JST戦略的創造研究推進事業 新技術説明会 ~製造技術・情報・材料~
日時:2019年03月08日(金) 09:55~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
- 折紙の幾何学を用いた柔らかくて堅い構造 【研究評価グループ】
- ダイヤモンド電極によるCO2還元および有用物質の電解合成 【ACCEL】
- 光波の角運動量を駆使した物質構造制御 【研究評価グループ】
- 二核銅錯体触媒を利用した芳香族化合物の高速高効率な製造方法 【CREST】
- ビッグデータ同化による新世代気象予測 【CREST】
- 新型超低消費電力型メモリー 【CREST】
- 空間を飛び回るミリメートルサイズのLED光源を実現 【ERATO】
- 磁性材料を用いた革新的熱電変換技術とその熱電モジュール・熱流センサー応用 【CREST】
- 化学合成プロセスを変革する超活性固定化触媒 【ACCEL】
- 元素間融合による革新的ナノ材料の製造と応用展開 【ACCEL】
発表内容詳細
- 製造技術
1)折紙の幾何学を用いた柔らかくて堅い構造 【研究評価グループ】
東京大学 大学院総合文化研究科 広域システム科学系 准教授 舘 知宏
新技術の概要
折紙の数理を用いて、複数シートを平面状態で組み立てて、立体に折ると非常に堅い構造物を開発した。新規構造物は展開時に従来の100倍の堅さを持ちつつも柔軟に変形できるため、端部を駆動するだけで、全体形状が展開する。仮設建築物や可動式の屋根など建築分野での応用や、ロボット・アクチュエータ、航空宇宙等への応用が展望される。
従来技術・競合技術との比較
宇宙構造物、建築、家具、アウトドア製品など展開構造の従来提案は、傘のように折りたためる骨組みを使うため、空間を仕切ったり収納するためには、柔らかく遮蔽性の低い材料で表面材を作る必要がある。本折紙技術を用いると、厚みがあり剛性や遮蔽性の高いパネルで変形する空間を構成でき、連続変形のどの状態でも空間利用ができる。
新技術の特徴
・連続変形のどの状態においても、異なる容積や形をもち、剛性の高い構造を提供できる
・本構造はセル状に空間を充填し、その挙動はある形にのみ変形する機能性材料とみなせる
・筒形端部折りの動きを構造全体の伸展に変換でき、その駆動力の減衰は少ない
想定される用途
・空気圧や液圧で展開するアクチュエータ。変形しながらエネルギー吸収するダンパーなど
・折りパターンの3Dプリントにより、ある形にのみ変形する機能性素材 (4D/Functional Printing)
・折り畳み・展開する、仮設建築、シェルター、パーティション
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
・外国出願特許あり
- 製造技術
2)ダイヤモンド電極によるCO2還元および有用物質の電解合成 【ACCEL】
慶應義塾大学 理工学部 化学科 教授 栄長 泰明
新技術の概要
ホウ素をドープした導電性のダイヤモンド(ダイヤモンド電極)は、優れた電気化学特性をもち次世代の機能電極材料として期待されている。ここでは、物質合成用電極として、創薬、化学品合成への応用例、あるいはCO2を原料とした有価物生成について発表する。
従来技術・競合技術との比較
ダイヤモンド電極を用いることで、従来の化学合成、あるいは従来の電極材料を用いた電解では達成できない特異な反応を実現することが可能である。特に性能のみならず、耐久性に関しての優位性も大きい。
新技術の特徴
・特異的な反応を実現できる
・耐久性に優れている
・高効率での合成が期待できる
想定される用途
・CO2を原料とした有価物生成
・化学品合成
・創薬
- 製造技術
3)光波の角運動量を駆使した物質構造制御 【研究評価グループ】
千葉大学 大学院工学研究院融合理工学府 物質科学コース 教授 尾松 孝茂
新技術の概要
光波の角運動量は物質を螺旋構造に変化させる。例えば、ナノメートルからマイクロメートルサイズの金属やシリコンの螺旋ニードル、螺旋ファイバーなど、既存の加工技術では得られない多様な新奇構造が光照射で簡単に創れる。本発表では光波の角運動量の基礎から新奇構造の実例まで概説する。
従来技術・競合技術との比較
既存のレーザー加工技術や化学反応を駆使してもナノメートルからマイクロメートルサイズの金属やシリコンの螺旋ニードル、螺旋ファイバーなどの構造体を室温大気雰囲気中で創ることは難しい。
新技術の特徴
・螺旋構造の創成
・室温帯域雰囲気中プロセス
・光照射のみの加工プロセスで量産可能
想定される用途
・メタマテリアル、ラリティー制御デバイス
・無痛針(中空針)、光造形的作製
・創薬用分子結晶でのキラリティー制御結晶育成
関連情報
・外国出願特許あり
- 製造技術
4)二核銅錯体触媒を利用した芳香族化合物の高速高効率な製造方法 【CREST】
同志社大学 理工学部・理工学研究科 機能分子・生命化学科・応用化学専攻 教授 小寺 政人
新技術の概要
本発明は特定の銅錯体を触媒とし、芳香族化合物を効率よく直接酸化してフェノール系化合物を製造する方法である。開発した銅錯体は、酸化触媒活性が非常に高いため、ベンゼンのように安定で反応しにくい芳香族化合物でも酸化することができる。選択性も高いため、様々な有機化合物の製造への応用が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
フェノール製造は従来、ベンゼンからクメンを経由して製造するクメン法が利用される。しかし、クメン法は高温高圧を必要とする多段階方法であり、その総収率もおよそ5%と低く、非効率的であり、ベンゼンを直接酸化できる手法が望まれていた。新技術は、特定の銅錯体触媒と酸化剤により、常圧下・50℃程度で高速高効率にベンゼンを直接酸化することに成功した。
新技術の特徴
・生成物として選択的にフェノールを生成するので、副生成物が抑制できる
・常圧、低温状態で反応が可能であり、また反応速度が速く、触媒回転数が大きい
・過酸化利用率が高いので、酸化剤コストを抑制できる
想定される用途
・フェノール生成
・様々な有機化合物の選択的酸化反応の触媒
・メタンを含む様々なアルカン類の酸化によるアルコールやアルデヒド製造への展開
関連情報
・サンプルあり
- 情報
5)ビッグデータ同化による新世代気象予測 【CREST】
理化学研究所 計算科学研究センター データ同化研究チーム チームリーダー 三好 建正
新技術の概要
新世代の気象観測と最先端のスパコンによるシミュレーションを組み合わせ、今までにないほど時間的・空間的緻密さを高めた天気予報を提供する。具体的には「フェーズドアレイ気象レーダを使った10分前(将来的には1時間前)ゲリラ豪雨予測」と「ひまわり8号を用いた1日前の集中豪雨予測と数日前からの台風予測」を可能にする。
従来技術・競合技術との比較
30秒毎に更新するゲリラ豪雨予測は、CREST中間評価において「国際的にもonly oneの技術」と高く評価された技術であり、他の追随を許さない競合優位性の高い技術である。また、ひまわり8号の全天候輝度温度のビッグデータ同化も世界に先んじて開発した技術であり、競合優位性が高い。
新技術の特徴
・フェーズドアレイ気象レーダを使った30秒毎に更新するゲリラ豪雨予測
・ひまわり8号を使った1日後の集中豪雨予測
・ひまわり8号を使って数日後の台風予測精度を向上
想定される用途
・行政機関等における防災・減災業務
・東京オリンピックなどの大規模イベント時のピンポイント天気予報
・スマートフォン等を用いた個別のユーザへのピンポイント天気予報のリアルタイム配信、QoL向上サービス
関連情報
・サンプルあり
- 電子
6)新型超低消費電力型メモリー 【CREST】
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授 一杉 太郎
新技術の概要
100nm程度の厚みのLi、Li3PO4、Ni薄膜を積層した構造において、メモリー動作させる。Liイオンが極微少量動くだけで、Niの電位が変化するため、電圧を出力する不揮発性メモリーとして用いることができる。
従来技術・競合技術との比較
DRAMに比べて非常に単純な構造であり、かつ不揮発性という点で差がある。また、消費電力はDRAMの1/10以下と予測でき、FeRAMやフラッシュメモリーと比べても、極めて低消費電力で動作する。
新技術の特徴
・単純積層構造で製造が容易
・極めて低い消費電力
・ニューロモルフィックメモリーとしての動作も可能
想定される用途
・エレクトロニクス情報記録素子
・脳型コンピュータの演算素子
関連情報
・外国出願特許あり
- デバイス・装置
7)空間を飛び回るミリメートルサイズのLED光源を実現 【ERATO】
東京大学 大規模集積システム設計教育研究センター 准教授 高宮 真
新技術の概要
超音波集束ビームを用いて空中浮遊・移動する直径4ミリメートルの極小LED光源を開発した。極小LED光源の空間中の移動と点灯・消灯はコンピューターから無線で制御でき、将来は手で触れる空中ディスプレイ向けの発光画素への応用が期待される。
従来技術・競合技術との比較
従来の超音波浮遊では非電子物体(例えば小さな発泡スチロール玉)の浮遊しか実現できなかったが、本技術では電子物体を超音波浮遊をすることができる。これにより浮遊物体にセンサ・アクチュエータ・無線通信機能を搭載することが可能になった。また、超音波浮遊と無線給電を両立させることも可能にしている。
新技術の特徴
・超音波集束ビームを用いて空中浮遊・移動する直径4ミリメートルの極小LED光源を開発
・無線給電を使用した電池の不要化と専用ICによる小型・軽量化により超音波浮遊に成功
想定される用途
・手で触れる空中ディスプレイ向けの発光画素への応用
・専用ICに温度センサを内蔵して1つの浮遊センサノードで3次元空間の温度分布の計測
・ビニルハウス内で温度分布や光量分布の3次元計測
- 材料
8)磁性材料を用いた革新的熱電変換技術とその熱電モジュール・熱流センサー応用 【CREST】
東京大学 物性研究所 量子物質研究部門 教授 中辻 知
新技術の概要
磁性体の電子構造のトポロジーを利用した巨大異常ネルンスト効果を用いることで、温度差と垂直に発生した電圧を取り出せる革新的な熱電技術。そのため、熱源に沿う形で単純なモジュール構造の拡張が可能となり、フィルムやテープ状の熱電モジュールや、高感度熱流センサーの開発に応用可能。
従来技術・競合技術との比較
ゼーベック素子とは異なり熱源に沿った展開が容易であり、フィルムやテープ状にできることで、接触抵抗は大きく低減すると同時に、モジュール・センサーの製造コストは大幅に下がる。また、従来の機構と比べ材料の幅は大きく広がり、堅牢性、耐久性を持つ熱電材料の選択が出来る。
新技術の特徴
・フィルム上の素子を作成することで熱源に沿った展開による効率的廃熱回収が可能
・ゼーベック効果では得られないプロセス数の大幅減を実現し低コスト化を実現
・室温以上で使える安全・低価格の無毒な材料
想定される用途
・IoTセンサー用独立電源
・高感度熱流センサー
・数100度C程度の未利用熱の熱電変換用素子
関連情報
・サンプルあり
・展示品あり
・外国出願特許あり
- 材料
9)化学合成プロセスを変革する超活性固定化触媒 【ACCEL】
分子科学研究所 教授 魚住 泰広
新技術の概要
精密に設計された分子性触媒の固定化により、高度な分子変換機能と実用性を備えた不均一触媒を開発した。固定化銅触媒によるHuisgen反応、固定化パラジウム触媒による超活性Suzuki反応、固定化酸触媒による高機能エステル化などを紹介する。これら反応は固定化触媒を固定相とする連続フロー化が可能であり、生成物中への触媒種の流出はほとんど見られない。高分子固定相の特性によって高い触媒活性が実現され、例えばパラジウム触媒、銅触媒反応は出発物質のppm-ppbの触媒量で実施できる。
従来技術・競合技術との比較
従来の遷移金属触媒はしばしばmol%触媒量(10̄²)を要する。本発明の固定化触媒はppm-ppb(10̄⁶〜10ˉ⁹)触媒量での分子変換を実現する。多くの場合、反応は水中で進行し、安全性や環境調和性に秀でている。また、生成物に触媒由来の不純物混入がなく、精製工程を省力化できるとともに製品の純度が原理的に担保される。
新技術の特徴
・超高活性触媒が実現される
・触媒種の漏出がない
・フロー合成に展開できる
想定される用途
・トリアゾール環を持つ医薬品(銅触媒Huisgen反応)
・アクリルエステル類の合成(酸触媒エステル化反応)
・ビフェニル型あるいはトリアリールアミン型電子材料(固定化パラジウム触媒カップリング反応)
関連情報
・展示品あり
・外国出願特許あり
- 材料
10)元素間融合による革新的ナノ材料の製造と応用展開 【ACCEL】
京都大学 大学院理学研究科 化学専攻 教授 北川 宏
新技術の概要
バルク状態では相分離して混ざり合わない金属の組合せを独自のプロセスで固溶化することで、新規ナノ合金材料を開発し、元の物質にはない、あるいは元の物質を上回る特性を数多く見出している。潜在的用途開発例を幾つか紹介する。
従来技術・競合技術との比較
従前の材料よりも格段に材料のコスト削減を図ることができ、かつ、性能を向上させることが可能な新技術である。
新技術の特徴
・新物質、新材料
・安定大量生産が可能
・機能・物性の連続制御が可能
想定される用途
・排ガス浄化、VOC浄化
・電極触媒
・化学プロセス触媒
関連情報
・外国出願特許あり
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