測定を行うことができた。疾病診断は、歩行者に加速度計を装着し、わずかな歩数で脳卒中の診断を行うことができる。また、人物同定は、歩行者の動画像から重心の動きを検出し、その重心の動きにより人物の特定を行うことができる。
従来技術・競合技術との比較
従来の加速度計による脳卒中の診断では、軽度の脳卒中片麻痺患者と健常者の区別がつかなかったが提案手法では可能であり、疾病の早期診断を行うことができる。また、従来の歩行動画像からの人物同定では服装の変化に対応できないが、提案手法では重心の動きを特定できれば、服装の変化、変装に係わらず人物を同定できる。
新技術の特徴
・加速度を周波数変換してその好調周波数に応じて両対数グラフにした直線近似を使った
・動画像の歩行人物領域の集積画像を解析する従来手法に比べ、集積画像の微分を使用した
想定される用途
・スマートフォンを腰につけてもらい、脳卒中の症状を発見したら、本人及び担当医療スタッフにアラートを送る
・監視カメラに映った犯罪者が誰か同定する
・病院や介護施設で患者や利用者の追跡をして、歩行不能になったり施設外に出たらアラートを鳴らす
- 医療・福祉
3)疾病の超早期診断を可能にするプリンテッド光学センサーの開発
大阪府立大学 大学院工学研究科 物質・化学系専攻 准教授 遠藤 達郎
新技術の概要
本技術は、認知症・がん・生活習慣病などの重篤化を未然に防ぎ、医療費負担の軽減に貢献することを目指した光学センサーを提供するものである。本光学センサーは、ナノメートルサイズの周期構造を有し、既存の疾病診断技術よりも高感度にマーカー分子を検出・定量することが可能である。また、印刷技術を利用して作製することから安価にセンサーを製造することも可能である。
従来技術・競合技術との比較
酵素免疫測定法と比べ、酵素や蛍光色素などの標識剤が不要、かつ安価である。また抗原抗体反応やDNAハイブリダイゼーション等種々の生化学反応を検出することが可能である。加えてイムノクロマトグラフィーと比べ、50倍以上低濃度の疾病マーカー分子を検出することが可能である。
新技術の特徴
・酵素・蛍光色素などの標識剤が不要
・pg/mlオーダーの濃度域でマーカー分子を検出することが可能
・測定系などが簡易であり、スマートフォンなどでも測定系を構築することができる。
想定される用途
・疾病の超早期診断
・薬剤候補のスクリーニング
・DNA・アミノ酸シーケンサー
関連情報
サンプルあり
- 環境
4)大面積を自然に冷やす薄型蒸発パネル
大阪市立大学 大学院工学研究科 都市系専攻 教授 西岡 真稔
新技術の概要
表面を透湿防水膜で覆った薄型のパネル形状の蒸発冷却装置の技術提案である。基本機構には動力を用いず、パネル内部に水を貯留し,パネル表面の透湿防水膜を通して水を蒸発する単純な機構により、植物の葉の蒸散作用と似た冷却効果を発揮する。
従来技術・競合技術との比較
ヒートアイランド対策や屋外の暑熱環境対策として、濡れた表面を形成し蒸発冷却を行う技術として、表面に水膜流下させる方法やミストを吹き付ける方法があるが,本技術では水を飛散することなく高い蒸発性能(蒸発効率約70%)を安定して持続することができる。
新技術の特徴
・動力を使わず、安価で大面積の蒸発冷却面を形成できる
・給水は、パネル上端からパネル内部へと注ぐだけの単純な方法
・水の飛散の心配が無く、設置場所が限定されない
想定される用途
・屋外や半屋外用の、太陽光が当たっても熱くなることのない日除けや衝立
・室内用の加湿装置
関連情報
サンプルあり
展示品あり
- 計測
5)ホログラフィ技術を用いた大面積ナノレベル平面度・形状・粗さ測定装置
兵庫県立大学 大学院工学研究科 電子情報工学専攻 特任教授 佐藤 邦弘
新技術の概要
本発明は、ディジタルホログラフィを用いた高速高精度光計測に関する。ワンショットディジタルホログラフィを用いた大面積被測定面のナノレベル平面度計測、高分解能ナノレベル凹凸計測、およびナノレベル表面粗さ計測の技術を提供する。球面波光の解析解を基準にして測定の高精度化を実現する。
従来技術・競合技術との比較
高精度平面度計測のためのフィゾー干渉計と比較すると、参照平面基板が不要であり、被測定面の大口径化が可能である。また、種々の調整機構が不要であり、計測の高精度化が可能である。ナノレベル表面形状計測のための白色干渉計と比較すると、走査台が不要であり、大面積表面の高速かつ高分解能な計測が可能になる。
新技術の特徴
・ワンショットディジタルホログラフィによる大開口光波の高速記録
・結像レンズを使用しない正確な光波記録と解析解を用いた正確な光波再生
・光波の位相分布を用いた高分解能ナノレベル高さ分布計測
想定される用途
・シリコンウェハーやハードディスク基板、フォトマスクなどの大面積ナノレベル平面度計測
・液晶基板や薄膜電極、バンプ、フォトマスクなどの高速高精度高分解能ナノレベル表面凹凸計測
・金属研磨面や光学部品、光学フィルムなどのナノレベル表面粗さ計測およびキズ・ホコリ計測
- 製造技術
6)超高速・大規模構造解析による溶接変形・残留応力シミュレーション
大阪府立大学 大学院工学研究科 航空宇宙海洋系専攻 准教授 柴原 正和
新技術の概要
本研究では、世界最速レベルの溶接力学(溶接変形・残留応力・ひずみ)解析ソルバーを開発した。この開発により、世界で初めて100万要素、100パスの溶接力学解析を実現した。本手法は、溶接力学解析のみならず、伝熱解析や振動解析、強度解析など、様々な用途に活用することができるため、将来性の高い解析手法であると考えられる。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、解析時間の制約により10万要素程度しか解析することができなかったが、本解析ソルバーを用いることで、1000万要素以上の解析規模の溶接力学(溶接変形・残留応力・ひずみ)解析が可能となった。この開発により、実用構造物の実大溶接力学解析が可能となった。
新技術の特徴
・超高速
・低メモリ消費量
・詳細な実大構造解析が可能
想定される用途
・溶接変形・残留応力解析
・3D積層造形時の変形・応力解析
・非線形構造解析
- 材料
7)ケイ酸ガラス系繊維の簡易合成法とその応用
兵庫県立大学 大学院工学研究科 化学工学専攻 准教授 飯村 健次
新技術の概要
無機繊維であるケイ酸ガラス繊維を遠心紡糸法により紡糸する技術を開発した。得られた繊維がイオン交換能を有することを明らかにし、この特性を利用して鉛蓄電池用セパレータ等への適用の可能性を検討した。その結果、鉛イオンを吸脱着することで、セパレータ内部への硫酸鉛の蓄積を大幅に低減可能なことを見出した。
従来技術・競合技術との比較
新規に開発した紡糸法は、低エネルギーで大量生産に向くだけでなく、繊維が柔軟であり種々の形状に加工可能である上に、イオン交換能を有する。鉛畜電池用セパレータに用いた場合、従来の吸収性ガラスマット式鉛蓄電池用セパレーターはイオン交換能がなく、電池内で硫酸鉛の析出を促進し、短絡を引き起こす原因となるが、本繊維を用いることで短絡防止並びに大幅な小型化が期待できる。
新技術の特徴
・無機繊維の低エネルギー、大量合成が可能
・イオン交換能を有する
・鉛蓄電池セパレータとして即応
想定される用途
・重金属回収
・鉛蓄電池セパレータ
・アルカリ二次電池用セパレータ
- 計測
8)大面積・多機能フレキシブルセンサシート
大阪府立大学 大学院工学研究科 電子・数物系専攻 准教授 竹井 邦晴
新技術の概要
本技術は、新たな構造を提案することでフレキシブルフィルム上に高感度な化学センサを実現したものである。本技術により従来の化学センサ(本研究ではpHセンサ)の感度の4倍以上を可能としました。また同時に非常に安定な温度センサの集積化にも成功しており、今後の健康管理やロボット応用などに展開が期待できます。
従来技術・競合技術との比較
従来の化学センサは、電気化学法での計測であるためネルンストの法則により室温で約60 mV/pHの感度という制限がありました。本技術は、電荷転送・蓄積技術を用いることで計測感度を自由に向上させることが可能となります。これにより本開発では約4倍の感度である240 mV/pHを可能としました。
新技術の特徴
・電荷転送・蓄積技術を有したCharge-Coupled Device (CCD)構造をフレキシブルフィルム上に実現
・本CCD構造をpHセンサ応用することで高感度センサの実現
・非常に安定な溶液形成したフレキシブル温度センサの実現
想定される用途
・健康管理デバイス
・ロボット皮膚
・IoTデバイス
関連情報
展示品あり
- 製造技術
9)マイクロリンクルを利用した転落液滴の運動コントロール
大阪市立大学 大学院工学研究科 機械物理系専攻 教授 加藤 健司
新技術の概要
引っ張りひずみを与えた母材上にポリマー薄膜を施した後、高温でひずみを除去すると、薄膜が座屈して数μmの波長をもつリンクル(しわ)が形成される。リンクルの溝に水平、垂直方向で液滴のぬれ性(接触角)が変化する性質を利用して、リンクルの溝を斜めにした表面上で液滴を転落させ、転落方向が重力より傾いた方向へと制御できることを示した。
従来技術・競合技術との比較
微量で高価な試薬の混合、反応等では、壁面上の液滴を運動制御する技術が重要となる。従来、電極を埋め込み、温度差による表面張力変化で液滴を駆動する手法や、電場によるぬれ性変化を利用する手法が提案されている。本手法は、外部エネルギーの必要がない重力による液滴転落を利用して、リンクルによるぬれ異方性で方向制御を行うものである。
新技術の特徴
・外部エネルギーを必要としない液滴駆動制御方法である。
・電極等の複雑な構造を必要としない。
・物理的なリンクルによるぬれの異方性を利用するため、経年変化のない制御が可能である。
想定される用途
・微量液体の混合
・微量液体の分離
関連情報
サンプルあり
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URL:http://www.u-hyogo.ac.jp/research/index.html
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