金沢大学 新技術説明会
日時:2018年08月23日(木) 12:55~16:00
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、金沢大学、金沢大学ティ・エル・オー
後援:特許庁、関東経済産業局、北陸銀行、日本政策金融公庫
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)能登海洋深層水を用いたストレス低減飲料・化粧品の開発
金沢大学 環日本海域環境研究センター 臨海実験施設 教授 鈴木 信雄
新技術の概要
能登海洋深層水には、表層海水には含まれない有機成分が存在して、その有機成分に魚(メジナ及びヒラメ)のストレスを低減する作用が認められた。深層水で飼育したヒラメの脳の解析により、細胞死を抑え、細胞修復を促進し、精神を落ち着かせる作用があることがわかった。
従来技術・競合技術との比較
これまで海洋深層水は、①細菌や汚染物質が少ない (清浄性) 、② 窒素やリン、ケイ素などの無機栄養塩に富む (富栄養性)を利用した商品が開発されている。しかしながら、ストレス低減に関する商品はない。経験的に、深層水で飼育すると魚が死なないと言われているが、その機構解明にも貢献する。
新技術の特徴
・表層水には含まれていない有機成分が能登深層水に存在する。
・密度ストレスにより、ストレスホルモンの上昇を抑制した。
・有効成分でも同様にストレス低減に作用した。
想定される用途
・水産業への応用(活魚輸送・養殖・畜養)
・機能性食品(飲料など)への応用
・機能性化粧水への応用
- 計測
2)位置予測によるライブセルイメージングの高速化技術
金沢大学 新学術創成研究機構 ナノ生命科学研究所 准教授 高橋 康史
新技術の概要
走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)は、生きている細胞のナノスケールの形状測定が可能である。その一方で従来のSICMは、1イメージングに30分もの時間がかかっていた。走査方式の改良により、イメージングの時間を3分まで短縮することに成功した。
従来技術・競合技術との比較
これまで走査型イオンコンダクタンス顕微鏡は、細胞の接触を回避するためにプローブをホッピングさせるように走査していたが、その時間を短縮するために、連続イメージングの際に、前の測定の情報を利用して、計測領域を制限することでイメージングの高速化を実現した。
新技術の特徴
・生細胞の形状変化のタイムラプスイメージング
・高速イメージング
想定される用途
・細胞のナノスケールの形状イメージング
・細胞のケミカルイメージング
関連情報
・サンプルあり
- 製造技術
3)金属3Dプリンターで製作したポーラスを有する電解加工用電極
金沢大学 理工研究域 機械工学系 助教 小谷野 智広
新技術の概要
金属3Dプリンターを活用することで、任意箇所にポーラス部を有し、ポーラスの微小な空孔から加工点へ電解液を供給する電解加工用電極を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来の電解加工では電極に設けた比較的大きな穴やスリットから電解液を供給していたため、その形状が加工面に転写され、電解加工を適用可能な形状が制限された。一方で、本技術ではポーラス部の微小な空孔から電解液を供給することで、その制約を取り除くことができる。ポーラスの配置、形状も自由である。
新技術の特徴
・ポーラスの微小な空孔から電解液を噴出するため加工面への影響が小さい
・金属3Dプリンターを用いることで任意箇所に自由な形状でポーラスを設けることができる
・ポーラス部の空孔から電解液だけではなく任意の液体を供給できる
想定される用途
・任意形状を加工するための電解加工用電極
・放電加工用電極への応用
・摺動面などへの液体の供給
関連情報
・サンプルあり
- エネルギー
4)イオン液体によるペロブスカイト膜のナノ粒子化技術と新規成膜手法
金沢大学 新学術創成研究機構 未来社会研究コア 再生可能エネルギーユニット 教授 當摩 哲也
新技術の概要
ペロブスカイト太陽電池では、緻密膜を成膜することが高性能化には重要である。本研究では、イオン液体を添加するのみでナノ粒子化した膜を得る手法を開発したので報告する。さらに、新規な成膜手法について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
従来では、リボン状の疎な膜となるペロブスカイト膜が、イオン液体の添加によりナノ粒子が配列したナノ構造膜になる点が特徴である。
新技術の特徴
・イオン液体
・ナノ粒子化
・ペロブスカイト膜
想定される用途
・太陽電池
・各種有機膜
- 材料
5)表裏にサブミクロンオーダのシワを有する低反射フィルムの作製法
金沢大学 理工研究域 機械工学系 准教授 瀧 健太郎
新技術の概要
ナノリンクルと呼ばれている表面にしわのあるシートが拡散反射による正反射の低減など独特な光学特性を有することから注目されている。本技術では、これまで作ることができなかった表裏にナノリンクル構造を有するシートを新たに開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来の技術では、基板の上に薬液を塗布して、ナノリンクルを作成していた。この方法では、フィルムの片面にしかナノリンクル構造を作ることができない。我々の方法は簡便な方法により表裏にナノリンクル構造を有するシートを作製できる。
新技術の特徴
・表裏にしわがあるシート
・サブミクロンオーダの微細構造
・反射防止特性
想定される用途
・光反射防止
関連情報
・サンプルあり
- 材料
6)検出・制御が容易なアニオンセンサー/セルロース由来CFRPの強化法
金沢大学 理工研究域 生命理工学系 特任助教 廣瀬 大祐
新技術の概要
(1)ナノカーボンの一つであるポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体を用いた比色蛍光アニオンセンサーを開発した。
(2)セルロースベース炭素繊維強化樹脂(CFRP)の強度向上のための共有結合を用いた強化手法、特にバイオベースの相溶化剤を開発した。
従来技術・競合技術との比較
(1)比色と蛍光の2検出系を有しており、さらに蛍光はTurnOn(強度増強)型の挙動を示すため、一般的な消光挙動より検出に有利。また側鎖に導入する構造の鏡像異性体過剰率の調節により連続的にアニオン応答性(閾値および選択性)を制御できる。既存技術のように、応答性を調節する際にセンサー構造を一から再設計する必要がない。
(2)バイオベース相溶化剤の場合には、炭素繊維側に簡便な前処理を行うのみで、セルロースベースCFRPの母材樹脂と炭素繊維間の相互作用を有意に向上させる。セルロースベースCFRPにおいて、共有結合に基づく高強度手法はこれまで知られていない。
新技術の特徴
・本センサーは測定に専用の大型機器を必要とせず、測定時間の短縮、野外での使用も可能(技術1)
・簡便にアニオン応答性を制御できるため、測定したいアニオン種や濃度に応じてカスタマイズしやすい(技術1)
・簡便な前処理を行うことで、セルロースベースCFRP材料の界面親和性を有意に向上させることが可能(技術2)
想定される用途
・アニオン量および種類の迅速な決定(技術1)
・セルロースベースCFRPの界面親和性強化(技術2)
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