信州大学 新技術説明会
日時:2019年08月06日(火) 10:00~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、信州大学
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- アグリ・バイオ
1)発酵食品の製造工程で活躍する新規乳酸菌
発表資料信州大学 農学部 農学生命科学科 准教授 河原 岳志
新技術の概要
信州味噌原料より分離された乳酸菌PP165株は、変敗の原因菌として知られるバチルスの生育を抑制する作用をもとに選抜された乳酸菌株である。これまで味噌だけでなく、伝統的な製法による食品製造現場での実証試験においてバチルス抑制実績があり、さらに風味改善効果を併せ持つことが明らかとなった。
従来技術・競合技術との比較
乳酸菌には抗菌作用があることが広く知られているが、風味に対する影響力が大きいため、現実には生菌添加による抗菌力と風味のバランス形成が難しい面がある。本乳酸菌は、実証試験において優れた抗菌性と風味形成能を併せ持つことが明らかとなった乳酸菌株であり、上記の課題を克服しうる可能性を秘めたシーズである。
新技術の特徴
・変敗の主要原因菌であるバチルスを強力に抑制する抗菌性乳酸菌である。
・製品中で乳酸だけでなく、コハク酸などのうま味成分を増加させる作用がある。
・コウジカビや酵母など有用な微生物の生育や作用に対して阻害効果を持たない。
想定される用途
・バチルスによる製品のロットアウトが問題となっている食品製造現場での添加。
・減塩製品の開発などで想定される微生物汚染や製品の風味低下に対する防止策としての添加。
・発酵作用が安定しない伝統的な発酵食品製造のサポート役としての添加。
- 創薬
信州大学 繊維学部 応用生物科学科 助教 根岸 淳
新技術の概要
組織再生材料に関する技術で、多孔質材料に固体を短時間で高効率に導入する手法。独自技術を用いて、細胞などの固体を含有した多孔質材料を作製し、生体外や生体内での組織再生を実現する。
従来技術・競合技術との比較
これまでは、多孔質材料へ細胞を播種し、数日間培養することで細胞含有多孔質材料を調整していた。しかし、細胞が材料内部に遊走しないなどの問題が多かった。
新技術の特徴
・細胞生存に影響を与えない技術
・既存手法よりも大幅な時間短縮
・比較的小さな孔径の材料にも封入可能
想定される用途
・複合化生体材料
・3次元組織の再生用材料
・細胞機能の解析手法
- 電子
信州大学 工学部 電子情報システム工学科 教授 劉 小晰
新技術の概要
強磁性材料の逆磁歪効果を利用し、微弱な振動や応力を高感度に検出しエネルギーハーベストが可能な自己発電式の発電素子。その技術を応用した振動、応力、歪を検出するセンサ。磁壁または磁気スキルミオンの状態に対応してデータを記憶する磁気メモリ。
従来技術・競合技術との比較
従来の振動発電素子は、厚い磁歪薄帯を複数枚使用しており、その剛性から微弱な振動や応力に対し感度が低い。また、磁気抵抗効果を利用する方法は、抵抗変化を電圧に変換する電流源が必要となる。従来の磁気メモリは、スピントランスファー効果を利用した電流駆動であり低消費電力化できない。
新技術の特徴
・微弱な振動や力に対しても、高感度に磁化の変化を生じさせ誘導起電力を得る発電素子
・自己発電機能を持つ無電源センサ
・低消費電力・長時間の安定動作可能な、高速スピントランジスタ、高速磁気メモリ素子
想定される用途
・音などの微弱振動から発電できる発電素子
・微弱振動を高感度に検出するセンサー
・不揮発メモリ
関連情報
・サンプルあり
- 機械
4)任意形状の曲面をロボットで表現するために
発表資料信州大学 繊維学部 機械・ロボット学科 バイオエンジニアリングコース 助教 岩本 憲泰
新技術の概要
数学におけるCircle Packing Mesh理論と細胞の力学に関する知見を取り入れた、曲面を表現可能なロボットを提案する。本ロボットは、表面と裏面で独立に半径可変な円錐台型のアクチュエータを多数連結することで構成され、本アクチュエータの表面と裏面の半径差により本ロボットの形状を制御する。
従来技術・競合技術との比較
従来の曲面を表現するロボットでは無変形時に境界の角を有していると、変形しても角を消すことができなかった。本技術では小型のロボットを連結することで従来よりも広い範囲の曲面の表現を可能とする。さらに小型ロボットの形状として円錐台を採用することで、機構と制御の観点のそれぞれで利点を有する。
新技術の特徴
・表面と裏面で独立に半径を可変とする円錐台型アクチュエータ
・円錐台型アクチュエータを連結することで安定した曲面を表現可能なロボットを構成
・構造が簡易で制御するアクチュエータ数が少ない
想定される用途
・把持対象物を内包して持ち上げるロボットハンド
・表面形状が変形するVirtual Reality向けデバイス
・腹腔鏡手術における術野空間確保機構
関連情報
・サンプルあり
- 材料
5)高効率なストロンチウムイオン吸着剤
発表資料信州大学 繊維学部 化学・材料学科 応用分子化学コース 教授 浅尾 直樹
新技術の概要
チタンと両性金属から成る合金をアルカリに浸漬すると、ストロンチウムイオンの吸着が可能なチタン酸ナトリウムナノワイヤーが作製できる。両性金属として亜鉛を用いると耐熱性が向上し造粒化が可能になる。またナトリウムイオンをバリウムイオンに交換すると、海水条件におけるストロンチウムイオンの吸着性能が向上した。
従来技術・競合技術との比較
両性金属としてアルミニウムを用いて作製した材料は耐熱性が低く、造粒化に必要な焼成により吸着性能の低下が見られた。またナトリウムイオンをイオン交換に用いると、海水条件下ではストロンチウムイオンに対する選択性の低下が見られた。本技術はこれら二点の弱点を克服するものである。
新技術の特徴
・チタン-亜鉛合金のアルカリ処理による簡便なナノ材料作製
・造粒化過程における炭酸水素ナトリウム添加による吸着性能の向上
・バリウムイオンを利用した海水条件下におけるストロンチウムイオンに対する高い吸着選択性
想定される用途
・福島原発で発生した汚染水の除染剤
・水道水の水質浄化
関連情報
・サンプルあり
- 材料
6)信大クリスタル発進! モノづくり日本の再起を支える先鋭材料
発表資料信州大学 先鋭領域融合研究群 先鋭材料研究所 所長 手嶋 勝弥
新技術の概要
当研究室では周期表の端から端までをキーワードとし、多岐に渡る単結晶材料をフラックス法で創製してきた。フラックス結晶研究では世界No.1の研究拠点であり、新規の環境・エネルギーデバイスを実現している。フラックス法の特長を活かし、粒子から薄膜・複合体まで、超空間&表面制御を基軸に次代を担う先鋭材料を提案する。
従来技術・競合技術との比較
我々のフラックス法では、通常のセラミックス作製プロセスよりもはるかに低温・環境調和プロセスで高品質な結晶材料を育成できる。また、既存設備の転用も可能であり、量産化や低コストも実現できる。さらに、従来技術では作製できない結晶組成・超空間構造・形状デザイン・複合化した結晶材料を創製できることも魅力である。
新技術の特徴
・高機能・新機能:単結晶系材料あり、複合化などが容易なため、物質自体の性能を最大限に引き出せる
・長寿命・高耐久性・高リサイクル性:欠陥などが少なく、高品質なため、耐久性やリサイクル性に優れる
・低コスト・低環境負荷:比較的低温・常圧のシンプルな結晶育成技術であり、既存プロセスを活用できる
想定される用途
・水浄化・環境浄化・植物工場
・蓄電池・燃料電池・太陽電池、光触媒、光電極
・フィラー、バイオマテリアル、複合材料
関連情報
・サンプルあり
- 材料
7)電池材料革新:表面加工による相界面の能動的制御
発表資料信州大学 工学部 物質化学科 教授 是津 信行
新技術の概要
電極活物質表面に形成した原子・分子レベルの情報を化学増幅し、異相界面や電解液(質)に伝達することで、イオンや電子をより安全かつ高効率に輸送を能動的に制御する、表面加工技術についての取組内容について紹介する。
従来技術・競合技術との比較
革新的電池の開発においては、その活発な新活物質探索研究に比べ、電極/電解液(質)界面(相界面)で起こる主・副反応の能動的制御を主眼とする活物質材料開発はほとんど未着手である。活物質表面の材料設計の観点からの相界面制御により、電解液と添加剤を中心とした現状相界面技術の限界性能を突破する。
新技術の特徴
・既存材料表面の加工により、出力特性とサイクル特性の向上をもたらす
・既存量産プロセスとの親和性が高い
・物質の制限をほとんど受けない
想定される用途
・蓄電池(リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池など)
・キャパシタ(EDLC,LICなど)
・全固体電池
関連情報
・外国出願特許あり
- 材料
8)低白金・非白金触媒を用いた燃料電池の電極
発表資料信州大学 繊維学部 化学・材料学科 ファイバー材料工学コース 准教授 福長 博
新技術の概要
固体高分子形燃料電池において、白金を代替する触媒が求められており、そのために電極触媒層の作製方法も従来と変える必要がある。本発表では、安価だが活性の低い非白金触媒を用いた場合に反応場を増やす方法と、高活性だが大量生産に向かない低白金コアシェル触媒を触媒層中で合成する方法について報告する。
従来技術・競合技術との比較
安価だが活性の低い非白金触媒では、従来よりも膜厚が厚いため、触媒インクの有機溶媒によるアイオノマーの形態制御による反応場の増加が重要となる。また、低白金コアシェル触媒は、従来の方法では大量生産に向かなかったが触媒層中で合成することで連続生産が可能となる。
新技術の特徴
・触媒インクのアイオノマー構造の制御
・Cu-UPDを用いたコアシェル触媒の触媒層中での合成
想定される用途
・固体高分子形燃料電池
・コアシェル触媒の合成
お問い合わせ
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