スマートデバイス・計測 新技術説明会
日時:2018年11月29日(木) 10:00~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、北海道大学産学・地域協働推進機構
後援:特許庁、関東経済産業局、室蘭工業大学、帯広畜産大学、北海道立総合研究機構
発表内容一覧
発表内容詳細
- 計測
1)牛枝肉の客観的肉質評価法を支える撮像装置の開発
帯広畜産大学 生命・食料科学研究部門 家畜生産科学分野 教授 口田 圭吾
新技術の概要
経済的に大きな影響のある牛肉質の格付は、標準写真との対比による目視で行われている。発明者は客観的な画像解析による肉質評価法の研究に取り組み、脂肪交雑、肉色の解析技術を確立し特許を取得。非常に狭い牛枝肉格付のための切開面にも対応可能で、画像解析可能な画像の撮影を目的とした装置を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来のカメラでは狭い切開面の撮影は不可能であった。本撮影装置では撮像素子をゴニオステージ(傾斜台)に取り付け、撮像素子の角度を変化させることで、広範囲で焦点を合わせることを可能とし、狭隘な切開面にも対応することができた。この技術を普及させるため一般社団法人を立ち上げ世界標準とする活動も行っている。
新技術の特徴
・牛枝肉の非常に狭い切開面の撮影
想定される用途
・肉の画像解析に用いる画像撮影
・既存特許と融合し、自動牛枝肉格付装置
・詳細な肉質評価結果を使った肉牛の効率的な育種改良
- デバイス・装置
2)従来のナノインプリント法の問題点を解決する技術
北海道大学 電子科学研究所 物質科学研究部門 教授 玉置 信之
新技術の概要
新規に見出した圧力に応答して光重合性を変化させる有機材料を用いて、鋳型を押し付けてそのまま光重合させる従来のナノインプリントの方法とは全く異なる新しいナノインプリント法を実現する材料とパターン形成方法を提供する。本方法では、光重合を鋳型を離した状態で行うため、従来の方法による欠陥が生じない。
従来技術・競合技術との比較
従来のナノインプリント法では、流動性がある未重合の感光性樹脂に鋳型を押し付けてそのまま光照射して樹脂を硬化させる方法が取られている。その際、泡が入ったり、鋳型を剥がす際に硬化した樹脂が鋳型に接着してレジストが破壊される問題があった。本発明の材料は初めから固体状で、圧力を感じて光重合性が変化するので、鋳型を離した後で、光を照射して光重合を行う。その際、樹脂は基本的には変形していない。よって、泡や剥離による欠陥ができない。
新技術の特徴
・圧力に感じる新材料を使う。
・光重合した部分が発色する。
・数10MPa程度の低い圧力に感応する。
想定される用途
・ナノインプリント
・朱肉なしの印鑑
関連情報
・サンプルあり
- デバイス・装置
3)スピーカ固定部の振動を抑制し音質の向上を図る技術
室蘭工業大学 大学院工学研究科 情報電子工学系学科 シニアプロフェッサー 鏡 愼
新技術の概要
ダイナミックスピーカの固定部が振動部の振動の反動で振動し、放射音質の品質を低下させることがよく知られている。本技術は音声を放射する主振動部と固定部を共有する副振動部を設け、二つのボイスコイルに働くローレンツ力を同一にすることにより固定部に働く反作用を原理的に完全にキャンセルすることができる。
従来技術・競合技術との比較
副振動部を設け固定部の無振動化を図る従来技術は多数ある。これらは音叉構造を考えた、振動を振動で打ち消そうとするものであるが、二つ振動部の振動を一致させることは困難で、これらの手法では固定部の無振動化は達成されない。本来、振動部は固定部から浮いた系であり、一致させるべきは固定部に働く反作用である。
新技術の特徴
・明瞭度の高い音声を放射できるため、大音量での再生が不要になる。
・スピーカエンクロージャーの揺れが軽減されるため設置が容易になる。
・従来技術では困難であった、最低共振周波数付近においても固定部の無振動化が可能。
想定される用途
・高音質音楽再生スピーカ
・高性能拡声器
・高音質音楽再生ヘッドホーン
関連情報
・デモあり
- 計測
4)ありふれた高分子材料を利用した重水の吸着・分離法
北海道大学 大学院工学研究院 応用化学部門 准教授 山本 拓矢
新技術の概要
軽水と重水の混合物を高分子材料に接触させることで、重水の高選択的な吸着を可能とする技術を確立した。この技術を応用すると、従来技術よりも簡便かつ低コストで重水の分離が可能となる。また、原発に由来するトリチウム水や重水素化化合物などの同位体元素を含む化合物の分離に応用可能と考えられる。
従来技術・競合技術との比較
従来、軽水と重水の分離には、わずかな沸点の差(D2Oの沸点:101.4 ℃)を利用した大がかりな蒸留装置や電気分解等が用いられるが、巨大な施設の建設や大量の電力を必要とする。本発明は、これらを必要としない簡便な重水分離方法である。また、本高分子材料をHPLCカラムに充填することで同位体に基づく分離が可能となると考えられる。
新技術の特徴
・重水を高選択的に吸着する高分子材料である
・簡便な分離法のため大がかりな装置や大量の電力を必要としない
・トリチウム水の分離や同位体元素を含む化合物の分離に応用可能である
想定される用途
・重水の分離
・トリチウム水の除去
・HPLCカラム充填剤とすることで、重水素化および同位体元素を含む化合物の分離
- 計測
5)看護職の働き方改革:バーンアウト・離職予測のアルゴリズム
北海道大学 大学院保健科学研究院 基盤看護学分野 准教授 鷲見 尚己
新技術の概要
看護職のバーンアウト・離職を「正確に」「わかりやすく」判断分類できるアルゴリズムを開発した。判別するための情報は、基本属性と主観的ストレス度以外に、ストレス対処に関連する概念の他、客観的指標として睡眠指標を含み、独自なアルゴリズムを明らかにすることができた。
従来技術・競合技術との比較
離職つながるバーンアウトの要因としては、環境要因の他に、専門職としてのアイデンティティや自尊感情、対処行動、身体のストレス反応などが報告されている。しかし、これらの測定は主に質問紙による主観的指標が中心であり、看護職の離職を予測するまで構造化された指標はなく、アルゴリズムの開発についても報告がない。
新技術の特徴
・バーンアウト・離職を予測する。
・行動変容プログラムにつながる。
・バーンアウトと離職予測の判別率が高い。
想定される用途
・バーンアウトと離職を予測し、早期に教育プログラムによって介入し、離職を減少させる。
・医療者の働き方改革につなげるためのエビデンスとする。
・他の交代制勤務に従事する職種にも応用する。
- デバイス・装置
6)複合粉末材料による金属3D積層造形法
北海道立総合研究機構 産業技術研究本部工業試験場 製品技術部 主任主査 戸羽 篤也
新技術の概要
高融点・難溶解材及び硬質・脆性金属等の一般的な金属3D積層造形法(SLM法)では積層造形が困難な粉末材料に対して、バインダ金属粉末を混合し、バインダ金属のみを溶融・固着させることにより、主粉末材料の機能を活かしたまま3D造形を可能にする技法。
従来技術・競合技術との比較
本技術は、金属(特に低融点金属)をバインダとして金属粉末やセラミック粉末を固着させる点に特徴がある。樹脂をバインダとして用いる従来技術に比べて、積層造形後の焼結(焼き固める工程)が不要であるほか、熱伝導性、電気伝導性に優れた製品を得られるなどの利点がある。
新技術の特徴
・バインダに金属を用いる複合材3D積層造形技術
・融点の異なる金属やセラミックと金属の組み合わせによる3D積層造形技術
・脆性材や難溶解材の3D積層造形技術
想定される用途
・高合金・脆性金属粉末による熱交換部品の製作に適用
関連情報
サンプルあり
- デバイス・装置
7)可視光閉じ込め機能を有する光電極による高効率光反応
北海道大学 電子科学研究所 教授 三澤 弘明
新技術の概要
厚さ30ナノメーターの酸化チタンを金ナノ微粒子と金フィルムでサンドウィッチして金ナノ微粒子側から光を照射すると、全可視光の85%以上の光が酸化チタン層に閉じ込められ、金ナノ微粒子により吸収されること、そしてその構造基板を光電極として用いた場合、光エネルギーを貯蔵可能な化学エネルギーに効率的に変換できることを見出した。
従来技術・競合技術との比較
従来の金属ナノ微粒子を酸化チタン基板上に担持しただけの方法では、全可視光の10%弱程度しか金属ナノ微粒子に光を吸収させることができなかった。新技術では、可視域における8倍以上の光吸収効率の増大とピーク波長における1.5倍の内部量子収率の増大を実現し、従来の光電極に比べて11倍の光エネルギ変換効率を達成した。
新技術の特徴
・厚さ30ナノメーター(毛髪の5000分の1)の空間に可視光を閉じ込められる光電極の開発に成功
・光閉じ込め機能により全可視光の85%以上を効率良く吸収できることを検証
・光閉じ込め機能のない従来の電極と比べ、10倍以上の効率で光エネルギーを化学エネルギーに変換
想定される用途
・全固体プラズモン太陽電池
・人工光合成系(水分解・アンモニア合成・二酸化炭素固定など、水を電子源とする化学合成)
・表面増強ラマン散乱を用いた高感度化学・バイオセンサー
関連情報
サンプルあり
- デバイス・装置
8)SMAワイヤアクチュエータの音声周波数帯域駆動
北海道大学 大学院工学研究院 人間機械システムデザイン部門 准教授 原田 宏幸
新技術の概要
形状記憶合金(SMA)ワイヤアクチュエータを高周波数で振動させる技術。入力信号に対する応答が最も良くなると期待される温度領域にSMAを保持することを特徴とする。目的の周波数を有する交流電圧信号に対し、適切な直流電圧をバイアスとして加えることによって温度を保持し、kHzオーダーの出力周波数を達成可能。
従来技術・競合技術との比較
従来のSMA駆動技術として、電圧パルスを入力するものがある.この方式においては、SMAの温度を最適化するという発想は含まれておらず、達成周波数は1kHzに満たない。また、競合技術として圧電素子があるが、駆動に高電圧が必要である。本技術ではそのような高電圧は必要としない。
新技術の特徴
・細く柔軟なワイヤーを振動源にできる
・高電圧を必要としない
・構造がシンプル
想定される用途
・柔軟でポータブルな音源・音響デバイス
・骨伝導など接触型の音声伝達機器
・マイクロマシン・マイクロデバイス用振動源
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