自然科学研究機構 新技術説明会【対面開催】
日時:2024年01月23日(火) 13:30~15:25
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、自然科学研究機構
発表内容一覧
発表内容詳細
- 13:30~13:55
- 電子
自然科学研究機構 国立天文台 先端技術センター 准教授 小嶋 崇文
新技術の概要
ミリ波帯からマイクロ波への周波数変換器、ダウンコンバータとして利用されてきたSuperconductor-Insulator-Superconductor(SIS)接合を用いた新しい原理のマイクロ波増幅器の研究を行っています。SISミキサを2つ用い、その周波数変換時に得られる変換利得を利用した、マイクロワットオーダーの消費電力で広帯域低雑音増幅効果を得ることができます。
従来技術・競合技術との比較
本技術では、従来の半導体トランジスタ増幅器(HEMTやHBT)と比較して、利得や雑音温度に関して同等の性能を維持したまま、およそ3桁程度の低消費電力化が可能です。多数の低雑音マイクロ波増幅器を必要とする大規模な多素子電波カメラや、誤り耐性型量子コンピュータの実現に貢献することが期待されます。
新技術の特徴
・マイクロワットオーダーの低消費電力で動作するマイクロ波低雑音増幅器
・磁性体フェライトを用いず平面回路のみで実現可能な小型非相反回路
・ジョセフソン発振器を用いることで直流のみで動作する超伝導増幅器
想定される用途
・電波天文用多素子カメラの増幅素子
・誤り耐性型量子コンピュータのマイクロ波増幅回路
- 14:00~14:25
- エネルギー
自然科学研究機構 核融合科学研究所 研究部 超伝導・低温工学ユニット 教授 高畑 一也
新技術の概要
低温機器を液体窒素や液体水素を用いて予冷する際、液化ガスの消費量削減、時間効率の観点から予冷時間の短縮が重要となる。本技術は、伝熱面に樹脂をコーティングし、その表面に微細なクラックを形成することで、予冷時間を大幅に短縮できる高性能伝熱面を提供する。
従来技術・競合技術との比較
従来の高性能伝熱面は、金属壁面に微細加工を施す手法が一般的であった。しかしながら、加工に特別な装置が必要となり、広範囲、曲面への応用が難しかった。本技術の樹脂コーティングであれば、加工機械や加圧・加熱装置を必要とせず、刷毛塗り、ディッピング、スプレーなどの簡便な方法で施工できる。
新技術の特徴
・10µm程度のフッ素樹脂を伝熱面にコーティングするだけで、冷却初期に表面クラックが自然発生し、これにより膜沸騰が阻害され、冷却が急速に進む。
・金属表面の方がコーティングの伝熱促進効果が大きいが、プラスチックなどの絶縁物でも効果が現れる。
・常温で乾燥するフッ素樹脂を使うため、熱処理の必要がない。すでに完成した装置にも施工することができる。
想定される用途
・液体窒素、液体水素などの液化ガスの移送や貯蔵のための設備の予冷時間を短縮する
・生体細胞を急冷凍結するための装置に応用し、冷却速度を増し、細胞の生存率を上げる
・低温液化ガス(LNG,液化窒素,液化酸素,液化アルゴン,液化水素,液化ヘリウム等)用蒸発器の性能向上
関連情報
・展示品あり
- 14:30~14:55
- アグリ・バイオ
自然科学研究機構 基礎生物学研究所 オルガネラ制御研究室 特任助教 金井 雅武
新技術の概要
研究室内から新規な昆虫病原菌を分離した。この昆虫病原菌は広く利用されている殺虫剤に対する耐性が高く、殺虫剤存在下でも生存可能である。このため既存の殺虫剤との混用でき、即効性と持続性を持つ新たな殺虫剤の開発が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
既存の昆虫病原菌は化学物質の殺虫成分を高濃度に含む薬液中に生存することが困難であるが、新たに分離された昆虫病原菌は既存の殺虫剤に対して高い耐性を持つ。菌体は薬液中で生存可能であるため、昆虫病原菌と殺虫剤を混用する新しい殺虫剤の開発が可能になる。
新技術の特徴
・即効性と持続性の両立
・低環境負荷
想定される用途
・殺虫剤
- 15:00~15:25
- 計測
自然科学研究機構 分子科学研究所 メゾスコピック計測研究センター 教授 岡本 裕巳
新技術の概要
円偏光二色性は、分子やナノ物質の不斉な構造(鏡像が自身と重ならない構造)を検出する強力な実験手法だが、信号が弱く、異方性のある物質の計測が困難であり、顕微イメージングへの適用が難しかった。本技術では、独自の手法によって、異方性のある不均一な試料でも、高精度で円偏光二色性による顕微イメージングを可能とした。
従来技術・競合技術との比較
従来の円偏光二色性測定法では、円偏光以外に直線偏光が照射されることにより、異方性のある物質の計測が困難であった。本技術では、独自の手法によって、左右円偏光のみが試料に照射される方法を開発し、それにより不均一で異方性のある物質でも高精度な円偏光二色性計測を可能とし、顕微イメージングも可能となった。
新技術の特徴
・分子や分子集合体、ナノ物質の、らせん構造などキラルな構造を検出する円偏光二色性に基づく、顕微イメージングができる
・従来の円偏光二色性で問題となる、直線偏光による信号への干渉が、原理的には解消される
・新たな顕微分光法で、物質構造を同定したイメージングの可能性が拓ける
想定される用途
・ナノ・マイクロ物質科学、スピントロニクス、結晶学における物質(掌性)同定
・生体イメージング、医療診断
・不斉合成化学における生成物の同定・キャラクタリゼーション
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
自然科学研究機構 事務局研究協力課
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Mail:nins-sangaku nins.jp
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