京都大学 新技術説明会
日時:2019年05月16日(木) 11:00~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、京都大学、関西ティー・エル・オー株式会社、iPSアカデミアジャパン株式会社
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- 機械
京都大学 大学院工学研究科 機械理工学専攻 助教 山田 崇恭
新技術の概要
電磁気学におけるマクスウェル方程式、流体力学におけるナビエストークス方程式のように、幾何学的特徴量に対する偏微分方程式を発明した。これにより、2D及び3D画像からの幾何学的特徴量の抽出や、導関数に基づく高度な画像処理が可能になる。また、トポロジー最適化における幾何学的制約(傾斜角・厚み)も可能にした。
従来技術・競合技術との比較
通常のトポロジー最適化の幾何学的制約は、制約を満たす範囲のみに形状変更を許容する方法であるため、高い性能を持つ設計解を得ることが難しい。 画像解析への応用においては、通常の方法では、画像の変化に対する解析は本質的に不可能であるが、本発明では、数理モデルを介して画像の変化に対する情報解析が可能である。
新技術の特徴
・積層造形における積層限界角度を考慮したトポロジー最適化が可能
・CTやMRI等の画像データから幾何学的特徴量(法線、曲率、厚み等)を抽出
・最小厚み等の製造工程から要求される幾何学的制約を考慮したトポロジー最適化が可能
想定される用途
・積層造形においてサポート材なしに製造可能な最適形状を創成
・リバースエンジニアリング等のデジタルエンジニアリング
・CT画像及びMRI画像における幾何学的特徴量に関する高度な処理技術
関連情報
・デモあり
・外国出願特許あり
- 分析
京都大学 白眉センター 特定准教授 潮 雅之
新技術の概要
世の中には日周変動や年周変動といった周期性を持つ現象はありふれているが、「周期が同調した現象間の因果」を検出することは容易ではない。今回周期性の解析手法であるフーリエ解析と因果推論の手法を組み合わせ「同期した時系列間の因果関係」を検出する手法を開発した。
従来技術・競合技術との比較
時系列解析を利用した因果推論手法は多くあるが、それらは「同調した時系列」に適用すると「因果関係の誤判定」がしばしば起こる。今回開発した手法ではそのような「誤判定」の可能性が従来より格段に下がる。さらに、正しい因果をモデルに組み込むことで系に将来起こる変化も予測可能である。
新技術の特徴
・同期した複数の時系列から因果関係を特定可能
・対象とする系をどのように操作すれば望む変化を起こせるか提案可能
・時系列データさえあればどのような分野でも応用可能
想定される用途
・腸内細菌データから人の健康に影響を与える微生物種を特定
・温度や振動といった物理現象データから製品の品質に与える要因を特定・改善法の提案
・発酵食品の製造中の微生物データ・環境データの変動情報から食品の品質改善法を提案
関連情報
・サンプルあり
- 機械
京都大学 大学院工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻 准教授 河野 大輔
新技術の概要
ボルト結合部などにおける結合面を均一に接触させる技術である。切削面でも研削面なみの接触剛性を実現することができる。切削痕を交差させて結合し、切削痕頂点を大きく塑性変形させることで,結合面のうねりによる不均一な接触を防ぐ。
従来技術・競合技術との比較
ボルト結合面などにおいて、高剛性な結合が必要な場合には、平面研削盤を用いた研削加工などによって結合面の平面度と表面粗さを向上させていた。新技術では、切削面でも研削面なみの剛性を得ることができるため、仕上げコストが低減される。
新技術の特徴
・ボルト結合部などにおける結合面を均一に接触させる
・切削面でも研削面なみの接触剛性を実現することができる
・表面性状を向上させるための研削加工が省略可能
想定される用途
・ボルト結合面の剛性向上と再現性向上
・クランプ治具の把持剛性向上と再現性向上
・予圧によって結合する結合部全般の剛性向上と再現性向上
- 創薬
京都大学 医学部附属病院 臨床研究総合センター 准教授 池田 華子
新技術の概要
クリスタリン網膜症は、網膜色素変性の類縁疾患で、進行性の視力低下・視野狭窄をきたす網膜の変性疾患である。治療法がなく、多くは5-60代に社会的失明をきたす。常染色体劣性遺伝形式をとり、CYP4V2が原因遺伝子と同定されたが、発症メカニズムは不明であった。
本研究では、患者iPS細胞から分化させた網膜色素上皮細胞を用い、細胞内遊離コレステロールの蓄積を原因とするリソソーム・オートファジの障害が、細胞死を惹起することを明らかにした。さらに、シクロデキストリン誘導体は、細胞内遊離コレステロール蓄積を軽減し、細胞死を抑制することを明らかにした。
従来技術・競合技術との比較
クリスタリン網膜症に対して、進行抑制・治療薬は存在しない。
新技術の特徴
・BCD患者iPS細胞由来RPE細胞によりスクリーニングされた化合物であるので臨床予測性を担保している
・シクロデキストリン誘導体は、食品添加物として以前から使用されており、安全性は高い
・作用機序が解明できている(mode of actionをクリアしている)
・稀少疾患であるので社会貢献性が高い、First Trackになり得る。
想定される用途
・クリスタリン網膜症に対する治療薬
・加齢黄斑変性に対する治療薬
・加齢黄斑変性に対する治療薬スクリーニング系
関連情報
・外国出願特許あり
- アグリ・バイオ
京都大学 iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 教授 長船 健二
新技術の概要
ヒトiPS細胞から発生過程を正確に再現し、成体腎臓の糸球体や尿細管を派生させる胎児期のネフロン前駆細胞を高効率に分化誘導する方法を開発し、そのネフロン前駆細胞から糸球体と尿細管を含む腎オルガノイドを作製可能とした。
従来技術・競合技術との比較
過去に主に3つのヒトiPS細胞からネフロン前駆細胞を分化誘導する方法が報告されているが、それらの方法と比べ本技術は80%以上の高効率でネフロン前駆細胞を作製可能であることと、さらに既報のものよりも正確に発生過程を再現しより生体内のものに近い腎細胞や腎組織が形成されている長所がある。
新技術の特徴
・高効率にヒトiPS細胞からネフロン前駆細胞を分化誘導する
・ネフロン前駆細胞の発生過程を正確に再現する
・2次元培養を用いているため簡便で再現性が高い
想定される用途
・腎疾患に対する細胞療法の開発
・腎オルガノイドを用いた創薬と薬剤腎毒性評価系の構築
・移植用腎臓の再構築
関連情報
・外国出願特許あり
- 電子
6)固有値を共有する物理複製困難関数回路
発表資料京都大学 大学院情報学研究科 通信情報システム専攻 教授 佐藤 高史
新技術の概要
製造時の物理的ばらつきを利用して、入力に対応する出力がICチップごとに異なるようにした(固有値を持たせた)回路を物理複製困難関数(PUF)と呼ぶ。本発明では、回路上の工夫により、固有値の複製が困難というPUF本来の性質を保持しながら、等価なPUFを複数のICチップに作製する方法を与える。
従来技術・競合技術との比較
製造時の物理的ばらつきを利用することから従来のPUFは物理的な複製が出来ず、データベース等に固有の入出力を記録することで認証に用いている。保存されたデータは脆弱性の原因となり得るだけでなく、認証方式に制限を与える。本発明では、データ記録を不要とし複製困難なICチップ間での直接認証を可能とする。
新技術の特徴
・複製困難なICチップ間での直接認証が可能となる
・認証のためのサーバを介さずピアツーピアで認証が可能
・認証キーとなる膨大な固有値データの保存も不要
想定される用途
・ハードウェアセキュリティ
・IoTにおける認証・暗号をもちいた通信
・製品の真正性の保証
- 材料
京都大学 大学院工学研究科 材料工学専攻 准教授 野瀬 嘉太郎
新技術の概要
SnSに代表される14族カルコゲナイドの簡便な製造方法。SnSを例にとれば、容易に作製可能なSn-SnS二相共存材料から、SnとSnSとの蒸気圧差を利用することで純度の高いSnS(単結晶)材料、薄膜材料を簡便に得ることができる。Ge系、Se系、Te系への展開も容易。
従来技術・競合技術との比較
従来は凝固過程を用いた作製技術や精密な硫黄蒸気圧制御が必要なプロセスであるのに対し、本技術は気相を用いた純化とサンプル作製を同時に行う技術である。アメリカのベンチャー企業で販売されている単結晶よりも10倍以上大きなサンプルが作製できている。
新技術の特徴
・不純物(酸化物,対象ではない硫化物)がほとんどない(純度99.99%以上)
・バルク形状,および薄膜形状のサンプル作製が可能
・cmオーダーのサンプル作製が可能(従来は数mm)
想定される用途
・トランジスタ
・太陽電池
・熱電材料
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
8)遺伝子工学的改良が可能な短鎖炭化水素化合物酸化生体触媒
発表資料京都大学 大学院農学研究科 応用生命科学専攻 教授 阪井 康能
新技術の概要
メタンの酸化は、非常に強いCH結合の活性化を伴う夢の反応といわれる。メタン酸化酵素(MMO)は、メタンのみならず短鎖アルカンなどを基質とするが大腸菌など、異種生物での遺伝子活性発現にはだれも成功していなかった。我々は、フローサイトメトリーを用いて、反応産物であるメタノールに応答して蛍光を発する酵母細胞を宿主としたMMO活性発現スクリーニング系を新たに構築し、細胞内で活性型MMOを発現させるDNA断片を得ることに成功した。今後、遺伝子操作によりさらなる改良が加え、様々な酸化反応に利用できると考えている。
従来技術・競合技術との比較
従来、MMOの活性発現には凝集体からのリフォールディング作業が必要であったが、今回、一細胞解析を
用いたハイスループットスクリーニング技術を開発することで、細胞内活性型で発現させることに成功し、
細胞触媒として直接、酸化反応に応用し、かつ、今後、目的に応じて、遺伝子操作によるさらなる改変検証が
できるようになった。
新技術の特徴
・短鎖アルカン骨格をもつ化合物の酸化反応
・メタノールを生成する酵素の改良のためのハイスループットスクリーニング(メタン酸化、エステラーゼなど)
想定される用途
・短鎖アルカン骨格をもつ化合物の酸化反応 (プロピレンオキサイドやハロゲン化化合物などを含む)
・メタノール生成酵素 の改良 (MMOの他、ペクチンメチルエステラーゼなどメチルエステラーゼ)
・メタノール資化性微生物によるメタンからの直接発酵生産
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