ライフサイエンス 新技術説明会(3)
日時:2018年12月11日(火) 10:00~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、旭川医科大学、札幌医科大学、福島県立医科大学、日本医科大学、浜松医科大学、産業医科大学、福岡大学、久留米大学、関西医科大学
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
- High Flow Nasal Cannula 酸素療法における鼻カニュラの最適形状
- 一人で患者搬送が容易にできるベッド
- 新たな循環器系疾患の治療薬としての心臓アセチルコリン産生誘導薬の開発
- 医学・生物学研究と診断のためのNanoSuit® Technologyの応用
- 乳酸菌由来フェリクロームを用いた安全かつ強力な新規抗腫瘍薬開発
- 自己骨髄間葉系幹細胞の腎局所投与による糖尿病性腎症の治療
- ビッグデータ解析基盤技術としての相互情報量の新規推定方法
- ヘルペスの再発を防ぐワクチンを提供するために
- ステロイドホルモン産生抑制剤
- 新規活動性結核の迅速診断法
- イヤホン型咀嚼センサーによるダイエットから健康長寿まで
発表内容詳細
- 医療・福祉
1)High Flow Nasal Cannula 酸素療法における鼻カニュラの最適形状
産業医科大学病院 臨床工学部 臨床工学技士 濵本 達矩
新技術の概要
加温加湿された最大60L/minの混合ガス(空気・酸素)を鼻腔から投与し、軽度のPEEP様効果と上気道のCO2ウォッシュアウト効果を目的とした酸素療法であり、治療に必要な専用鼻カニュラの先端形状に関する技術である。
従来技術・競合技術との比較
High Flow Nasal Cannula (HFNC)酸素療法に必要な専用鼻カニュラには様々な形状のものが販売されているが、PEEP様効果もしくはCO2ウォッシュアウト効果のいずれかに特化したものであり、治療効果に偏りがある。本技術は、少ないガス流量でも2つの治療効果を得る事ができ、経済的効果も大きい。
新技術の特徴
・少ないガス流量でも十分なPEEP様効果が期待できる。
・PEEP様効果を得ながらも十分なCO2ウォッシュアウト交換が期待できる。
・酸素消費量を減らすことによってもたらされる、医療現場の経済的なメリットが大きい。
想定される用途
・High Flow Nasal Cannula 酸素療法に用いる専用鼻カニュラ
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
2)一人で患者搬送が容易にできるベッド
久留米大学 医学部 外科学講座 助教 友枝 博
新技術の概要
一般的にベッドで患者を搬送するときは患者が乗った重いベッドの動きをコントロールするのが困難なため二人の力で患者搬送をするのが一般的であるが、今回考案したベッドを用いると、患者を乗せた重いベッドでも一人の力でベッドの動きをコントロールし、患者搬送することが容易となる。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では病院や医療施設の患者搬送において、患者が乗ったベッドが重いため、患者の頭側からベッドに力を加え、足側のベッドのキャスターの向きを変え方向転換するのが困難であった。本発明によればベッドのヘッドボードにハンドルを取り付け一人でも患者搬送を安全かつ容易に行うことが可能となる。
新技術の特徴
・一人でも患者搬送が可能となる。
・ヘッドボードの各々に取り付けてあるハンドルで一人でも自由にベッドの動きをコントロールできる。
想定される用途
・病院内
・介護施設内
- 創薬
3)新たな循環器系疾患の治療薬としての心臓アセチルコリン産生誘導薬の開発
日本医科大学大学院 医学研究科 生体統御科学分野 大学院教授 柿沼 由彦
新技術の概要
心筋細胞で自らアセチルコリンを産生するシステムを活性化させると虚血耐性が強まり虚血性心疾患に強くなるが、これまで活性化薬はなかった。本発明は、活性化薬となり得る物質の一つを見出した。本発明により、急性的に血圧を低下させることがなく、患者への負担が少ない、新たな循環器系疾患の治療薬としての利用が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
心臓アセチルコリン産生を活性化させるための産生誘導薬はこれまで知られてなく、本発明で見出した物質によって、はじめて効果が確かめられた。現在使用されている循環器系疾患の治療薬は、急性的に血圧を低下させる作用があり、患者の負担となっているが、本発明では、緩やかに血圧を低下させる作用があり、治療薬となれば、患者への負担が軽減される。
新技術の特徴
・心臓アセチルコリン産生能の促進物質
・緩徐な薬理効果による心機能の改善
・簡便かつ低コストで合成可能
想定される用途
・循環領域における医科学実験(細胞・動物)で使用する化合物
・将来的には新たな循環器系疾患の治療薬として、ヒトへの応用・臨床応用の可能性のある化合物
・循環領域のほか中枢神経系への薬理効果も期待できる化合物
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
4)医学・生物学研究と診断のためのNanoSuit® Technologyの応用
浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター ナノスーツ開発研究部 准教授 河崎 秀陽
新技術の概要
高真空を必要とする電子顕微鏡では、80%ほどの水分を含む生物試料の形状を維持させながら固定・脱水するという多様で長い時間の工程が必要だった。NanoSuit ® 法は、生物試料周辺にナノ薄膜を、短時間の内に形成させ、濡れたままの生物試料を観察するという技術であり、試料そのものの形状を観察できる。生物適合性高分子溶液を使用して、短時間で、濡れたままの観察技術を医療応用する点に特長がある。今回はこのナノスーツ法技術を病理標本観察に応用した。ナノスーツ法によって光学顕微鏡像と走査型電子顕微鏡の同一視野の観察が可能となり、様々な今までにない観察情報を得ることに成功している。
従来技術・競合技術との比較
NanoSuit®法は、我国発の極めてユニークな技術である。固定・乾燥処理を必要とする従来技術に比べて大きく異なった像が観察される。競合技術としては、イオン液体で試料内部の液を置換する技術、炭素やシリカの薄膜で試料表面を覆い観察する技術が報告されているが、いくつかの問題点により十分な市場化はなされていない。
新技術の特徴
・本技術は、微小生物個体、組織、細胞、生体微粒子上に薄膜を形成し、生体の液体・ガスを生体内に保持。
・本技術で、 多くの生体試料をそのまま電子顕微鏡観察可能。
・本技術を拡大し、溶液から自立薄膜形成が可能であり工業応用もできる。
想定される用途
・測定・解析法として、電子顕微鏡を用いた生体試料(パラフィン切片)の超微細構造観察および元素分析
・ナノスーツ薄膜を新素材として工業分野へ応用
・治療や診断分野への応用
- 創薬
5)乳酸菌由来フェリクロームを用いた安全かつ強力な新規抗腫瘍薬開発
旭川医科大学 消化器先端医学講座 特任教授 藤谷 幹浩
新技術の概要
プロバイオティクスには癌抑制作用があるが癌治療薬として臨床応用には至っていない。我々は乳酸菌の培養上清から強い抗腫瘍作用を持つ低分子化合物フェリクロームを同定した。フェリクロームは各種の消化器悪性腫瘍に対し既存薬を上回る抗腫瘍活性と、極めて高い安全性を示すことから新規抗腫瘍薬として臨床応用を目指す。
従来技術・競合技術との比較
フェリクロームは大腸癌細胞を用いたin vitro、in vivo実験にて既存抗がん剤である5-FUやシスプラチンを上回る抗腫瘍効果を示した。また、マウス正常腸管初代培養細胞の活性に影響を及ぼさず、経口・静脈投与によっても肝・腎機能、鉄代謝に異常を来さなかった。以上から治療効果、安全性において既存薬を上回ると考えられる。
新技術の特徴
・既存薬を上回る強い抗腫瘍作用
・高い安全性(乳酸菌由来、正常腸管や血液データへの影響が殆ど無く、高齢者や小児へも適応の可能性)
・新しい作用機序(JNK-DDIT3経路を標的とした唯一の抗腫瘍薬)
想定される用途
・消化器(癌大腸癌、胃癌、膵癌)、肺癌、乳癌、婦人科癌などに対する抗腫瘍薬
・既存抗腫瘍薬に耐性の癌に対する抗腫瘍薬
・前癌病変(大腸腺腫、膵嚢胞性腫瘍など)に対する癌化予防
関連情報
・外国出願特許あり
- 創薬
6)自己骨髄間葉系幹細胞の腎局所投与による糖尿病性腎症の治療
札幌医科大学 医学部 解剖学第二講座 教授 藤宮 峯子
新技術の概要
骨髄間葉系幹細胞(MSC)の静脈投与では、糖尿病性腎症4期(腎不全期)では治療効果がなく、腎局所投与により最大の治療効果が得られる事がわかった。我々は、3次元構造を有した培養基材にMSCを培養し、培養基材ごと腎臓に貼付する新技術を開発した。この方法により、糖尿病性腎症患者の透析導入が約10年間遅延出来る事が分かった。
従来技術・競合技術との比較
MSCを胎盤抽出物で賦活化し、ファイバー状の3次元構造を有する細胞培養担体で培養する。この方法で、糖尿病で異常化したMSCが活性化し、自家骨髄細胞移植における治療効果が極めて増強する。さらに、MSCを培養担体ごとシート状に腎臓に貼付する方法であり、競合技術はない。
新技術の特徴
・MSCを培養担体ごとシート状に腎臓に貼付して糖尿病性腎症を治療する方法
・ファイバー状の3次元構造を有した培養担体でMSCを培養する方法
・ヒト胎盤抽出物でMSCを賦活化する方法
想定される用途
・糖尿病性腎症の治療
・他の慢性炎症性疾患の治療
・線維化を来す疾患の治療
- 情報
7)ビッグデータ解析基盤技術としての相互情報量の新規推定方法
福島県立医科大学 看護学部 生命科学部門 准教授 森 努
新技術の概要
相互情報量MIの新規推定方法であって、-1/N・(log10p) を算出する工程を含むことを特徴とする(pはフィッシャーの正確確率、Nはサンプル数)。MIとpとの間にMI(bit) = -1/N・1/log10 2・log10pという関係があるという発見に基づく。
従来技術・競合技術との比較
相互情報量の推定方法には各種あるが、本法はフィッシャーの正確確率のみを計算するというシンプルな方法である。ある程度のN数を必要とするが、感度、ロバスト性は共に高い。
新技術の特徴
・連続量と離散量の両方を扱える。
・メタアナリシスなど統計学の手法を使用できる。
・感度、ロバスト性は共に高い。
想定される用途
・ビッグデータを解析する分野全般。
・生命科学や気象など自然科学。
・金融、消費行動など。
- 医療・福祉
8)ヘルペスの再発を防ぐワクチンを提供するために
福岡大学 アニマルセンター 准教授 田中 聖一
新技術の概要
ブタの慢性病基礎疾患であるオーエスキー病や、ヒト水疱瘡などの病原体であるαヘルペスウイルスが、再活性化時に最初に起動させるUL41プロモーターの下流に、Cas9およびUL41sgRNA配列を導入したウイルスをワクチン株として使用する。初感染時の発症防御と潜伏野外ウイルスの再活性化が期待される。
従来技術・競合技術との比較
現行ワクチンはいずれも発症予防であり、潜伏感染・再活性化を防ぐことはできず疾病の根絶にならない。本件ワクチン株は初感染による症状緩和だけでなく再活性化を抑制し、再起感染症や感染拡大を防ぐ。さらに潜伏ウイルス再活性化に伴って増悪すると考えられるアルツハイマー病などの発症抑制にも役立つ。
新技術の特徴
・Cas9およびUL41sgRNA配列を導入したヘルペスウイルス株
・マウスにおけるヘルペスウイルス潜伏感染系の確立
・アセチルコリンによる潜伏ヘルペスウイルスの再活性化
想定される用途
・ブタ・オーエスキー病ワクチン、サル・Bウイルスワクチン
・ヒト・単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹ワクチン
・ヒト・アルツハイマー病発症抑制
- 創薬
9)ステロイドホルモン産生抑制剤
福岡大学 医学部 医学科 助教 田中 智子
新技術の概要
NR5A1 (別名:Ad4BPあるいはSF-1) はステロイドホルモン産生における主要転写調節因子であるが、NR5A1を作用標的とする薬剤は知られていない。新技術はスプライシングを介して短いNR5A1アイソフォームを生じさせ、機能性全長NR5A1を低下させる。ステロイドホルモン産生抑制や副腎皮質癌の増殖抑制が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
培養実験における増殖抑制効果は副腎皮質癌治療薬ミトタンの4.4倍。また、ステロイド合成阻害剤であるトリロスタン(HSD3B阻害剤)やメチラポン(CYP11B1阻害剤)と異なり、NR5A1低下によって、ほぼすべてのステロイド合成酵素の発現が低下する。
新技術の特徴
・ステロイドホルモン産生の主要調節因子であるNR5A1の発現をスプライシングを介して抑制する
・ステロイドホルモン産生を抑制する
・副腎皮質癌細胞の細胞死を誘導し、増殖を抑制する
想定される用途
・副腎皮質癌および副腎腺腫の治療薬
・NR5A1抑制剤の開発
・multiple exon skippingの細胞実験モデル
- 医療・福祉
10)新規活動性結核の迅速診断法
関西医科大学 医学部 衛生・公衆衛生学講座 准教授 神田 靖士
新技術の概要
発展途上国に適した活動性結核の新たな迅速診断法を構築し、検体としても採血が必要な血清よりも簡便に採取できる検体を用い、抗原抗体反応を使用しない新たなバイオマーカーを指標とすることで簡便で確実にスクリーニング可能な診断法を構築する。
従来技術・競合技術との比較
既存の診断キットとしてTスポット.TBがあるが、結果までに24時間かかること、高コスト(6300円/1検体)であること、末梢血から単核球を分離、培養する設備が必要であること、採血による感染リスクがあることから、発展途上国での使用には不向きである。
新技術の特徴
・新たなバイオマーカーの使用
・容易に採取可能な検体を使用
・結核以外の感染症や様々な疾患の診断に応用可能
想定される用途
・発展途上国での排菌者(活動性結核患者)の早期発見
・患者と接触した人の検診及び学校等の集団検診
・医療従事者の検診
- デバイス・装置
11)イヤホン型咀嚼センサーによるダイエットから健康長寿まで
関西医科大学 医学部 健康科学教室 教授 木村 穣
新技術の概要
我々は、外耳道の変化を光センサー(既存特許技術)により測定し、その変化より顎の動きを評価する手法を応用し、咀嚼運動として評価することに成功している。その後イヤホンタイプの外耳道測定装置を開発し、咀嚼運動を記録できる咀嚼計の開発に成功し、咀嚼回数、時間から咀嚼機能の解析、評価(新技術)を可能にした。
従来技術・競合技術との比較
本人の記録によらない、無拘束・無侵襲咀嚼機能測定装置で、かつイヤホンというごく自然に見える記録機器は未だ無い。これまでは顎部に直接記録装置を付けたり、耳介部にセンサーを付けたリするため、外部から目立ち自然な測定は不可能であった。
新技術の特徴
・咀嚼回数、時間の自動記録
・食べると言う行動の見える化
・イヤホンという自然な条件での食行動記録が可能
想定される用途
・ダイエット指導
・食育
・高齢者の咀嚼機能評価
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
関西医科大学 産学連携知的財産統括室
TEL:072-804-2328 FAX:072-804-2686Mail:sangakuhirakata.kmu.ac.jp
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旭川医科大学 知的財産センター
TEL:0166-68-2182 FAX:0166-66-1300Mail:rs-sr.gasahikawa-med.ac.jp
久留米大学 研究推進戦略センター
TEL:0942-31-7916 FAX:0942-31-7918Mail:sangakumlkurume-u.ac.jp
札幌医科大学 附属産学・地域連携センター
TEL:011-611-2111(内21590)Mail:chizaisapmed.ac.jp
URL:http://web.sapmed.ac.jp/ircc/
学校法人日本医科大学 知的財産推進センター
TEL:03-5814-6637 FAX:03-3822-2834Mail:nms-tlonms.ac.jp
URL:https://www.nms.ac.jp/tlo/
浜松医科大学 知財活用推進本部
TEL:053-435-2681 FAX:053-435-2179Mail:chizaihama-med.ac.jp
URL:https://www.hama-med.ac.jp/research/ip-mgt/index.html
福岡大学 研究推進部 産学官連携センター
TEL:092-871-6631 FAX:092-866-2308Mail:sanchiadm.fukuoka-u.ac.jp
URL:http://www.sanchi.fukuoka-u.ac.jp/sangakukan/
公立大学法人福島県立医科大学 医療研究推進課
TEL:024-547-1792 FAX:024-581-5163Mail:liaisonfmu.ac.jp
URL:https://www.fmu.ac.jp/
学校法人 産業医科大学 研究支援課
TEL:093-280-0532 FAX:093-691-7518Mail:chizaimbox.pub.uoeh-u.ac.jp
URL:http://www.uoeh-u.ac.jp/IndustryCooperation.html
新技術説明会について
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