広島大学 新技術説明会
日時:2018年10月11日(木) 12:55~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、広島大学
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)有機資源から有機酸を経由して液体燃料を製造する
広島大学 大学院先端物質科学研究科 分子生命機能学専攻 教授 中島田 豊
新技術の概要
我々は、ギ酸から吉草酸までの低級有機酸を原料として、ブテン酸エステルやペンテン酸エステルを90%以上の含有率で体内に蓄積するNitratireductor sp. OM‐1株を発見した。本菌を利用すれば、嫌気消化プロセスの中間物質として生成する低級脂肪酸を原料とすれば、有機成分を限定することなく様々な有機資源からのバイオディーゼル液体燃料製造が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
従来の植物油脂や酵母により生産されるトリアシルグリセロールを化学反応でエステル化するバイオディーゼル生産法とは異なり、本菌を用いた場合、脂肪酸は生体内ですでにエステル化されており、ワンポッド・ワンステップで、より安価にバイオディーゼルを生産できる。
新技術の特徴
・嫌気的生物分解が可能な有機資源を有機酸経由で全て利用できる。
・脂肪酸生成とエステル化工程をワンポッド・ワンステップで行える。
・微生物育種により様々な成分の液体燃料を製造可能
想定される用途
・様々な有機資源からの液体燃料製造
・メタン発酵(嫌気消化)廃液などの省エネルギー型排水処理
・デザインドリッキッドフューエル製造
関連情報
・サンプルあり
- 製造技術
2)リチウムの機能性を利用した低温/低圧窒化物合成プロセス
広島大学 自然科学研究支援開発センター 先進機能物質部門 准教授 宮岡 裕樹
新技術の概要
様々な窒化物が機能性材料として実用されているが、窒素分子が非常に安定であるため、窒化物合成では触媒や高温/高圧条件が求められることが多い。本研究では、リチウムの有する高い窒素解離能や拡散能といった機能性を利用し、既存技術よりも低温、低圧で窒化物を合成する技術を提案すると共に、その研究開発を進めている。
従来技術・競合技術との比較
本技術では、リチウム合金を擬触媒として用いることで、大気圧、室温-500 Cで窒素の解離/利用が可能である。実際、本技術を用いることで、300-400 ℃、1気圧でアンモニア合成が可能である(既存技術:400-600 ℃、200-400気圧)。また、本反応では、リチウム合金の化学反応を触媒的に利用するため、貴金属触媒等を必要としない。
新技術の特徴
・低温/低圧条件下での窒素分子の解離/原子化
・活性窒素の生成/利用
・貴金属触媒を要しない化学反応を用いた擬触媒プロセス
想定される用途
・アンモニア等の液体及び気体窒化物の合成
・GaNやTiN等の固体窒化物の合成
- アグリ・バイオ
3)細菌による化合物半導体の合成
広島大学 大学院先端物質科学研究科 分子生命機能学専攻 准教授 岡村 好子
新技術の概要
InGaAsなど、III-V族の化合物半導体を、細菌の生物変換システムを利用して常温常圧で合成する。原料金属は水に溶かしたイオン態でよいため、排水中の原料金属イオンを回収しながら、再利用する技術である。
従来技術・競合技術との比較
II-VI族化合物半導体の細菌を介した合成法の報告はあるが、III-V族は世界初である。
新技術の特徴
・高温でヒ素をガス化する従来法に比べ、低エネルギー・低コスト・低環境負荷な方法
・生じた化合物半導体結晶はナノ粒子のため、量子ドットとして使用可能
・金属回収率は100%のため、排液処理にも利用可能
想定される用途
・量子ドット合成
・排液処理・リサイクル
- 材料
4)大気圧プラズマCVDによる分子ふるいシリカ膜の常温常圧製膜法
広島大学 大学院工学研究科 化学工学専攻 助教 長澤 寛規
新技術の概要
シリカ膜は、化学的安定性に優れると共に、サブナノレベルで精密にサイズ制御された微細孔を有し、分子ふるい効果による高い透過選択性を示す。我々は、大気圧プラズマを用いた化学気相蒸着(CVD)技術を用いた、シリカ膜の常温常圧製膜法の開発を行っている。
従来技術・競合技術との比較
従来、シリカ膜の製膜には数百度の高温で行われてきたが、有機無機ハイブリッドによる膜の機能化や構造制御には製膜温度の低温化が必須である。我々は、常温常圧で活性な大気圧プラズマを利用して前駆物質の反応を促進することでシリカ薄膜を形成する手法を開発し、高い分離性能を示すシリカ膜の常温常圧製膜を達成した。
新技術の特徴
・多孔性無機膜の常温常圧製膜
・安定なセラミック薄膜
・高透過選択性を有する分離膜
想定される用途
・ガス分離
・浸透気化分離
・高温・苛酷条件での膜分離
- アグリ・バイオ
5)RNase H-assisted RCAによるmRNAの直接検出
広島大学 大学院先端物質科学研究科 分子生命機能学専攻 研究員 高橋 宏和
新技術の概要
逆転写反応無しにパドロックプローブを用いて、全てのRNAの種類に関わらず、RNAを直接配列特異的に検出する方法。混在するDNAの影響はほとんど受けない
従来技術・競合技術との比較
従来のRNA-primed RCA法に比べて、標的配列の3’末端に限定されないため、プローブ設計の位置が標的RNA配列上のどこにでも設計でき、かつRNase Hを組み合わせたことにより、DNA配列からのノイズ生成が起きず、RNAを特異的に検出できる。
新技術の特徴
・逆転写反応不要
・等温反応
・キャリーオーバーコンタミネーションの影響をほとんど受けない
想定される用途
・in vitro, in situでのRNAウイルス検出
・生きた微生物の検出
・病理検査
- 分析
6)グロー放電プラズマを利用した質量分析装置用イオン源の開発
広島大学 大学院総合科学研究科 総合科学専攻 助教 布目 陽子
新技術の概要
独自構造の電極(同軸型ホローアノード・ホローメッシュカソード)で生成したグロー放電プラズマを利用したイオン源(ソフトプラズマイオン源)を用いることで、揮発性有機化合物のフラグメンテーションを抑えたソフトなイオン化が可能になった。
従来技術・競合技術との比較
化学イオン化(CI)法では、試料に応じて適切な試薬ガスの選択が必要である。大気圧ガスクロマトグラフィー(APGC)では試料に応じてイオン化室の雰囲気を変える必要がある。リアルタイム直接分析(DART)法は大量の高純度不活性ガスが必要である。
新技術の特徴
・独自構造の電極により、試料分子のフラグメンテーションがほぼ起こらない。
・キャリアガスには室内大気を用いることが可能であるため、高純度ガスを必要としない。
・測定圧力が数キロPaでもプラズマが安定的に放電するため、気体試料の大量導入も可能である。
想定される用途
・リアルタイム大気環境監視装置
・自動車の実路走行試験(RDE)用分析装置
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
広島大学 産学・地域連携センター 産学連携部門
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