物質・材料研究機構 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2021年06月15日(火) 13:30~15:55
会場:オンライン開催
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、物質・材料研究機構
発表内容一覧
発表内容詳細
- デバイス・装置
物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 電気・電子機能分野 超高圧グループ 主幹研究員 川村 史朗
新技術の概要
従来、高品質窒化ガリウムのバルク結晶成長法として開発されてきた「Naフラックス法」の欠点であるインクルージョン(包有物)の問題を解決した。今回開発した結晶成長法では、Ga-Na融液膜を基板上にコーティングしながら窒素を溶解させることで高品質GaN膜を成長させる。成長したGaN膜は薄膜合成法、バルク結晶合成法どちらにも適用できる。転位密度はパワーデバイス応用可能なレベルである。
従来技術・競合技術との比較
これまで窒化ガリウムの合成法としては気相成長法が主流であったが、結晶欠陥の一種である転位密度が高いというデメリットがあった。液相成長法としてNaフラックス法が精力的に研究されたことで、転位密度は大幅に減少したが、Naフラックス法では結晶内部にインクルージョンが取り込まれてしまう。我々の手法では、Naフラックス法をベースとしながらインクルージョンフリーの結晶合成が可能である。
新技術の特徴
・窒化物結晶成長
・高品質結晶合成
・フラックス成長法
想定される用途
・パワーデバイス
・レーザーダイオード
・高周波デバイス
- 材料
物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 ポリマー・バイオ分野 電子機能高分子グループ 主任研究員 池田 太一
http://www.nims.go.jp/research/group/functional-macromolecule/
新技術の概要
自由に側鎖をデザインできる機能性ポリマーを使って分岐側鎖を有する高分子電解質を作成し、世界最高レベルのイオン伝導度を達成した。低粘度で高いイオン伝導度を示す分岐構造を有する多荷イオン液体を開発した。
従来技術・競合技術との比較
高分子量(100万以上)高分子電解質の無加湿条件での室温イオン伝導度は30 μS/cmが限界だと考えられていた。多荷イオン液体はキャパシタの静電容量を高めるなどの特徴があるが、通常のイオン液体よりも高粘性で、低イオン伝導度という問題を抱えている。
新技術の特徴
・低粘度(1.6 Pa s)で高イオン伝導度(350 μS/cm)の4荷イオン液体
・高イオン伝導度(無加湿、30℃で60 μS/cm)を示す高分子電解質
・機能性ポリマーや複数のアンモニウムカチオンを有する分子の簡便な合成法
想定される用途
・キャパシター電解質
・エレクトロクロミック材料用電解質
・抗菌材
関連情報
・サンプルあり
- 材料
3)実材料解析に向けた大規模電子状態計算プログラム
発表資料物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノセオリー分野 量子物性シミュレーショングループ 主任研究員 中田 彩子
新技術の概要
物質の構造や電子状態を実験結果無しでも計算できる第一原理計算を数万原子超モデルに適用することが可能な大規模第一原理計算プログラムCONQUESTの開発、公開を行った。精度を落とすことなく計算コストを削減できる独自の計算手法や高並列化効率の実現により、複雑な構造を持つ材料をナノスケールで解析できる。
従来技術・競合技術との比較
従来の第一原理計算手法は計算量が膨大なため、計算できる系のサイズに限界がある(通常千原子程度)。本技術では、オーダーN法やマルチサイト法などの独自計算手法により、数万原子を含む第一原理計算が可能となっている。並列化効率も非常に高く、スパコンを用いた100万原子系の第一原理計算の実績もある。
新技術の特徴
・従来の計算技術では扱えなかった大規模系の解析が可能
・大規模計算モデルによる非周期、不規則構造の取り扱いが可能
・並列化効率が高く、中規模クラスターからスパコンまで高効率計算が可能
想定される用途
・半導体中の複合欠陥、ドーパントの解析
・材料の複雑表面、界面のナノスケール構造の解析
・アモルファスや生体材料など非周期材料の解析
- 材料
物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 設計・創造分野 振動制御材料グループ グループリーダー 澤口 孝宏
新技術の概要
地震から建物を守る制振ダンパー用に開発された、従来比10倍の疲労耐久性を示すFMS合金について、疲労耐久性はそのままに、FMS合金同士を溶接しても割れが発生しない新成分の合金を開発した。合金を十字やH字に接合できるようになることで、より高い荷重に耐えられるなど制振ダンパーの高性能化が期待される。
従来技術・競合技術との比較
FMS合金は従来の鋼材に比べて約10倍の疲労寿命を示す。FMS合金製制振ダンパーは長周期地震動や大地震後の大規模余震などに対しても交換することなく繰り返し使用できる高い耐久性を示す。しかし、第一世代FMS合金は溶接すると高温割れが発生しやすい課題があった。新開発した第二世代FMS合金は高温割れが発生しにくい特徴を有する。
新技術の特徴
・塑性変形の繰り返しに強く振幅1%の繰り返し変形に対し1万サイクル以上の疲労寿命を示す。
・強度670MPa、伸び70%の優れた強度延性バランスを示す。
・FAモードで凝固するため凝固偏析や高温割れが発生しにくい。
想定される用途
・制振ダンパー
・液体水素容器
関連情報
・サンプルあり
・展示品あり
- 計測
5)材料内部の「リアルタイム・無線・非破壊」微小欠陥検出
発表資料物質・材料研究機構 統合型材料開発・情報基盤部門 データ駆動構造材料グループ 主任研究員 伊藤 海太
新技術の概要
材料内部の微小欠陥をリアルタイムに検出するアコースティック・エミッション(AE)計測を、独自開発のIoT装置で「無線化と生波形の全録を両立」させたことで、設置と運用の難しさを解消した。様々な研究用・製造用装置に対して、プロセスモニタリング機能を後付けで簡単に提供できる。
従来技術・競合技術との比較
従来、高い処理能力が必要なAE波形の全録は大型の有線計測機に限られ、無線(バッテリ駆動)の計測機では簡易計測しか行えなかった。これに対し、本システムはバッテリ駆動のセンサノードでの波形全録と送信を可能にし、解析は送信先で行えるため、現場で使いやすい装置となっている。
新技術の特徴
・AE波形を全録するため、周波数特性を確認しながらノイズ処理や検出感度の設定が可能
・無線・バッテリ駆動で配線がほとんど不要のため、密閉系・回転系・狭小などの「現場でも使いやすい」
・数値計算や理論予測に対して、AE法による実験的裏付けと異常検出の情報を提供
想定される用途
・製造加工プロセスの研究開発の促進(施工条件の最適化の加速, 異常検出)
・製造加工プロセスの制御(欠陥の発生時刻と位置の通報を元に、自動的に修正工程を挿入できる)
・社会インフラの健全性モニタリング
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
物質・材料研究機構 外部連携部門 企業連携室
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