ライフサイエンス 新技術説明会(4)
日時:2019年02月21日(木) 13:00~15:25
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、北海道大学 産学・地域協働推進機構
後援:特許庁、関東経済産業局、帯広畜産大学、北海道立総合研究機構
発表内容一覧
発表内容詳細
- 創薬
1)化学エネルギーで動く世界最小のモーター
北海道大学 大学院理学研究院 化学部門 准教授 角五 彰
新技術の概要
特定の信号で、自発的に“群れ”を作って/or解消して動く分子ロボットを開発した。具体的には、微小管に相補な配列を有する1本鎖DNAを生やすことで、配列選択的に微小管が集合化し、網目状構造を形成させることに成功した。さらにキネシンの多量体を作用させることで、筋繊維のように収縮させることにも成功した。
従来技術・競合技術との比較
細胞骨格(微小管やアクチン)を組織化させる方法としてリガンド/レセプター相互作用(Biomacromolecules, 9, 2277–2282, 2008)や水溶性のポリマーによる枯渇力(Nanoscale 7, 18054-18061, 2015)による相互作用が用いられてきた。しかし、生体分子モーターの組織化を合理的かつプログラマブルに制御する方法はこれまでになかった。
新技術の特徴
・化学エネルギーで動く世界最小のモーター
・感覚と知能を備えた分子ロボット
想定される用途
・人工筋肉
・遺伝子診断用マイクロロボット
・分子ロボットによる物質輸送
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
2)脂溶性機能成分を低コストで容易に抽出する方法
北海道大学 大学院水産科学研究院 応用生命 生物資源化学専攻 教授 宮下 和夫
新技術の概要
食用油の種類や抽出条件、また原料の処理方法などを検討し、カロテノイドが効率的に抽出できる条件を見いだした。植物からのエタノール抽出液よりクロロフィルを容易に分離する技術。以上、2つの技術を紹介する。
従来技術・競合技術との比較
従来、脂溶性機能性成分の抽出には、主としてエタノールなどの有機溶媒が使用されるが、そのまま食品素材として利用することが出来ず、精製が必要である。エタノール抽出液にはクロロフィルが多く含まれているが、従来技術ではクロロフィル以外にも機能性成分までも除去されたり、高価な吸着剤等が必要となる。
新技術の特徴
・食用油を用いるため、食品利用が可能
・防爆施設などの特殊な設備が必要ない
・低コスト
想定される用途
・健康食品素材
・化粧品用素材
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
3)アピコンプレクサ類原虫感染症に対する薬剤開発
帯広畜産大学 原虫病研究センター 教授 西川 義文
新技術の概要
アピコンプレクサ類原虫は複雑な生活環を持ち、未だ制圧できていない。これまでに開発された治療薬に耐性を有する薬剤耐性原虫の出現により、新たな治療剤が求められている。我々は天然化合物ライブラリーについて抗原虫活性を有す化合物を探索し、トキソプラズマ、マラリア原虫に対する効果を有す化合物を同定した。
従来技術・競合技術との比較
同定した化合物は既存薬であるクロロキン耐性マラリア原虫に対しても感受性原虫と同程度の効果を示した。またトキソプラズマの既存薬と比較して、本化合物はサルファ剤に対して331倍、スピラマイシンに対して71倍の効果を示した。本化合物の経口投与は実験動物モデルでも治療効果を示し、新規治療薬として期待できる。
新技術の特徴
・既存薬(クロロキン)耐性マラリア原虫でも効果を有す。
・既存のトキソプラズマ薬より高い効果が期待できる。
・経口投与により治療効果を示す。
想定される用途
・動物(ヒト含む)用アピコンプレクサ類原虫治療剤
・アピコンプレクサ類原虫予防剤
- アグリ・バイオ
4)酸味など風味に特徴を有する発酵種を用いたパン類の製造方法
北海道立総合研究機構 産業技術研究本部 食品加工研究センター 主査 中川 良二
新技術の概要
本技術は、小麦等の原料に微生物(乳酸菌およびパン用酵母)スターターおよび糖類としてペントース(五炭糖)を加えた発酵種を作製し、これを用いた酸味などの風味に特徴を有するパン類の製造技術に関するものである。
従来技術・競合技術との比較
パン類の製造を想定した発酵種の作製において、酸味の制御を目的とした技術は知られていない。本発明の特徴は、パン類の風味につながる酸味の量と質をコントロールできる発酵種の作製が可能なことにある。
新技術の特徴
・酸味をコントロールした発酵種の作製
・発酵種の作製に通性ヘテロ発酵型乳酸菌を使用
・発酵種を用いて酸味など風味の高いパン類が製造可能
想定される用途
・ベーカリー食品用発酵種の製造
・酸味などの風味に特徴を有するパン類の製造
- 医療・福祉
5)未修飾シアリル化糖鎖および複合糖質の高感度・高分解能構造解析を実現するMALDIマトリックス
北海道大学 大学院先端生命科学研究院 新薬探索研究分野 教授 比能 洋
新技術の概要
本発明のマトリックス組成を使用することにより、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法によるシアル酸含有糖鎖および複合糖質の計測においてシアル酸含有サンプルをそのまま分解を伴うことなく高感度かつリフレクターモードで高分解能に測定可能となる。さらに、そのTOF/TOF解析において、内部構造の精査が可能となる。成功した。
従来技術・競合技術との比較
MALDI法によるシアル酸含有分子の計測はイオン化効率(感度)が低く、生じたイオンは複雑な付加イオンパターンを形成する傾向がある。さらにポストソースディケイ(PSD)と呼ばれるイオン化後のシアル酸脱離によりリフレクターモードによる高分解能計測が困難であるため、シアル酸の化学修飾を経た方法が盛んに開発され使用されている。
新技術の特徴
・シアル酸を含有する分子イオンをシアル酸の脱離を伴わずに高感度・高分解能解析できる
・シアル酸を安定化させるための化学修飾工程が不要である。
・TOF/TOFおよび疑似MS/MS/MS解析によるシアル酸含有分子の内部構造の高分解能解析が可能。
想定される用途
・シアル酸含有分子を含む生体試料の高感度・高分解能解析
・シアル酸含有分子を含む生体試料の分子修飾過程の高感度・高分解能追跡
・シアル酸含有分子を標的としたバイオマーカー探索および診断技術
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
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