首都大学東京 新技術説明会
日時:2018年07月10日(火) 13:30~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、首都大学東京
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)新規な構造を有する層状超伝導体とその応用可能性
首都大学東京 大学院 理学研究科 物理学専攻 助教 後藤 陽介
新技術の概要
ファンデルワールス・ギャップを含む新しい層状超伝導体を開発した。この超伝導体の特徴は、スズとニクトゲン(リン、ヒ素、アンチモンなどの第15族元素)からなるハニカム型の伝導層と、アルカリ金属イオンなどからなるスペーサー層が交互積層した構造を有する点である。超伝導転移温度は1-2K程度である。
従来技術・競合技術との比較
ファンデルワールス・ギャップをもつ化合物は、グラフェンや遷移金属カルコゲナイドのように容易な劈開性を生かした新機能開拓が世界的に進められている。今回開発した新規超伝導体は、この特徴に加えて、元素置換性や構造制御による多様な物性制御が可能である点に特徴がある。
新技術の特徴
・ファンデルワールス・ギャップをもつ新しい層状超伝導体
・多様な元素置換による物性制御
・容易な劈開性を生かした物性研究
想定される用途
・トポロジカルな性質を生かした量子コンピュータなどの新規デバイス
・超伝導ケーブル
・2次元材料を用いた新規デバイス
- 材料
2)溶媒を使わない固体金クラスター触媒の調製法
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 環境応用化学域 准教授 石田 玉青
新技術の概要
簡便に合成できる有機金錯体と金属酸化物を固相で混合し、焼成することで直径5 nm以下の金ナノ粒子を金属酸化物上に分散固定化できる。従来法では、溶媒として水や有機溶媒を用いるため、触媒調製後には大量の廃液が発生する問題があった。本新技術では溶媒を使わないため、廃液を出さないクリーンな触媒調製法を提供する。
従来技術・競合技術との比較
従来法では溶媒として水や有機溶媒を用いるため、触媒調製後には大量の廃液が発生するが、本新技術では溶媒を使わないため、廃液を出さないクリーンな触媒調製法を提供する。溶媒を使わない調製法では、前駆体となる金錯体が高価で合成も難しいが、本新技術で用いる金錯体は合成が簡単で空気中でも安定かつ、取り扱いも容易である。
新技術の特徴
・廃液を出さないクリーンな触媒調製法
・簡便に合成でき、空気中で安定な有機金錯体
・直径5 nm以下の金ナノ粒子触媒
想定される用途
・有機合成用触媒
・空気浄化触媒
- 材料
3)低温でアルコールから水素製造を可能にする新規触媒
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 環境応用化学域 教授 宍戸 哲也
新技術の概要
150℃程度の外部加熱温度で高い水素生成速度を達成するための新規触媒を提供する。新規触媒は、雰囲気の変動ならびに温度の変動に対して高い安定性をしめす。また、還元処理を行うことなく反応ガスを導入するだけで活性化が可能である。
従来技術・競合技術との比較
従来の触媒では改質反応を進行させるために200℃以上の温度が必要であったのに対して、150℃程度の温度で高い水素生成速度を示す。また、従来の触媒では活性化に必須であった還元処理を必要としない。
新技術の特徴
・低温での高い水素生成速度
・雰囲気・温度変動に対する高い安定性
・触媒の活性化に還元処理が不要
想定される用途
・燃料電池用水素改質装置
・水素製造装置
- 材料
4)新規な化学構造を持つナノファイバーとその応用
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 環境応用化学域 教授 川上 浩良
新技術の概要
プロトン伝導性ナノファイバー表面に酸を凝集した層を構築し、それによるプロトン伝導性の向上と膜の薄膜化、さらにはガスクロスリークの抑制を可能とする、ナノファイバーフレームワークの作製に関する技術である。
従来技術・競合技術との比較
燃料電池用高分子形電解質膜の問題は、低加湿下での低い伝導性、高いガスクロスオーバー、さらには膜の高コスト化である。これらを全て解決できる技術が求められており、本新技術はそれらの解決に向けた新しい材料である。
新技術の特徴
・低加湿下での高いプロトン伝導性を持つ
・5mm以下の薄膜化が可能で、その結果、著しいコストダウンが実現できる
・充填する高分子マトリックスのガスクロスリークを抑制する
想定される用途
・燃料電池用高分子形電解質膜
- 材料
5)燃料電池用の新規な電解質
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 環境応用化学域 教授 金村 聖志
新技術の概要
200度以下の温度で作動する中温型の燃料電池はリン酸型のみである。本新技術は、イオン液体とリン酸を組み合わせ、さらにそれを三次元規則配列多孔構造を有するポリイミド膜に保持させた新規な電解質膜を用いた燃料電池である。この燃料電池を180度の温度で安定に作動させることに成功している。
従来技術・競合技術との比較
ナフィオンなどのプロトン伝導性膜が一般的に用いられているが、水分の管理が必要で燃料電池の作動温度を80度以上にすることができない。今回開発した燃料電池は150度以上の温度で作動するため、エネルギー変換効率の向上やシステムの簡略化が期待される。
新技術の特徴
・中温作動燃料電池
・中温作動燃料電池用電解質膜
・中温作動燃料電池用触媒
想定される用途
・燃料電池車
・家庭用電源
・非常用電源
関連情報
・サンプルあり
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