バイオメディカルエンジニアリング 新技術説明会
日時:2018年09月11日(火) 13:00~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、東洋大学・中央大学・上智大学
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- 医療・福祉
1)直流電気刺激装置を用いた骨量維持法
東洋大学 ライフデザイン学部 健康スポーツ学科 教授 大迫 正文
新技術の概要
高齢化に伴って増え続ける中高年者の骨粗鬆症への対策や、受傷したアスリートが安全に競技復帰できるようにリハビリ期の骨量を維持する方法として、医師や鍼灸師などの特殊な資格を必要せず、パッドによる体表からの刺激でもそれらの効果が得られる方法及び装置について説明する。
従来技術・競合技術との比較
交流の電気刺激装置は、鍼灸針を骨膜まで刺入する場合に顕著な骨量維持効果をもたらすが、パッドによる体表からの刺激では刺激が皮下で減衰するために同様な効果が得られない。これに対して、直流の電気刺激装置を用いることによって経皮的な刺激でも顕著な骨量維持を図ることが可能となる。
新技術の特徴
・医師、鍼灸師等の有資格者でなくてもできる。
・パッドにより体表から刺激するため、簡便で安全である。
・骨粗鬆症に用いられてきた薬剤の減薬が可能となる。
想定される用途
・非活動的な生活を送る中高年者の骨粗鬆症予防に寄与し得る。
・受傷したアスリートのリハビリ期の骨量減少を抑え、安全な競技復帰を可能にする。
・動物(ペット、競走馬など)の骨折後の回復を促進する。
- 医療・福祉
2)リポソームバイオリアクター(人工細胞バイオリアクター)
中央大学 理工学部 精密機械工学科 教授 鈴木 宏明
新技術の概要
細胞と同程度の大きさ(1-100マイクロメートル)の人工脂質膜小胞(ジャイアントリポソーム)内で様々な生化学反応を行うことができる技術を開発した。また、膜融合や膜分裂を誘発させ、内容物や膜局在分子を動的に操作できる。
従来技術・競合技術との比較
現在、油中水滴(ドロップレット)を使った微小生化学反応場の利用がバイオテクノロジーで利用されている。ドロップレットは油中に存在するが、リポソームは水溶液中で扱える生体界面であるため、生体適合性が高く、膜タンパク質等の生体膜局在分子も扱える。
新技術の特徴
・生体(細胞)を模擬した微小バイオリアクター
・生理活性物質(核酸、タンパク質、薬剤など)の生産とその直接利用が可能
・膜融合・膜分裂による内封物質や膜局在物質の動的操作も可能
想定される用途
・核酸医薬等のドラッグデリバリー
・膜タンパク質の発現とその場利用
・局所環境における物質のサンプリング、放出
- 医療・福祉
3)π共役系高分子を用いた生体分子認識技術
上智大学 理工学部 物質生命理工学科 教授 竹岡 裕子
新技術の概要
アデノシン三リン酸(ATP)のアデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)への変換は、生体内において重要な役割を果たしている。それ故、リン酸系生体分子の認識材料や反応系の探索は注目を集めている。 今回カチオン性基を有する共役系ブロック共重合体を用いることでATP、ADP、AMPを識別することが可能であることを見出した。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、低分子発光材料や超分子技術を用い、ATP存在下における発光強度と吸収波長の変化からATPセンシングが行われている。本研究では、ATP存在下では蛍光が減少し、ADPとAMP存在下では蛍光が増幅するというリン酸一分子の違いを認識することが可能となっており、この点が他にはない有利な点と言える。
新技術の特徴
・溶液系における分子認識
・基板、分散系でも分子認識可能
・蛍光顕微鏡を利用して細胞中における認識も可能
想定される用途
・バイオセンサー
・核酸濃縮剤
・発光素子
- 医療・福祉
4)多孔膜垂直配置マイクロ流体デバイスを用いるバイオ分析
東洋大学 理工学部 応用化学科 准教授 佐々木 直樹
新技術の概要
多孔膜を組み込んだマイクロ流体デバイスは、疑似生体環境下における血管透過性のin vitro評価等に応用されてきた。本技術はこの膜をデバイスの基板に対して垂直に配置するものである。これにより、蛍光標識試料の膜透過を顕微鏡下で容易に観察できるようになり、輝度に基づく透過性の定量評価が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
従来技術は膜をデバイスの基板に対して平行に配置するため、蛍光試料の膜透過が顕微観察時に深さ方向となる。このため、試料の空間分布の情報を得るには共焦点蛍光顕微鏡等の高価な装置が必要であった。本技術で作製したデバイスでは蛍光試料の膜透過の向きが観察面内となるため、空間分布の情報を通常の蛍光顕微鏡で容易に取得できる。
新技術の特徴
・マイクロ流路内に多孔膜を配置
・試料の膜透過を通常の顕微鏡で容易に観察可能
・疑似生体環境下で実験可能
想定される用途
・ドラッグデリバリー用ナノ粒子の性能評価
・内皮・上皮細胞層の物質透過性評価
・機能膜・分離膜の評価
関連情報
・サンプルあり
- 医療・福祉
5)振動誘起流れを用いた微小流体・微小物体操作技術
中央大学 理工学部 精密機械工学科 助教 早川 健
新技術の概要
紹介する技術は、マイクロ領域の流体の特性を利用した流体制御技術であり、微小流体の制御及び微小物体の操作を従来よりも低コスト・容易に行える可能性を持つ。また、流体制御において外部ポンプを用いないためポンプとのチューブ接続を行う必要がなく、操作対象の物体を失う可能性が低い。これまでに微小物体として細胞を対象とした搬送・濃縮・補足・回転・単一分離などの操作を行った事例を紹介する。
従来技術・競合技術との比較
・煩雑な圧力制御を必要としない微小流体制御技術
・外部チューブ接続が必要なく、希少なサンプル中の細胞を失うことなく操作可能
新技術の特徴
・微小流体制御
・簡便・安価なマイクロ流体制御技術
想定される用途
・マイクロ流体チップ・マイクロデバイス中の微小流体制御
・細胞培養デバイス中の還流機構
- 医療・福祉
6)エラスチン分解アミノ酸の定量分析
上智大学 理工学部 物質生命理工学科 准教授 臼杵 豊展
新技術の概要
弾性線維エラスチンの分解を伴うCOPDや動脈瘤などの疾患が近年注目されている。エラスチンの架橋アミノ酸デスモシンは、それらの疾患の進行にともない生体内に代謝されるバイオマーカーである。本研究では、化学合成した同位体標識デスモシンを内部標準物質としたLC-MS/MS法によるデスモシンの定量分析法を確立した。
従来技術・競合技術との比較
臨床試料中のデスモシン量は極めて低いため、高感度かつ厳密な分析法が求められていた。当研究グループのみによって化学合成可能な同位体標識デスモシンを内部標準物質とすることで、これまでにない高感度LC-MS/MS法を実現した。
新技術の特徴
・LC-MS/MSを用いた精密なデスモシンの定量分析が可能
・デスモシンとその異性体であるイソデスモシンの分析も可能
・国内での臨床試料の分析は今後検討予定
想定される用途
・COPDや動脈瘤の臨床試料中のデスモシンの定量分析により診断法の確立や新薬開発への応用が期待。
・人工合成デスモシンタンパク質中のデスモシンの定量分析
・魚類や肉類の食品含有のデスモシン量の定量分析
関連情報
・外国出願特許あり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
東洋大学 研究推進部 産官学連携推進課
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URL:http://www.toyo.ac.jp/site/ciit/
中央大学 研究推進支援本部
TEL:03-3817-1603 FAX:03-3817-1677Mail:cliptamajs.chuo-u.ac.jp
URL:http://www.chuo-u.ac.jp/research/industry_ag/clip/
上智大学 学術情報局 研究推進センター
TEL:03-3238-3173 FAX:03-3238-4116Mail:g_rantcl.sophia.ac.jp
URL:http://www.sophia.ac.jp/
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