九州大学 新技術説明会【対面開催】
日時:2023年10月12日(木) 09:55~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、九州大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- 09:55~10:00
開会挨拶
九州大学 オープンイノベーションプラットフォーム 副理事(産学官民連携・知的財産担当) 大西 晋嗣
- 10:00~10:25
- アグリ・バイオ
1)マイクロ流路を用いた液滴への粒子封入制御技術
発表資料九州大学 大学院工学研究院 機械工学部門 助教 鳥取 直友
新技術の概要
液滴に封入する粒子(細胞やビーズなど)の個数制御を可能とする、新たなマイクロ流体デバイスについて紹介する。本デバイスでは、液滴生成部の上流で微小渦を発生させ、粒子の捕捉・放出を制御することで、液滴への封入粒子数の制御を可能としている。
従来技術・競合技術との比較
従来のマイクロ流路を用いた液滴への粒子封入技術では、粒子が液滴生成部へとランダムに流れてきた後、液滴へと封入されるため、所望の封入粒子数に制御することは困難である。一方、今回の技術では、流路内を流れる粒子を微小渦により捕捉・放出することによって、液滴への封入粒子数の制御性向上を実現している。
新技術の特徴
・液滴生成部の上流で微小な渦を発生させ、粒子の捕捉・放出を可能としている点
・粒子の捕捉・放出の制御に、外部エネルギー(電場・音場など)が不要である点
・単純な流路構造で、液滴への粒子封入の制御が可能である点
想定される用途
・細胞間相互作用の評価
・単一細胞解析
・細胞融合
関連情報
・サンプルあり
- 10:30~10:55
- 創薬
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 助教 新居 輝樹
新技術の概要
本技術は、抗炎症型(M2型)への分極を引き金に炎症性サイトカインを放出し始めるマクロファージ医薬である。このマクロファージ医薬を静脈内投与すると、腫瘍に集積したのちに強力な炎症を引き起こす。炎症となった腫瘍には異物を排除する免疫細胞が浸潤し、抗腫瘍効果を発揮する。正常組織に到達してもM2型に分極しないため炎症を引き起こさない。
従来技術・競合技術との比較
腫瘍の免疫抑制を解除する免疫チェックポイント阻害剤は、抗原の発現が腫瘍内で不均一であるために効果にバラつきがある。全身の免疫が過剰となる副作用も危惧される。免疫を活性化する薬物を搭載した抗体薬物複合体も、抗原の変異や欠損が生じると効果を示しにくい。本研究は、抗原を活用せずに腫瘍特異的に炎症を引き起こすことができる。
新技術の特徴
・腫瘍とマクロファージの仲の良さを逆手に取り、マクロファージが腫瘍内で抗炎症性となることで炎症を引き起こすマクロファージ医薬
・腫瘍で炎症を引き起こしたのち、消滅する。炎症を引き起こした腫瘍は生体にとって異物となるため排除される
・他の正常な組織に万が一到達したとしても、そこで炎症を引き起こさないようロック機能が備わっている
想定される用途
・変異の多い固形がんへの治療
・従来技術では効果が得られない固形がんへの治療
関連情報
・サンプルあり
- 11:00~11:25
- 創薬
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 教授 神谷 典穂
新技術の概要
本技術は、IgG抗体の特定のリジン残基(Lys)に様々な化学修飾を施すための新しい酵素変異体に関するものです。タンパク質を架橋する酵素トランスグルタミナーゼに抗体結合ドメインを融合したキメラ酵素を設計したところ、これまで修飾できなかった部位のLysにピンポイントで小分子をラベルできることが分かりました。抗体薬物複合体(ADC)の調製など、新たな部位特異的タンパク質ラベル試薬としての利用が期待されます。
従来技術・競合技術との比較
本研究で用いている微生物由来トランスグルタミナーゼは、IgG抗体の特定のグルタミン残基(Gln)に薬物導入が可能なため、ADCの調製に広く用いられてきました。しかしながら、既往の方法ではIgG抗体の脱糖鎖処理が必要でした。我々の設計したキメラ酵素は、脱糖鎖処理を必要とせず、Fabドメインの特定のLysに修飾を導入可能な性質を有しています。
新技術の特徴
・IgG抗体の部位特異的修飾(小分子ラベル)に広く活用可能
・Fabドメインにラベルが入るためフラグメント化抗体への適用が可能
・キメラ酵素の設計を変えることで、異なるLysにラベル導入が可能
想定される用途
・抗体薬物複合体の設計
・フラグメント化抗体薬物複合体の設計
・二機能性抗体の設計
関連情報
・サンプルあり
- 11:30~11:55
- 創薬
4)細胞内ATP量を向上させる核酸プロドラッグの開発
発表資料九州大学 先導物質化学研究所 准教授 穴田 貴久
新技術の概要
老化や疾患に伴って細胞内の生体エネルギー通貨アデノシン三リン酸(ATP)量が低下する。我々は、細胞内で代謝され、ATPへと変換されることで細胞内ATP量を向上させるATPプロドラッグ(proATP)を開発した。
従来技術・競合技術との比較
ATPは親水性が高く、生体内安定性が低いため、そのまま投与しても細胞内ATP量を向上させることは困難である。細胞内ATP濃度を上昇させることができるプロドラッグの報告はこれまでになく、本手法の新規性は高い。
新技術の特徴
・生命のエネルギー通貨ATPを上昇させる
・抗老化効果を示す
・細胞への酸化ストレス耐性付与
想定される用途
・抗老化薬
・加齢性疾患予防・治療
・化粧品など
- 13:00~13:25
- エネルギー
九州大学 応用力学研究所 再生可能流体エネルギー研究センター 准教授 朱 洪忠
新技術の概要
複数の波力複合発電装置が風車を支持する浮体に繋がり、浮体のサスペンションシステムとして利用される。波力発電装置の協調制御により浮体動揺の低減を提案する。浮体の振舞いを予測しながら最適な波力発電制御則を設計する。このシステムは、風車発電できない厳しい海況にも波力発電が可能で、風車疲労寿命と系統の安定性に貢献できる。
従来技術・競合技術との比較
従来は、波力発電装置には波力発電の機能しかなく、海況が厳しくなると波力発電が停止となり浮体動揺が増すことが課題であった。本提案は、波力発電装置が波力発電と浮体動揺低減の役割を持つ。風車動揺低減が優先されるため、浮体式風車のネガティブダンピング現象が低減できる。
新技術の特徴
・浮体動揺低減により風車の疲労寿命及び発電量が良くなる。
・浮体の振舞いを予測しながら波力発電装置を制御する。
・提案の波力発電装置は浮体の流体力学的性能への影響が小さい。
想定される用途
・洋上風力発電及び波力発電
- 13:30~13:55
- 材料
九州大学 大学院薬学研究院 助教 矢崎 亮
新技術の概要
汎用性が高く、安価で入手容易なカルボン酸やアミド、エステルの触媒的な重水素化法を世界で初めて開発した。本手法は、非常に温和な条件で進行するだけでなく、安価な触媒系を実現しており、従来法と比較して大幅な低コスト化に成功している。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、強塩基性条件や過酷な反応条件(加熱、加圧)、また貴金属触媒を用いる必要があった。さらに重水素を選択的に導入することは困難であった。本手法では、室温付近の温和な条件下、貴金属触媒を用いることなく選択的な重水素導入が可能となった。
新技術の特徴
・低コスト
・温和
・選択的
想定される用途
・重水素化材料
・重水素化医薬品
・重水素化バルクケミカル
関連情報
・サンプルあり
- 14:00~14:25
- 材料
九州大学 大学院システム情報科学研究院 電気システム工学部門 助教 稲葉 優文
新技術の概要
熱伝導性フィラーを樹脂中に混合した放熱シートの熱伝導性向上のために、フィラー同士を樹脂中で接触させ熱伝導パスを形成する電界整列技術を、より顕著に確認できる方法・装置を考案した。
また、新規なフレーク状の熱伝導性材料として、多結晶ダイヤモンドフレークを作製した。
従来技術・競合技術との比較
高熱伝導率の放熱シートの作製において、単にフィラーを高充填にすると樹脂の柔軟性が低下しリワーク性が低下する。本技術は従来から存在する放熱シートの作製法に電界整列法を追加し、フィラー充填率の低減・柔軟性の付与・熱伝導性向上といった機能を持たせる。
ダイヤモンドフレークは、等方的な熱伝導率をもつ多結晶のフレーク材料であり、これを用いた放熱シートは、粒状ダイヤモンド微粒子をフィラーに用いた場合より高熱伝導性を発揮する。
新技術の特徴
・樹脂複合材料の形成における重力の影響を抑止しながら電界整列する
・等方熱伝導性のフィラー材料である
想定される用途
・放熱シートの機能(柔軟性、導電性、熱伝導性)を向上する
・複合材料のフィラー材料
関連情報
・展示品あり
- 14:30~14:55
- 環境
九州大学 大学院工学研究院 応用化学部門 准教授 松本 崇弘
新技術の概要
木材中に20-35%含まれるリグニンから、低エネルギー・低環境負荷・低コスト・簡便な方法で、メタノールを製造する技術を開発した。リグニンは有用な利活用技術の実用化が期待される木質バイオマスであり、メタノールはカーボンニュートラル社会の実現のために重要な役割を果たすと期待されるC1化合物である。
従来技術・競合技術との比較
リグニンからの低分子化反応はこれまで学術雑誌で数多く報告されているが、いずれも高温・高圧条件や酸化剤・還元剤を必要とし、複数の生成物が得られる反応選択性が低いものがほとんどである。しかし、我々が開発した技術は、低エネルギー・低環境負荷条件で、メタノールのみが得られる特異的な反応である。
新技術の特徴
・リグニンの低分子化
・メタノール製造
・カーボンニュートラル技術
想定される用途
・木質バイオマス利用
・C1化合物としてのメタノールの利用
・循環型資源利用
お問い合わせ
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