東京理科大学 新技術説明会
日時:2019年10月31日(木) 10:00~15:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、東京理科大学
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
- 各ピクセルの吸収スペクトルを取得する超解像顕微鏡を可能にする検出法 発表資料
- ポッケルス効果を用いた新たな光変調法と界面物性探索法 発表資料
- 水素社会に向けた新規貴ガス水素化物の創成 発表資料
- 光によるCO₂回収・貯蔵・供給技術 発表資料
- 植物の耐病虫性向上、成長促進させる新規なジャスモン酸内生促進剤 発表資料
- 遺伝子改変や物質添加なく、細胞塊から植物クローンがどんどんできる 発表資料
- ミントおよびメントール誘導体の植物とヒトの免疫活性化機能 発表資料
- 光の力でリサイクルしてキラルなスルホキシドをつくる! 発表資料
- 柔軟なポリマー基材に積層した二酸化チタン光触媒材料 発表資料
- 導電性ナノダイヤモンド作製と高性能水系EDLCへの応用 発表資料
発表内容詳細
- 計測
1)各ピクセルの吸収スペクトルを取得する超解像顕微鏡を可能にする検出法
発表資料東京理科大学 理学部第一部 物理学科 助教 瀬戸 啓介
新技術の概要
光(ポンプ光)を試料に吸収させて、その時の温度上昇をもう一つのプローブ光で検出する顕微鏡を光熱顕微鏡という。光熱顕微鏡ではポンプ光の波長を掃引すると吸収スペクトルが得られ、物質の種類を特定した像を超解像で得られる。本技術は、ポンプ光に白色光を用いて、波長掃引することなく高速・低歪で吸収スペクトルを得るものである。
従来技術・競合技術との比較
従来法は、ポンプ光の波長を掃引する方法、白色ポンプ光を波長毎に異なる周波数で変調して検出後に復調する方法である。前者は掃引に時間が掛かる問題、後者は得られるスペクトルが歪む問題がある。本技術は白色ポンプ光を波長毎に異なる雑音で変調し、検出後に同じ雑音で復調することで、スペクトルの歪みを除去できる。ひいては、定性性・定量性の両方が改善できる。
新技術の特徴
・得られるスペクトルに歪を生じないので定性性・定量性が高い
・同時多波長検出が可能で、高速にスペクトルを取得できる
・超解像が実現できるポンプ・プローブ顕微鏡に応用できる
想定される用途
・色素で染色した生体試料の光熱超解像顕微鏡
・物質の種類の分析に適用可能な、分子振動を無標識で調べる赤外吸収超解像顕微鏡
関連情報
・サンプルあり
- 計測
2)ポッケルス効果を用いた新たな光変調法と界面物性探索法
発表資料東京理科大学 理学部第一部 物理学科 教授 徳永 英司
新技術の概要
固体と水の界面のポッケルス効果を利用した初めての光変調素子。振動分光法、X線回折、原子間力顕微鏡、数値計算に続く第5の界面物性探索手段にもなる。ポッケルス効果とは、印加電場に比例する屈折率変化のことで、電場の向きが反転すると屈折率変化の符号も反転するのが特徴で、巨視的反転対称性が破れていることが発生の必要条件。
従来技術・競合技術との比較
光通信で実用化されている固体ポッケルス結晶LiNbO3は、10GHzの高速応答性を持つが、数Vの電圧で深い光強度変調を起こすには数μmの断面と数cmの長さの単結晶が必要であり、高価(数十万円)であるのに対し、本変調素子は界面効果を用いていてナノスケールで動作し、波長選択性があり、1cm角で30円程度と極めて安価である。
新技術の特徴
・水(あるいはアルコール)とガラス基板上の酸化物透明電極薄膜だけで光変調器が構成できる。
・変調される波長は酸化物透明電極の膜厚で制御でき、変調方向選択性がある。
・水が透明な150nmの深紫外光まで変調でき、きわめて安価。
想定される用途
・マイクロ流路上のミクロ光変調器
・水と透明電極による指向性ディスプレイ
・液中の固液界面の屈折率、電場、電解質濃度の高感度センサー
関連情報
・サンプルあり
- エネルギー
3)水素社会に向けた新規貴ガス水素化物の創成
発表資料東京理科大学 理学部第一部 化学科 准教授 渡辺 量朗
新技術の概要
化学的に不活性な貴ガス原子が水素原子と結合した貴ガス水素化物を合成しました。金属表面に貴ガスのイオンビームを照射したのち水素ガスを接触させ表面を昇温すると、貴ガス水素化物が生成します。これまでに確認した貴ガス水素化物は、HeHx、NeHx、ArHx、KrHx (x=2,4,5,18等)です。
従来技術・競合技術との比較
・水素ガスよりも高温で液化できるため、貯蔵・運搬が容易かつ低コストになる。
・水素と貴ガスのみからなるクリーンでCO₂フリーな燃料である。
・水素ガスより高いエネルギー密度をもつ(例: ArH₁₈はH₂の9倍のH原子を含む)。
新技術の特徴
・水素ガスに比べて貯蔵・運搬が容易な物質である。
・水素ガスに比べてエネルギー密度が高い燃料である。
・アルゴン水素化物は、安価で無害な気体であるアルゴンを用いた水素エネルギー媒体である。
想定される用途
・燃料 (例: 自動車用水素内燃機関、ロケットエンジン)
・水素キャリア (例: 燃料電池)
・合成試薬 (例: 水素添加反応)
- 環境
4)光によるCO₂回収・貯蔵・供給技術
発表資料東京理科大学 工学部 工業化学科 准教授 今堀 龍志
新技術の概要
光によって構造を変化させ、CO₂吸収能が優れた状態と劣る状態を可逆的に切り替える分子を開発した。その特性を活かし、CO₂の吸収・貯蔵・放出を任意に且つ繰り返し光で制御して効率的に行うことに成功した。
従来技術・競合技術との比較
従来のCO₂化学吸収法は、CO₂放出に加熱・減圧条件が必要であり、多量のエネルギーを消費するが、本技術は無尽蔵に利用可能な光を用いる。枯渇性エネルギーを使用せず、持続的なCO₂削減・循環を実現する。
新技術の特徴
・加熱・減圧条件を必要としないCO₂放出(常温・常圧下でのCO₂放出)を実現 → CO₂循環の低コスト化、CO₂回収・利用技術の適用拡大
・枯渇性エネルギーを使用しないCO₂循環技術 → 直接的間接的にCO₂を増やさないCO₂循環技術(carbon negativeを実現)
・総合的に大気中CO₂を削減し得る → 気候変動の改善
想定される用途
・火力発電所等の排煙および大気からのCO₂の回収・貯蔵
・捕集CO₂による植物栽培促進(植物工場・ビニールハウス・植物培養)
・居住空間のCO₂捕集(閉鎖環境・地下・潜水中・宇宙基地)
関連情報
・展示品あり
- アグリ・バイオ
5)植物の耐病虫性向上、成長促進させる新規なジャスモン酸内生促進剤
発表資料東京理科大学 理工学部 応用生物科学科 教授 朽津 和幸
新技術の概要
植物の成長や防御免疫応答等の役割を担う植物ホルモンとして知られるジャスモン酸の内生を促進する新規なジャスモン酸内生促進剤及びジャスモン酸内生促進方法を提供する。本ジャスモン酸内生促進剤は、植物ホルモンジャスモン酸の生合成を誘導し、ジャスモン酸経路活性化の指標物質の発現量が増加することを確認した。
従来技術・競合技術との比較
ジャスモン酸アナログは、過剰応答により植物の生長に悪影響を与えることがある。これに対し、本発明のジャスモン酸内生促進剤は、それ自体は病原菌抵抗性等をもたず、植物の内部に作用して植物自身のジャスモン酸生量力を誘引するため、ジャスモン酸アナログを与えた場合に懸念される環境負荷や過剰応答のリスクを低減する。
新技術の特徴
・簡単構造の化合物
・モデル植物に本化合物で処理すると24時間後に内生ジャスモン酸量が数百倍に増加する。
想定される用途
・果実の着色促進剤
・植物病原菌の防除剤
・昆虫の食害防除剤
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
6)遺伝子改変や物質添加なく、細胞塊から植物クローンがどんどんできる
発表資料東京理科大学 理工学部 応用生物科学科 教授 松永 幸大
新技術の概要
ジャガイモの芽を出させないために放射線を照射するように、一般的に負のイメージがある放射線照射を、ある一定の条件で植物の細胞塊に対し行うと、逆に出芽が促進されることがわかった。放射線を照射するだけで、植物クローン生産を促進できる。
従来技術・競合技術との比較
植物の組織である根、茎、葉、花の一部を組織培養することで、細胞塊(カルス)を作り、そこから芽を出させクローン植物を作成できる。しかし、芽を出す頻度は植物種で異なることから、植物ホルモンを加えたり、遺伝子組換えをして芽を出す頻度を増やさざるを得なかった。
新技術の特徴
・ある条件で植物の細胞塊に放射線照射すると、芽がどんどん出てくるので、クローン植物を量産できる。
・物質を添加したり、遺伝子改変が不要であるため、コストも労力もかからない。
・植物種によって条件が異なるので、企業の独自技術として確立しやすい。
想定される用途
・作物や園芸品種のクローン化作成の促進
・再生しにくかった植物を再生させやすくする方法の確立
・切り花の生育維持や生鮮食料品の品質保持への活用
関連情報
・展示品あり
- アグリ・バイオ
7)ミントおよびメントール誘導体の植物とヒトの免疫活性化機能
発表資料東京理科大学 基礎工学部 生物工学科 教授 有村 源一郎
新技術の概要
ミント香気やその主要成分であるメントールを受容した植物は、病害虫に対する免疫能力が飛躍的に向上する。さらに我々は、メントールをベースとして、メントールよりも優れた免疫促進能をもつ新規化合物を開発した。これらの化合物(メントール誘導体)は、ヒト抗炎症機能を活性化させる生理機能も持ち合わせている。
従来技術・競合技術との比較
遺伝子組換え技術やゲノム編集等を用いれば、防除の手間のない無農薬栽培は可能であるが、特に国内では実用化の目処はない。一方、本技術は、少ない環境負荷で簡易に実用化できる優位性をもつ。
また、メントール誘導体のような植物の免疫活性化剤とヒトの健康機能を高めるマルチ機能を持ち合わせた化合物は類がなく、極めて新規性が高い。
新技術の特徴
・植物生産の無農薬・減農薬化に貢献できる実用性。
・栽培者の意図や趣向に合わせ、ミントの植栽もしくはメントール誘導体の散布を利用するかの選択が可能。
・病害虫に対する毒性のある薬剤の投与ではないため、安全性が高い。
想定される用途
・無農薬・減農薬栽培への適用
・環境負荷が小さく耐性菌・害虫を発生させづらい新規農薬
・特定保健用食品、機能性食品への応用
- 創薬
8)光の力でリサイクルしてキラルなスルホキシドをつくる!
発表資料東京理科大学 薬学部 薬学科 教授 高橋 秀依
新技術の概要
スルホキシド(イオウを酸化したもの)には二つのかたち(A:元のかたちとB:鏡に映したかたち)があり、それらが1対1で存在する。このうち、一方(例えばA)を分け取り、もう一方(B)に光を照射することで短時間で元の二つのかたち(A:B=1:1)にできる。さらにAを分け取り、Bに光を照射する、この工程を繰り返すことでほぼ100%のAを得る。
従来技術・競合技術との比較
従来は、片方のかたちのものをできる限り多く化学合成する方法が行われていたが、ほぼ完全に片方のかたちだけを得ることは困難であった。本法は、2つの工程(?@光を当てる?A片方のかたちを分け取る)を繰り返すだけで、化学合成することなく、片方のかたちのものだけを得ることができる。
新技術の特徴
・化学合成を必要としない。
・ほぼ100%の収率で所望する片方のかたちのスルホキシドを得られる。
・光を当てるだけなので、低コストである。
想定される用途
・スルホキシドを有する医薬品の合成
・HPLCによるリサイクルシステムの利用法の拡大
・光反応装置の利用法の拡大
関連情報
・サンプルあり
- 材料
9)柔軟なポリマー基材に積層した二酸化チタン光触媒材料
発表資料東京理科大学 理工学部 先端化学科 教授 郡司 天博
新技術の概要
ポリマー基材に光触媒を担持させた光触媒材料において、ポリマー基材と光触媒層との間にホスホン酸を持つ中間層を設けることで、光触媒の強力な酸化分解力によるポリマー基材の劣化を抑制するため、高耐久性を得ることができた。さらに、中間層は柔軟性を損なわないため、本光触媒材料は様々な物への適用を可能にする。
従来技術・競合技術との比較
ポリマー基材と光触媒層との間にホスホン酸を持つ中間層を介在させることで、ポリマー基材の劣化を抑えるのみならず、層間の密着性を高め、光触媒表面をもつポリマーシート等の製品寿命を長くすることができる。さらにこの中間層を設けることで従来法より低温、かつカップリング材の使用量が低減され製造コストを削減する。
新技術の特徴
・高耐久性の光触媒担持ポリマーの作成が可能
・低温で光触媒を担持できる
・柔軟性に優れ曲面に貼っても使用できる
想定される用途
・屋根材、雨戸、外壁材などの建築資材
・キッチン、厨房、浴室等に使用される内装壁材
・農業用資材等
関連情報
・サンプルあり
- 材料
10)導電性ナノダイヤモンド作製と高性能水系EDLCへの応用
発表資料東京理科大学 理工学部 先端化学科 准教授 近藤 剛史
新技術の概要
高比表面積かつ導電性を有するダイヤモンド材料として、ボロンドープナノダイヤモンド(BDND)を開発した。BDNDは電極材料として利用でき、水系電解液中で3V程度の広い電位窓を示した。BDNDを電極材料とする水系電気二重層キャパシタ(EDLC)は、1.8 Vのセル電圧を印加可能で、高エネルギー密度(10 Wh/kg)かつ高出力密度(10⁴ W/kg)を示した。
従来技術・競合技術との比較
従来材料である活性炭電極を用いたデバイスでは、水系電解液を用いた場合、0.8 Vのセル電圧しか印加できないのに対し、BDNDは1.8 Vと大きく向上した。その結果、BDNDの方がエネルギー密度は大きくなった。また、BDNDでは高速充放電における容量の低下が抑制され、出力密度にも優れることがわかった。
新技術の特徴
・BDNDは高比表面積かつ導電性を有するダイヤモンド材料。
・BDNDは、水系電解液中で広い電位窓を示す。
・BDNDを用いた水系EDLCは、高エネルギー密度かつ高出力密度を示す。
想定される用途
・高速充放電が可能なIoT用デバイス
・ウェアラブルエレクトロニクスデバイス
・エネルギーハーベスティングデバイス
関連情報
・サンプルあり
・外国出願特許あり
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