九州大学 新技術説明会
日時:2019年10月17日(木) 10:25~15:25
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、九州大学
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 准教授 岸村 顕広
新技術の概要
高分子電解質をひと工夫こらして修飾して用いることで、タンパク質を積極的に濃縮する新技術を開発した。高分子のデザインに応じてタンパク質取り込み能を変えたり、機能を保持したり、放出したりすることが可能な技術であることを見出した。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、使いたいタンパク質に対してコアセルベート(濃厚液相)形成が常に可能なわけではなく、不可逆的凝集を起こし機能を喪失してしまうことが多くあった。本技術では、高分子の合理的な設計に基づき、荷電性高分子からなるコアセルベートを作製することで、所定のタンパク質を濃縮した液状材料を作製する新技術を開発した。
新技術の特徴
・タンパク質水溶液からタンパク質を濃縮した液体を調製することが可能。
・あらかじめ作製した液体にタンパク質を抽出することが可能。
・タンパク質を放出することが可能。
想定される用途
・化粧品、医薬品、食料品(タンパク質の安定化、徐放基材として)
・酵素固定担体として(産業応用として)
・タンパク質の分離、抽出
- アグリ・バイオ
2)特定領域の発現情報を光照射で取り出す技術
発表資料九州大学 大学院医学研究院 発生再生医学分野 講師 沖 真弥
新技術の概要
我々の開発した新技術、Photo-Isolation Chemistry (PIC) では、様々な細胞タイプが混在する組織切片を準備し、興味のある領域 (ROI) に特定波長の光を照射します。その後、組織切片全体を溶解して qPCR や RNA-seq を行うと、その照射領域だけの発現情報を得ることができます。また photo-isolation chemistry の原理は ATAC-seq や Bisulfite-seq など他のオミクス技術にも転化できます。
従来技術・競合技術との比較
臓器や組織に対するオミクス解析を行うには、目的の細胞集団を高精度に単離する必要があります。そのためには、レーザーマイクロダイセクションによる切り出しや、FACS による細胞の分取などが主流です。しかしレーザーマイクロダイセクションでは 10 細胞以下の集団を切り出すのは難しく、また FACS では細胞懸濁が必要なため位置情報を記録できません。
新技術の特徴
・高感度:10 個程度の細胞集団でも遺伝子発現を検出できる
・高解像度:光照射領域はミクロンレベルまで絞り込める
・低コスト:本発明のオリゴ DNA があれば誰でも実験できる
想定される用途
・病理組織における病巣部特異的な遺伝子発現解析
・脳組織における領域特異的な遺伝子発現解析
・そのほか、微小な細胞集団の遺伝子発現解析やエピゲノミクス解析
- アグリ・バイオ
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 教授 神谷 典穂
新技術の概要
天然タンパク質のなかには脂質が付与されることで重要な生理機能を発現するものがあります。私たちはこの過程を試験管内で人工脂質と酵素を利用して進める方法を確立し、水溶性タンパク質を簡便に両親媒化する技術を確立しました。
従来技術・競合技術との比較
水に溶けない脂質を部位特異的にタンパク質に導入する技術はほんの数例しか報告されておらず、その効率は低いものでした。本技術では、分子設計された人工脂質化基質と架橋酵素を用いて、脂質化タンパク質を効率良く得ることに成功しました。
新技術の特徴
・水溶性タンパク質に、様々なタイプの脂質を簡便に導入できます。
・水溶性タンパク質に、脂質の性質に応じた両親媒性を付与できます。
・水溶性タンパク質を、膜タンパク質のように細胞表面上にアンカリングできます。
想定される用途
・水溶性タンパク質の膜タンパク質化
・薬理活性を有するタンパク質の高機能化
・水溶性生体由来分子の両親媒化
関連情報
・外国出願特許あり
- 医療・福祉
九州大学 大学院医学研究院 基礎医学部門 臨床神経生理学分野 学術研究員 山﨑 貴男
新技術の概要
心身への負担が少なくコストも安い、軽度認知障害(MCI)の理想的な早期診断バイオマーカーは存在しない。そのため、心身への負担がなく、安価、簡便かつ高精度の早期診断法の開発が必要である。そこで我々は「タッチパネル式タブレット端末」を用いたMCIの簡便かつ高精度な早期診断システムを開発した。
従来技術・競合技術との比較
タブレット端末を用いた認知機能検査は市販されているが、本装置のような視空間(オプティックフロー, OF)認知の側面から認知機能を調べる装置はこれまでにない画期的な装置である。既存の認知検査は疾患特異性に乏しいが、OF認知の障害はアルツハイマー病によるMCIで特異的に障害されやすいことも我々は報告している。
新技術の特徴
・心身への負担がない。
・操作が簡単である。
・場所を選ばず、どこででも施行できる。
想定される用途
・MCIの早期スクリーニング
・種々の認知症の鑑別
・運転能力判定
- 情報
九州大学 情報基盤研究開発センター 学術情報研究部門 教授 廣川 佐千男
新技術の概要
統計データは情報社会の基盤である。現在、データ全体の信憑性の評価をする方法は多数あるが、データ全体を構築する個々の値の怪しさは分からない。本研究では、10進数だけでなく複数の基数を考慮することで、各数値の怪しさを評価できることを示す。
従来技術・競合技術との比較
10進数で表示したときの最上位の数字の出現頻度はベンフォード分布になることが知られており、統計データの不自然さ評価に使われている。しかし、全体データの中で違和感がある箇所があった場合、具体的にどの値がその違和感部分に関係しているかを判別することは困難である。本技術は、個々の数値の不自然さを評価することができる。
新技術の特徴
・数値のリストであれば、個々の数値の正確性の評価ができる。
・高速な計算が可能なので、データ規模が大きくなっても、実時間でも、適用可能。
想定される用途
・統計データ検証(公的機関の集計データなど)
・会計情報の検証
・センサーデータの異常検出と要因抽出
- 計測
6)分子センシングの高速化へ向けたナノ材料表面修飾技術
発表資料九州大学 先導物質化学研究所 融合材料部門 ナノ融合材料分野 准教授 長島 一樹
新技術の概要
本発明では、生体ガスセンシングにおいて初期化性能劣化の支配要因となっていた分子の多量化反応・酸化反応等を抑制するナノ材料表面分子修飾技術を開発し、分子センシング初期化の高速化を可能とした。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では分子センシングの初期化制御は作動温度の上昇或いは貴金属の導入によって行われてきたが、本件発明では貴金属フリー・作動温度の上昇なしでのセンサ初期化が可能となった。
新技術の特徴
・揮発性有機化合物のセンシング
・連続した分子吸着サイトの抑制
・分子センシングの高速初期化
想定される用途
・健康モニタリング
・IoTデバイス
・触媒
- 通信
九州大学 大学院工学研究院 海洋システム工学部門 教授 木村 元
新技術の概要
不特定多数の無線LANのアクセスポイントが送信する電波の強度とその関連情報から無線LANの電波強度マップを生成し、その解析方法を工夫したことによって、ヒトやモノの位置の推定を容易に行える技術およびシステムである。
従来技術・競合技術との比較
従来は無線LANルータ設置場所の特定や特別な専用機器などの設備投資により、サービスの導入、維持管理が大掛かりなものとなっていたが、本技術ではアクセスポイントが送信する電波の強度を用いて位置推定できるため、既存の無線LANだけを利用して容易に建物内での位置の推定を行うことができる。
新技術の特徴
・既存の無線LAN設備だけを利用してモバイル受信機器の位置を推定する。
・無線LANの電波を観測し、その位置を地図画面上で入力して電波強度マップを作製。
・位置の推定結果はマップ上に可能性の高い領域の等高線として表示される。
想定される用途
・GPSを利用できない屋内でのヒトやモノの位置をリアルタイム把握
・GPSを利用できない屋内でのヒトやモノの移動の様子を可視化
- 計測
九州大学 大学院総合理工学研究院 エネルギー科学部門 電気理工学 助教 富田 健太郎
新技術の概要
多価電離プラズマは、軟X線及び極端紫外(EUV)波長域の魅力的な光源である。ところが、光源の特性(例えば出力波長や輝度)を決定づけるプラズマの密度や温度の計測・制御は簡単ではない。本技術では、プラズマに外部からレーザーを入射し、その散乱光の計測手法を工夫したことで、高精度のプラズマ分析が可能となった。
従来技術・競合技術との比較
プラズマ分析(計測)では、自発光を分光する発光分光計測が一般的である。これに対して外部からレーザー(プローブ)を入射し、プラズマから能動的に情報を得る手法は、計測の精度、信頼性、空間分解能で有利である。
新技術の特徴
・他の手法では計測不可能なプラズマの基本パラメータの取得。
・光(レーザー)を用いた非接触・高空間分解能計測。
・極端紫外(EUV)露光をはじめ、利用価値の高い軟X線・EUV領域のプラズマ光源分析に最適化したシステム。
想定される用途
・EUV露光光源用プラズマやEUV露光用マスク検査光源(actinic inspection)の開発。
・軟X線から可視光までの広範なプラズマ光源の分析。
・広く「プラズマ」が関与するシステムの制御・モニタリング。
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