JST戦略的創造研究推進事業 新技術説明会 ~ライフサイエンス関連~
日時:2019年02月01日(金) 09:55~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
- マイクロLEDディスプレイに向けた三原色LEDの一体集積化技術について 【研究評価グループ】
- 人間の物体操作を模倣するロボット 【さきがけ】
- CD169マクロファージを標的とした炎症疾患治療戦略の構築 【研究評価グループ】
- 無限多重染色超解像顕微鏡IRISとプローブライブラリー 【CREST】
- 生体膜中での脂質の分布や挙動を高精度で評価する蛍光プローブの開発 【研究評価グループ】
- 新型インフルエンザの世界的流行を阻止するグラフェンセンサー 【CREST】
- 固体ナノ構造に基づく新型光ピンセット 【研究評価グループ】
- 植物の簡易診断チップ 【さきがけ】
- 深層学習による植物などのテクスチャにもとづく自動分類 【さきがけ】
- 【発表中止】教育・学習データの収集と分析のための情報基盤システムの開発 【さきがけ】
発表内容詳細
- デバイス・装置
1)マイクロLEDディスプレイに向けた三原色LEDの一体集積化技術について 【研究評価グループ】
上智大学 ナノテクノロジー研究センター 研究センター長・特任教授 岸野 克巳
新技術の概要
規則的に配列されたInGaN系ナノコラムでは、ナノコラム直径によって発光波長を可視域全域で制御できる。ナノパターン基板を使い、同一基板上にコラム径の異なる規則配列ナノコラム結晶を成長させれば、三原色(RGB)で発光するLEDの一体集積化が実現され、結マイクロLEDディスプレイに向けた基盤技術が得られる。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、RGB発光のμLEDを個別に作り、その微細チップをロボット実装で微細領域内に並べて、フルカラー発光のマイクロ画素を作製するが、RGBLEDの一体集積化技術が完成すれば、圧倒的に高い生産性が得られる。
新技術の特徴
・InGaN系ナノ結晶による高効率化
・RGB発光マイクロLEDの一体集積化
・赤色発光InGaN系LED高効率化の可能性
想定される用途
・マイクロLEDディスプレイ
・可視域発光素子
・網膜層型ディスプレイ用面発光レーザ光源
関連情報
・外国出願特許あり
- 機械
2)人間の物体操作を模倣するロボット 【さきがけ】
埼玉大学 大学院理工学研究科 数理電子情報系専攻 助教 境野 翔
新技術の概要
事前に形状や剛性等が不明な未知環境の操作はロボットには困難であり、肉体労働のロボット化への大きな障壁となっていた。環境操作に関わる人間の動作データを収集し、環境情報に対応する人間の行動をロボットに模倣学習させることで、接触力の制御を必要とするタスクにおいて著しく環境操作技能を向上させた。
従来技術・競合技術との比較
本手法では未知対象物の操作や柔軟物の把持に代表される力の制御が必須なロボットタスクを自律化することに成功した。学習に必要な試行回数も10~数10回程度であり、また、環境操作技能の特徴量の設計が不要である。
新技術の特徴
・力の制御ができるロボット
・10~数10回程度の試行回数で学習が可能
・データから直接ロボットタスクの設計が可能であり、特徴量の設計が不要
想定される用途
・料理、洗濯、アイロンがけ、掃除(風呂・トイレ含)等の家事の代替
・工場や倉庫内での不定形物のピッキングや組立作業の代替
・果物の採取、農作物の箱詰め等の農作業の代替
関連情報
・デモあり
- 創薬
3)CD169マクロファージを標的とした炎症疾患治療戦略の構築 【研究評価グループ】
東京薬科大学 生命科学部 免疫制御学研究室 准教授 浅野 謙一
新技術の概要
CD169マクロファージは血管・リンパと組織の境界面に局在し、外来抗原に対する免疫応答を制御している。本技術は、この細胞の産生するサイトカイン(CCL8)や、活性化に必須の転写因子(Maf)を抑制することで、CD169マクロファージの異常に起因する免疫疾患の治療法開発を目指すものである。
従来技術・競合技術との比較
マウス炎症性腸疾患モデルでの抗CCL8抗体の効果は証明済みであり、転写因子Mafが腸管マクロファージのCCL8産生に必須なことを論文報告している。CD169マクロファージの機能調節に特化することで、治療標的を限定できる。したがって抗TNF抗体に合併する日和見感染など重篤な副作用のリスクを軽減できる可能性がある。
新技術の特徴
・CD169マクロファージを標的とすることで、炎症性腸疾患・アレルギー性皮膚炎・がんなど、この細胞の異常に起因する、様々な疾患治療法を開発できる可能性がある
・マウスだけでなく、ヒトにも存在する細胞であり、リンパ節CD169マクロファージ数とがん患者の5年生存率が正相関するという興味深い臨床データを蓄積している
・ターゲットとする細胞が絞られているため、疾患特異性の高い治療法を開発できる
想定される用途
・炎症性腸疾患
・アレルギー性皮膚疾患
・悪性骨髄腫
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
4)無限多重染色超解像顕微鏡IRISとプローブライブラリー 【CREST】
京都大学 大学院生命科学研究科 分子動態生理学分野 教授 渡邊 直樹
新技術の概要
標的分子に迅速に結合解離を繰り返す蛍光プローブを用いるIRIS法により、同一標本内での多分子種の超解像可視化が可能となった。IRIS法は、抗体や蛍光タンパク質を用いた他の方式を超越する特長を複数備える。免疫組織化学自体に革命をもたらす可能性をもつ技術であり、普及に向けたプローブ集の開発が望まれる。
従来技術・競合技術との比較
電子顕微鏡は、特徴的な形をもつタンパク質複合体であれば高い分解能で捕捉できるが、形成途中、或いは変性した不定形のものを見落とす。既存の超解像顕微鏡は、抗体等による標識の密度や均一性に限界があり、近接した複数分子をとりこぼしなく可視化することができない。IRISは原理的にこれらの問題を解決する。
新技術の特徴
・無制限の多重染色
・高密度標識がもたらす「とりこぼし」のない高精細画像
・蛍光プローブの無尽蔵灌流を利用した超高分解能化や組織標本の三次元可視化
想定される用途
・細胞・組織標本内のタンパク質複合体の10ナノメーター精度の網羅的可視化
・自動顕微鏡化による普及型の病理組織多重染色解析
・低親和性分子間相互作用を評価する一手法として
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
5)生体膜中での脂質の分布や挙動を高精度で評価する蛍光プローブの開発 【研究評価グループ】
九州大学 理学研究院 化学部門 助教 木下 祥尚
新技術の概要
タンパク質などとは異なり、小さな脂質分子を標識化すると、プローブが立体障害となり脂質本来の性質が失われる。そのため、生体膜における脂質の分布や挙動を評価することは難しかった。本技術では、蛍光物質が脂質に接触しないように工夫して標識することで、脂質の挙動や分布を高精度で追跡できるようにした。
従来技術・競合技術との比較
これまで脂質の蛍光標識化は、目的とする脂質を特異的に認識するタンパク質を介して行われてきた。しかし、この方法ではタンパク質間の相互作用が優位に働き、脂質本来の分布や拡散挙動を変化させる。一方、本技術を用いることで脂質本来の性質を維持したままその分布や挙動を追跡できる。
新技術の特徴
・生体膜における脂質の分布や挙動をありのままに評価できる
・開発した分子設計は様々な脂質に応用できる(様々な種類の脂質を評価できる)
・脂質同士、もしくは脂質とその他の生体分子の相互作用を簡便に解析できる
想定される用途
・疾患の発端となる脂質の過剰蓄積部位の可視化やその解消法の探索
・脂質を標的とした病原体感染プロセスの解明
・ドラッグデリバリーシステムへの応用
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
6)新型インフルエンザの世界的流行を阻止するグラフェンセンサー 【CREST】
大阪大学 産業科学研究所 特任教授 松本 和彦
新技術の概要
二次元ナノカーボン材料グラフェンを用いたインフルエンザウイルスセンサーを開発している。医工薬連携により、グラフェンの優れた特性(二次元性・高移動度など)を活かした超高感度なセンシング原理を実証し、産学連携によりセンサーのポータブル化と実用化に向けて開発を進めている。この技術をさらに発展・展開させるためのパートナーを募っている。
従来技術・競合技術との比較
現在、インフルエンザ診断に多用されているイムノクロマトやPCR法では、ウイルスのヒト感染性を判断することはできない。これを調べる従来の方法は感度が足りず、ウイルスを培養して検査するために一週間程を要し、世界的流行阻止の初動に遅れを生じていた。
本技術は、患者の唾液中の濃度に相当する低濃度のウイルスを、培養無しで20分程度で検出することである。
新技術の特徴
・新規ナノ材料グラフェンの二次元性・高移動度を用いた超高感度なバイオセンサー
・ヒト由来糖鎖を用いることで、ヒト感染過程をセンサー上で模擬し、ヒト感染性をダイレクトに診断
・ポータブルな測定システムも開発中
想定される用途
・途上国や、空港・保健所等、医療インフラの十分でない場所にも容易に展開可能な防疫基盤
・細胞表面を模擬した構造を利用した抗ウイルス創薬基盤
・インフルエンザ以外の病原体等にも展開可能
関連情報
・展示品あり
- アグリ・バイオ
7)固体ナノ構造に基づく新型光ピンセット 【研究評価グループ】
大阪市立大学 大学院理学研究科 物質分子系専攻 化学科 教授 坪井 泰之
新技術の概要
従来の光ピンセットはマイクロメートル物質しか捕捉・操作できなかった。私たちは、貴金属のプラズモン光増強効果や、半導体ナノ構造の多重散乱効果を利用し、さらに小さいナノメートル物質を簡便に捕捉操作できる新型光ピンセットを開発した。DNAや鎖状高分子の捕捉操作も可能だ。
従来技術・競合技術との比較
従来の光ピンセットは、光学顕微鏡で見えるサイズの微粒子しか安定に光捕捉できない。また、100mW程度の強いレーザービームが必要だったが、新型光ピンセットは、1mW程度の微弱な光で、より小さなものの捕捉・操作ができる。
新技術の特徴
・シリコンナノ構造を使うので低コスト
・DNAや蛋白質も光捕捉できる
・レーザーポインターで光ピン設置ができる
想定される用途
・マイクロマシン
・生体分析化学
・結晶化
- アグリ・バイオ
8)植物の簡易診断チップ 【さきがけ】
名古屋大学 高等研究院 助教 野田口 理孝
新技術の概要
本診断チップは、植物組織に由来するRNA及びタンパク質を微量試料(葉の搾汁液であれば、10µL〜程度)から検出することができる。高精度の精製過程を必要とせず、現状でも2時間以内に植物試料から標的分子の検出を達成した。複数の標的分子を同一チップ上で同時に検出することが可能で、複数の診断項目を一挙に調べることができる。
従来技術・競合技術との比較
医療分野では血液の検査技術など、簡易な予防診断技術が作られてきた。一方で、植物の予防診断(状態診断)技術の開発はほとんど試みがない。植物を対象とした現状の分子検出は、研究室の設備を用いた分子生物学的手法に依存しており、本技術は、"lab on a chip" の発想の元にチップの上で分子検出を果たす。
新技術の特徴
・植物の葉の搾汁液(10µL)から標的分子を特異的に検出
・複数の標的分子を同時に検出
・短時間で検出(2時間以内)
想定される用途
・土壌肥料の要求量などを調べる生育診断
・病理診断(植物検疫)
・分子マーカー育種の低コスト化・高速化
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
9)深層学習による植物などのテクスチャにもとづく自動分類 【さきがけ】
京都大学 フィールド科学教育研究センター 准教授 伊勢 武史
新技術の概要
従来は識別が困難とされていた、深層学習による植物の自動識別・分類に成功した。植物の個体を識別することなく、葉などが集合した状態のテクスチャを認識することによりこれを達成した。
従来技術・競合技術との比較
従来の深層学習は、人の顔や自動車など、形状の明瞭な物体の認識に主に用いられてきたが、形状が不定形な植物体などの識別はあまり進んでいなかった。
新技術の特徴
・ドローンや航空機から撮影された画像から植物を自動識別
・目視による識別と同等以上の性能を発揮
・コケなどマット状に生育する植物にも応用可能
想定される用途
・精密林業のための現状把握(樹木タイプやサイズ、密度などの推定)
・竹林の拡大などリアルタイム性が必要とされる環境問題の現状把握
・遠隔地の植生状況を安価かつ正確に把握
関連情報
・サンプルあり
- 情報
10)【発表中止】教育・学習データの収集と分析のための情報基盤システムの開発 【さきがけ】
京都大学 学術情報メディアセンター/大学院情報学研究科 社会情報学専攻 教授 緒方 広明
新技術の概要
学習は、学校の中だけでなく、時間と場所に関係なく、いつでもどこでも生じる。そのような学習のプロセスを記録したものをラーニングログと呼び、これを有効活用するための基盤情報システムを開発している。具体的には、デジタル教材を中心とした学習ログと自分で登録する学習ログを合わせて分析して学習を支援する。
従来技術・競合技術との比較
従来は、LMS(Learning Manageme System)やデジタル教材などの学校教育でのフォーマルな環境を対象としたログの蓄積と分析が主であった。本研究では、これに合わせて学校以外のインフォーマルな環境での学習ログも蓄積・分析できる点で新規性がある。
新技術の特徴
・デジタル教材のアクセスログを記録・分析する
・学びの記録を自分で登録し分析できる
・生涯の学習記録を記録できる
想定される用途
・小学校、中学校、高校、大学などの学校教育
・学習塾、図書館、博物館などの学校外での学習
・企業内教育
関連情報
・デモあり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
科学技術振興機構 戦略研究推進部 (CREST)
TEL:03-3512-3531 FAX:03-3222-2066Mail:crest[at]jst.go.jp ※[at]をに置き換えてください。
URL:http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/
科学技術振興機構 戦略研究推進部 (さきがけ)
TEL:03-3512-3525 FAX:03-3222-2066Mail:presto[at]jst.go.jp ※[at]をに置き換えてください。
URL:http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/
科学技術振興機構 戦略研究推進部 (研究評価グループ)
TEL:03-3512-3523 FAX:03-3222-2066Mail:erp-ir-seikat[at]jst.go.jp ※[at]をに置き換えてください。
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