JST戦略的創造研究推進事業 新技術説明会 ~エネルギー・計測~
日時:2019年01月18日(金) 09:55~15:25
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- エネルギー
1)CMOSフレンドリーなプレーナ型シリコン微小熱電発電デバイス 【CREST】
早稲田大学 基幹理工学部 電子物理システム学科 教授 渡邉 孝信
新技術の概要
高温部と低温部をサブミクロンオーダーまで接近させて非平衡性を高めた、短いSiナノワイヤを用いた高出力熱電発電デバイスを考案した。微細化し高集積化することにより単位面積当たりの発電密度が向上するというスケーリング則が成り立つ。試作実験では僅か5℃の温度差から12μW/cm2の高い発電密度を記録した。
従来技術・競合技術との比較
従来のSiナノワイヤ熱電発電デバイスでは、Siナノワイヤの下の基板を深くエッチングしてナノワイヤを空中架橋させ、熱流のショートカットを防ぐ工夫が必要だったが、機械的強度の低下の加工コストの高さが課題となっていた。また、ナノワイヤを長くする必要があり、1μW/cm2の程度の発電密度にとどまっていた。
新技術の特徴
・数十μW/cm2級の高出力密度が実現可能
・深掘りエッチングを必要とせず、CMOSプロセスとの親和性が高い
・環境にやさしいシリコン製の微小熱電発電デバイス
想定される用途
・ウェアラブル・デバイスの電源
・スマート・ビルディングのセンサ・ノード用電源
・テラヘルツ波センサ用ボロメータ
- エネルギー
2)低温での高効率メタン製造方法と装置 【CREST】
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授 曽根 理嗣
新技術の概要
我々は再生可能エネルギーによるカーボンニュートラル社会に貢献するべく、低温で炭酸ガスを水素還元しメタンを合成する触媒および装置を開発してきた。この中で、メタン合成反応は発熱反応であることに着目し、中温域で吸熱的に水電解を行う特殊な水電解槽の開発を行い、これをメタン合成リアクターと複合化する手法を見出した。
従来技術・競合技術との比較
メタン合成反応は350℃以上で実現されるものであったのに対し、我々は200~250℃で反応させる触媒開発に成功した。また固体高分子水電解では循環水を80℃程度で電解する反応が一般的であるが、我々は加圧静水の電解を行う槽構造を開発し100℃以上で吸熱水電解を行うことに成功した。これらを組み合わせた装置は新規技術として特許出願中である。
新技術の特徴
・低温メタン合成
・吸熱水電解
・水電解/メタン合成タンデムリアクター
想定される用途
・再生可能エネルギーによる炭酸ガスからのメタン合成
・自動車排ガスの除去技術
・工場排気からの天然ガス代替燃料合成
関連情報
・外国出願特許あり
- エネルギー
3)ギ酸からの高圧水素製造 【CREST】
産業技術総合研究所 創エネルギー研究部門 エネルギー触媒技術グループ 上級主任研究員 姫田 雄一郎
新技術の概要
分圧70MPa以上の水素ガスをギ酸から簡便に発生させる技術である。開発された高性能触媒により、100℃以下で、ギ酸水溶液から一酸化炭素を含まない”高圧・高品質水素”の連続供給を可能となる。ギ酸水溶液からの水素発生と、気液分離システムを具備したギ酸からの高圧水素発生について説明する。
従来技術・競合技術との比較
他の水素キャリアでは、水素発生に300度以上の加熱が必要であったの対して、ギ酸では100度以下の加温で高効率で高圧水素の発生が可能である。しかし、近年数多くのギ酸分解触媒が報告されているが、発表者の研究グループを除けば、40MPaを超える圧力を発生できる高性能な触媒の報告例はない。
新技術の特徴
・圧縮機を使わずに分圧70 MPa以上の高圧水素を連続製造する技術
・温水程度(80度)の加温で効率的な水素供給
・一酸化炭素を含まないため、改質が不要
想定される用途
・水素ガスステーションでの高圧水素供給
・ケミカルコンプレッサーとしての圧力供給
・緊急時の一時的な水素供給源
関連情報
・外国出願特許あり
- エネルギー
4)室温にてメタンを水素とエタンに変換する可視光プロセス 【さきがけ】
北九州市立大学 国際環境工学部 エネルギー循環化学科 准教授 天野 史章
新技術の概要
脱石油社会の実現に向けて、安価かつクリーンな天然炭素資源であるメタンから水素や化成品原料を製造するための新しい光電気化学反応プロセスを開発した。高分子電解質膜と半導体光電極を使った膜電極接合体が、可視光照射下で室温においてメタンから水素とエタンを生産できることを見出した。
従来技術・競合技術との比較
深紫外光(< 300 nm)や紫外光(< 400 nm)のようなエネルギーの高い光を用いることなく、青色の可視光を用いて、最も安定で不活性な炭化水素であるメタンを、室温という低い温度にてメチルラジカルに変換できる。従来の光触媒よりも高い量子効率(光利用効率)を実現できることが特徴である。
新技術の特徴
・可視光を利用して水素発生
・高い光電変換効率
・水素と生成物の膜分離が可能
想定される用途
・メタン化学、C1化学
・水素製造、燃料製造
・バイオガス利用
関連情報
・サンプルあり
- 電子
5)磁性体を用いた大規模化可能な超伝導量子コンピュータ 【さきがけ】
名古屋大学 大学院工学研究科 電子工学専攻 准教授 山下 太郎
新技術の概要
世界中で注目を集めている量子コンピュータの実現には、大規模化(多量子ビット化)が必須である。本技術は、超伝導ベースの量子ビットに磁性体を導入することで従来型超伝導量子ビットの問題を根本から解決し、大規模な超伝導量子コンピュータの実現を目指すものである。
従来技術・競合技術との比較
従来の超伝導(磁束型)量子ビットでは、デバイス動作させるために外部から磁場や電流を印加することが必要不可欠であった。ところがこの制約のために大規模化が困難であったり、デバイスとしての本来の性能が発揮されないという問題が存在した。本技術はこれらを一挙に解決するものである。
新技術の特徴
・超伝導量子ビットの大規模化が容易(スケーラブル)
・量子状態の長寿命化が可能
・超伝導量子ビットの冷却負荷軽減
想定される用途
・デジタル超伝導量子コンピュータのコアデバイス
・超伝導量子アニーリングマシンのコアデバイス
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
6)蓄光応用を広げる有機材料 【ERATO】
九州大学 最先端有機光エレクトロ二クス研究センター 助教 嘉部 量太
新技術の概要
有機蓄光材料は有機化合物のみから構成され、溶液プロセスによる簡便な作製が可能であり、既存の無機蓄光材料では実現困難な透明性・柔軟性を持つ。また希土類を必要としないといった特徴を有する。
従来技術・競合技術との比較
既存の蓄光材料は全て無機材料で構成され、発光特性・耐候性に優れる一方で、合成には高温焼成が必要であり、溶媒に溶けないために粉砕し、溶媒や高分子媒体に分散させるといった工程を必要とする。また微粒子のため光散乱をおこし、殆どは乳白色を示す。
新技術の特徴
・製造が容易
・柔軟性・透明性
・希土類不要
想定される用途
・蓄光塗料
・フィルム
・バイオイメージング
関連情報
・サンプルあり
・外国出願特許あり
- 計測
7)デュアルコム分光法を用いた高速・高精度・高機能な材料特性評価法 【ERATO】
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 基盤理工学専攻 教授 美濃島 薫
新技術の概要
デュアルコム分光法による固体材料の複素光学物性評価、及びその超高速応答の精密測定が可能な新しい手法を発明した。また、これに適した実用的なデュアルコム光源として、1台の共振器から2種類の光コムを発生させる新しい手法を発明した。
従来技術・競合技術との比較
固体材料の物性評価に初めてデュアルコム分光法を適用し、従来に比べて高速、広帯域、超精密、高分解能な分光計測ができるようになった。また、従来のデュアルコム分光法は2台の光コム光源が必要であったが、本技術により1台で高安定な実用的小型デュアルコム光源を提供できるようになった。
新技術の特徴
・固体材料の複素光学物性を、広波長域、高精度、高分解能、超高速で計測できる
・デュアルコム分光において、自在なコヒーレント制御による新規な測定が可能になる
・デュアルコム光源の小型化、低価格化、高安定化が実現できる
想定される用途
・光学材料物性の超精密分光計測
・磁性材料物性の超精密分光計測
・生体材料物性の超精密分光計測
関連情報
・外国出願特許あり
- 計測
8)情報と計測の融合による視覚的質感の高速な取得方法 【さきがけ】
東京工業大学 工学院 情報通信系 准教授 渡辺 義浩
新技術の概要
視覚的質感として反射特性に着目する。同特性は、多次元のパラメータから成る膨大なデータ構造を有している。本発表では、ニューラルネットワークによる学習を活用することで、少数のサンプリングから高精度に反射特性を推定可能とする技術を紹介する。
従来技術・競合技術との比較
視覚的質感は、多次元のパラメータから成る膨大なデータ構造を有している。このため、同パラメータ空間を網羅的に走査しながら画像を取得する方法が一般的であり、遂行には数分~数時間を伴っていた。一方、デジタルアーカイブ、VR/AR、製造/農業などの分野では、同取得の高速化の要請が高まっている。
新技術の特徴
・少数回の計測で視覚的質感を再現
・機械学習により、高精度な再現が可能
・コンパクトなシステムでの取得が可能
想定される用途
・デジタルアーカイブの高速化
・バーチャルリアリティ・拡張現実のためのグラフィクス生成
・製造・農業分野における大量生産物の品質管理
- 計測
9)光干渉型表面応力センサによる超高感度分子間相互作用解析と多項目バイオマーカー検出 【さきがけ】
豊橋技術科学大学 大学院工学研究科 電気・電子情報工学専攻 准教授 高橋 一浩
新技術の概要
MEMS光干渉型表面応力センサの可動膜材料に自立二次元膜を適用することにより、単位面積当たりの応力感度を1000倍に向上し、ラベルフリー且つ超高感度に分子吸着を測定できるバイオセンサを開発した。さらに、検出部分にCMOSイメージセンサ回路を利用し、多項目のバイオマーカー診断を画像化して表示することが可能である。
従来技術・競合技術との比較
表面応力センサは吸着分子同士に働く相互作用をセンサ可動膜の応力として検出し、その応力感度は可動膜の膜厚の2乗に依存する。可動膜として自立グラフェンを用いることにより、従来の表面応力センサと比較して単位面積当たりの感度が1000倍向上できる。また、抗原抗体反応によるマーカー検出では基準値である1 ng/mLをその場で検出可能である。
新技術の特徴
・膜変位に対し、光透過率は指数関数的に増加・減少をするため超高感度化が可能
・可動膜膜厚の2乗に反比例する応力センサを薄膜化することにより、性能指数が従来の1000倍に向上
・CMOSイメージセンサ技術により画像化した計測器で多項目のマーカーをスクリーニングできる
想定される用途
・家庭での病気(がんやアルツハイマー病など)マーカー検出、早期診断
・創薬における研究開発ツール
・細胞の代謝活性の評価や神経伝達物質のイメージング
関連情報
・サンプルあり
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科学技術振興機構 戦略研究推進部 (さきがけ)
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