岡山大学 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2022年09月29日(木) 09:55~15:25
会場:オンライン開催
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、岡山大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- 09:55~10:00
開会挨拶
岡山大学 理事(研究担当)・副学長 那須 保友
- 10:00~10:25
- 創薬
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 大学院医歯薬学総合研究科 教授 須藤 雄気
新技術の概要
ヒトの体内では、常に沢山の細胞が作られ・壊されており、これにより恒常性が維持されている。この恒常性が破綻し、細胞死がおこらなくなると、がんや免疫不全、神経変性など様々な病気につながる。本技術では、光とロドプシンと呼ばれるタンパク質を用いて、任意の時間・場所で細胞死の一種である「アポトーシス」を誘導するものである。
従来技術・競合技術との比較
従来の細胞死誘導技術として、放射線や活性酸素を利用するものがあるが、これらは細胞の壊死である「ネクローシス」を誘導するため副作用が極めて強い。また、「アポトーシス」誘導型の薬剤があるが、拡散のため空間制御が難しく、そのため副作用が強い。本技術はこれらの2つの課題を解決するものである。
新技術の特徴
・光で細胞死を誘導できるため、時空間分解能が高い
・細胞死のうち、「アポトーシス」を誘導するため副作用が少ない(あるいは無い)
・遺伝子コード型のロドプシンを用いるため、遺伝子治療へ適用できる
想定される用途
・細胞死が関わる疾患(がん、白血病、神経疾患、自己免疫疾患、虚血疾患、肝炎など)の治療
- 10:30~10:55
- アグリ・バイオ
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 細胞生物学分野 講師 村田 等
新技術の概要
脳の健康を保つ重要な物質の1つに補酵素NAD+がある。NAD+は長寿遺伝子の活性化やミトコンドリア機能に不可欠な物質で、加齢とともに減少してしまう。これにはNAD+を分解し、ミトコンドリア機能を低下させるSARM1の活性化が関与している。我々は活性化SARM1の機能を阻害する物質あるいは素材の探索方法を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来技術としてはサプリメントとしてNAD+やNAD+の前駆体であるNMNを摂取する方法がある。しかしNAD+やNMNは細胞への取り込み能が低いため、ほとんど細胞内に届かない。また一部が取り込まれてもSARM1が活性化しているとNAD+は分解されてしまうので、SARM1の活性化を抑える物質あるいは素材が必要である。
新技術の特徴
・活性化SARM1の機能を抑制し、細胞内のNAD+量を増やす物質あるいは素材の探索を行うことができる
・細胞内のSARM1活性化状態をモニターし、脳の健康状態をモニターすることができる
・神経障害が原因で生じる体の痛みを抑える物質あるいは素材の探索が可能である
想定される用途
・機能性表示食品
・サプリメント
・医薬品
関連情報
・サンプルあり
- 11:00~11:25
- アグリ・バイオ
岡山大学 資源植物科学研究所 植物環境微生物グループ 准教授 谷 明生
新技術の概要
ビールや飼料として栽培されるオオムギの根圏微生物を非培養的に解析し、新しくRugamonas属細菌の優占化を発見した。分離した本属細菌は新種であり、ビオラセイン生産性でありオオムギの根の伸張を促進した。
従来技術・競合技術との比較
オオムギの根におそらく内生し優占化し、その根の伸張を促進することから冬作の麦類の生育促進剤として用いることが可能と考えられる。圃場試験は継続中である。
新技術の特徴
・低温で生育可能な新種細菌である
・オオムギ根の内生菌であり生育促進作用がある
・ビオラセイン生産性である
想定される用途
・麦類の微生物生育促進剤
・ビオラセイン生産
- 11:30~11:55
- アグリ・バイオ
4)栄養代謝物に基づくプリン作動性化学伝達の遮断による健康食品の開発
発表資料岡山大学 自然生命科学研究支援センター ゲノム・プロテオーム解析部門 研究教授 宮地 孝明
新技術の概要
小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT: vesicular nucleotide transporter)は、分泌小胞へのATP輸送を司っており、プリン作動性化学伝達の必須因子の一つである。VNUTを阻害するEPAやその代謝物、その薬学的に許容される塩、そのプロドラッグ又はその代謝物は、生活習慣病の予防・改善効果があり、健康食品として期待できる。
従来技術・競合技術との比較
多くの疾患の深刻な主症状の一つである慢性痛の発症メカニズムは不明な点が多く、疼痛治療薬は副作用が数多く報告されている。これまでにEPAは鎮痛効果をはじめ、生活習慣病の改善効果があることが報告されているが、プリン作動性化学伝達の遮断により、神経障害性や炎症性疼痛、インスリン抵抗性の改善効果があることを明らかにした。
新技術の特徴
・栄養代謝物の中から、VNUTをnMレベルで阻害する化合物群を同定した
・VNUTの阻害はプリン作動性化学伝達の異常による疾患を予防できる(健康食品成分のスクリーニング可能)
・同定した栄養代謝物やその誘導体はすでにヒトに対する安全性が実証されている
想定される用途
・機能性表示食品
・サプリメント
・医薬品
関連情報
・サンプルあり
- 13:00~13:25
- 材料
5)接着剤や固定部材を用いないポリイミドフィルム積層体
発表資料岡山大学 学術研究院自然科学学域 産業創成工学専攻 助教 山口 大介
新技術の概要
複雑な前処理や接着剤、ネジ・リベット等の固定用金属部材等を用いることなく、任意形状で製作可能なポリイミドフィルム積層体について発表します。本積層体は、接合部においても高い強度を有しており、ポリイミドの高い機械的強度、耐熱性、耐化学薬品性などと合わせて、様々な環境・装置へ適用できます。
従来技術・競合技術との比較
ポリイミドのバルク材は国内製造が限られ、また材料が高価であることから削り出し等による部品の製造では高コストであり、ポリイミドの機械部品への利用は限定的でした。本技術では、フィルムの貼り合わせによる積層体の製作を目指しており、生産性やコストの面で従来技術と比較して優れます。
新技術の特徴
・簡易な装置構成で溶着困難であったポリイミドフィルムを接着剤・添加剤・前処理フリーで積層
・軽く,強く,腐食せず,高い耐熱性と耐薬品性を持つ部品の実現
・ポリイミド製部品の小ロットかつ安価な製造が可能
想定される用途
・金属部品の高強度樹脂による代替や,接着の多用による軽量化
・液化水素用断熱材や,液晶・有機ELディスプレイ,半導体製造装置
・人工衛星,惑星探査機などの極限環境用デバイスの製造
関連情報
・サンプルあり
・展示品あり
- 13:30~13:55
- 計測
6)ODMR(光検出磁気共鳴)温度測定方法
発表資料岡山大学 学術研究院自然科学学域 大学院自然科学研究科 地球生命物質科学専攻 研究教授 藤原 正澄
新技術の概要
蛍光ナノダイヤモンド粒子をナノサイズの温度センサとして利用し、顕微鏡などのイメージング下で温度を測定する技術です。この技術の優れた点は、-100~700℃という広い温度範囲において精度0.1℃のナノスケール温度計測が可能な技術です。
従来技術・競合技術との比較
本技術の大きな特徴は、広い使用温度範囲・高耐久性・精密温度計測という3点です。従来の電子温度計は最小0.3 mm程度です。また、サーモグラフィーは波長の理論回折限界から10マイクロメートル程度です(また、水の吸収による影響で表面温度しか測定できません)。蛍光色素温度プローブなどもありますが、耐久性の面で課題があります。
新技術の特徴
・広い使用温度範囲(-100~700℃)
・高耐久性(ダイヤモンドは化学的に極めて不活性)
・精密温度計測(精度0.2度)
想定される用途
・ナノ薄膜などの温度計測
・ナノスケールの熱分析技術
・細胞内温度計測
- 14:00~14:25
- 機械
岡山大学 学術研究院自然科学学域 産業創成工学専攻 助教 下岡 綜
新技術の概要
ゴムや樹脂などの柔軟素材を用いて回転機構有するソフトアクチュエータを開発した。人間親和性が高く、福祉などの応用も期待できると考える。
従来技術・競合技術との比較
従来の空気圧式ロータリアクチュエータの回転軸は金属素材のため、軸に負荷がかかると折れてしまう。開発したアクチュエータは柔軟な素材により軸が破損をすることなく、曲げた状態でも回転動作を実現できる。
新技術の特徴
・簡易な構造で従来よりも大きな回転角を実現
・回転軸が変形した状態でも回転動作が可能
・空気圧駆動と柔軟素材による軽量化と回転動作による安全性を確保
想定される用途
・旋回動作などを行うロボットの駆動部分
・手首の掌屈(屈曲)、背屈(伸展)を行うリハビリ支援装置
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
- 14:30~14:55
- 医療・福祉
岡山大学 学術研究院保健学域 検査技術科学分野 生体情報科学領域 教授 廣畑 聡
新技術の概要
抗癌剤によるがん治療は広く有効性が確認され多くの人に福音をもたらす一方で、ある特定の抗癌剤には特有の副作用が存在し、副作用の為に治療を中断せざるを得ない場合がある。その一つがドキソルビシンによる心毒性である。我々はドキソルビシンによる心毒性を回避軽減できる新たな治療法を発見した。
従来技術・競合技術との比較
ドキソルビシンによる心毒性の発症メカニズムにはアポトーシスによる細胞死に加えて、オートファジーによる細胞死が関与していることが知られている。我々が開発した治療法では、ドキソルビシン投与した心臓で発現増加しているオートファジー関連遺伝子を抑制し、その結果心不全状態を抑制することができた。
新技術の特徴
・抗癌剤との併用薬として、がん治療を完遂させることが可能
・心機能保護薬で患者の負担を軽減
・心毒性を生じうる抗癌剤の、用量や投与対象、適用可能疾患の制限を緩和
想定される用途
・心毒性のある抗癌剤の併用薬
・心保護薬
関連情報
・サンプルあり
- 15:00~15:25
- 医療・福祉
岡山大学 中性子医療研究センター 医療技術評価学 准教授 井川 和代
新技術の概要
がん治療後の早期社会復帰を可能とする手術療法や放射線療法の局所療法と、化学療法の全身療法を組み合わせた集学的治療効果について、最適化の評価を可能とするヒトがん細胞と正常細胞を用いた動物代替3次元モデルを開発した。
従来技術・競合技術との比較
がん治療効果の評価は、担癌マウスモデルにおける腫瘍縮小効果で判断することが一般的であり、動物試験に代わる評価方法に期待が高まり、近年ではヒト細胞を用いた三次元培養モデルが注目されている。
新技術の特徴
・様々な放射線の感受性を評価するシステム
・治癒経過を評価するシステム
・ヒト細胞を使用することで、ヒトの病態を再現
想定される用途
・患者さん一人ひとりにあわせた最も効果的な個別化治療の提案
・集学的治療による費用対効果が算出可能
・集学的治療による延命効果の算出が可能
お問い合わせ
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岡山大学 研究推進機構 知的財産本部
TEL:086-251-8417
Mail:cr-ip okayama-u.ac.jp
URL:https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
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