北海道大学 新技術説明会【対面開催】
日時:2024年10月10日(木) 10:25~15:25
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、北海道大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- 10:25~10:30
開会挨拶
北海道大学 産学協働サテライト室 室長 天野 斉
- 10:30~10:55
- アグリ・バイオ
1)植物細胞やポリマー分析のための変色する蛍光色素
北海道大学 大学院地球環境科学研究院 物質機能科学部門 生体物質科学分野
准教授 山田 幸司
新技術の概要
細胞やポリマー中での微小空間での環境変化を検出するために、溶媒極性や水素イオン濃度、水素結合の強弱などによって蛍光発光波長が変化する色素を開発した。ラベル化部位や波長調整部位などの構成要素は、鈴木カップリングで組み替えることができ、汎用性の高い用途が考えられる。
従来技術・競合技術との比較
従来の蛍光ソルバトクロミック色素と違い水溶性が大幅に向上したので、植物細胞などのイメージングにも利用できる。蛍光タンパクと比べて分子サイズが1/100以下なので生理活性を阻害する可能性が低い。
新技術の特徴
・イメージングにおいて色素周囲の微小環境変化で蛍光波長応答する
・鈴木カップリングによって相溶性や光物性などを調整した色素を作製できる
・生理活性分子から生体高分子・合成高分子まで蛍光標識できる
想定される用途
・動植物細胞内における生理活性のイメージング
・生体高分子におけるゲル化・変性・生分解性などのモニタリング
・合成高分子における吸着・改質・劣化などのモニタリング
関連情報
サンプルあり
デモあり
展示品あり
- 11:00~11:25
- アグリ・バイオ
2)ペプチド由来の環境にやさしい船底防汚物質の開発
北海道大学 大学院地球環境科学研究院 物質機能科学部門 生体物質科学分野
准教授 梅澤 大樹
新技術の概要
本技術は海洋生物から得られたペプチドから着想しており、タテジマフジツボのキプリス幼生とムラサキイガイに対する防汚性能と低毒性を確認したトリペプチドである。また、末端のアミノ基やカルボキシル基を利用することで塗料の高分子と結合をもたせることも可能である。
従来技術・競合技術との比較
既存の船底防汚物質は生物殺傷型と呼ばれており、各種生物への毒性や生分解性に乏しいものもあり、海洋環境への悪影響から使用規制が検討されているものがある。これに対して、本技術は海洋生物由来のペプチドであるため、低毒性や生分解性が期待でき、既存の代替となりうる。
新技術の特徴
・フジツボやムラサキイガイに対する低毒性忌避化合物
・安価なアミノ酸から容易に合成
・アミノ酸のスクリーニングによる性能向上の余地
想定される用途
・船底塗料
・海底/海中ケーブル
・臨海発電所の冷却水系統
- 11:30~11:55
- 製造技術
3)固体触媒を利用したバイオマス由来環状ジオールの合成
北海道大学 触媒科学研究所 触媒反応研究部門 教授 中島 清隆
(代理発表者:助教 大須賀 遼太)
新技術の概要
バイオマス由来の糖類から環状ジオールを合成する固体触媒反応プロセスを開発した。グルコースのC-C結合を切断し、4炭糖へと変換した後に環状ジオールへとワンポットで誘導することができた。2種類の固体触媒を利用し、C-C結合の切断と環状ジオール生成の反応場を分離することにより、目的生成物を高収率で合成できた。
従来技術・競合技術との比較
過去の研究では、グルコースのC-C結合によって生成する不安定な4炭糖を回収する有効な技術がなく、それを高収率で合成する反応系は報告されていなかった。本技術では、4炭糖を環状ジオール体へと変換した上で回収するため、従来の問題点を克服した。また、環状ジオール体は、加水分解によって4炭糖へと容易に変換できる。
新技術の特徴
・固体触媒を利用したグリーンなプロセス
・安価な糖類を出発物質とした新規かつ高効率な反応系
・反応場の分離に基づく高い目的生成物収率を達成
想定される用途
・バイオプラスチックモノマー
・C4基幹化学品への中間体
・食品添加剤
- 13:00~13:25
- 製造技術
4)フロー自動反応最適化装置
北海道大学 大学院理学研究院 化学部門 有機・生命化学分野 教授 永木 愛一郎
新技術の概要
次世代の合成技術であるフロー合成反応を活用し、AIを活用した反応の精密なモニタリングと、その結果のフィードバックによる自律的な反応条件探索により、全自動で化学合成反応の最適化を行う要素技術です。さらにこの技術は反応監視にも応用できることから、フロー合成のスケールアップが容易である特徴と併用することで、化学合成の速やかな生産技術移行を可能とします。
従来技術・競合技術との比較
ロボットアームを用いる自動合成やフロー合成を活用する自動合成は近年研究が進められていますが、フロー合成中の反応結果をAIにより精密に分析する技術はなく、そのため正確に反応条件探索が可能な技術はありませんでした。
新技術の特徴
・化学合成研究の自動化が可能であり、省人化可能
・ベイズ推定により探索研究の高速化が可能
・シームレスなスケールアップにより生産技術研究の短期間化が可能
想定される用途
・医農薬品・ファインケミカルの研究開発の自動化・高速化
・材料分野の精密インフォマティクスによる機能予測
・化学製造の省人化・自動化
- 13:30~13:55
- 材料
5)銀系化合物を用いる水素の活性化とCO2のメタン等への転換
北海道大学 大学院工学研究院 附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センター
エネルギー変換システム設計分野 准教授 坪内 直人
新技術の概要
Gin De Ride (銀-Derived Hydride, GDR) は、当研究室が発見した銀系化合物から生成する高活性水素イオンの呼称である。その一部の燃焼熱は、反応の熱源として供給され、余剰分は、例えばCO2メタネーション反応等の活性種として供給されるため、反応の低温・高効率化が可能となる。
従来技術・競合技術との比較
従来、水素燃焼用触媒には、ルテニウムや白金系触媒が用いられ、高活性だが高価で資源が限られる等の欠点があった。一方、当GDR触媒は低価格・高活性であり、さらに、GDRの燃焼を反応の熱源として利用することも可能である。そのため、触媒の低コスト化や反応の高効率化が図れ、様々な分野における展開が期待される。
新技術の特徴
・高活性水素イオン(GDR)生成技術
・GDR燃焼を利用した低温化反応技術
・GDR燃焼と余剰GDRを組み合わせた各種合成反応の低温・高効率化技術
想定される用途
・水素燃焼用触媒
・二酸化炭素メタネーション反応用触媒
・高活性水素イオン(GDR)供給用触媒
関連情報
サンプルあり
- 14:00~14:25
- 創薬
6)中分子ペプチドの構造最適化を網羅的かつ迅速に実現するペプチドスキャニング手法
北海道大学 大学院薬学研究院 創薬科学研究教育センター 教授 市川 聡
新技術の概要
ペプチドを創薬展開するためには生物活性・代謝安定性の向上が必要である。本技術は、のちの構造修飾の足がかりとなる人工アミノ酸(スキャニングアミノ酸)を用いたペプチドスキャニングにより、修飾を導入する部位を決定し、この過程で用いたペプチドを直接化学修飾することで迅速な構造展開を達成できる。
従来技術・競合技術との比較
従来ペプチドの構造可変部位を探索するためには、アラニンスキャニングが汎用されてきた。この方法では、スキャニングに用いた誘導体をそのまま誘導体合成に用いることができず、新たな誘導体をアミノ酸単位から、再合成する必要があった。本技術は、ペプチドスキャニングと構造展開をシームレスに実現することで、大幅な効率化が可能である。
新技術の特徴
・低分子・中分子医薬品双方に応用可能
・ごく微量の誘導体を多検体合成可能
・アッセイプレート上での誘導体合成
想定される用途
・中分子医薬品の開発
・疾患原因探索のためのツール分子の合成
・タンパク質の構造修飾
- 14:30~14:55
- 医療・福祉
7)血液を使って非アルコール性脂肪性肝炎を診断する手法の開発
北海道大学 大学院保健科学研究院 病態解析学分野 准教授 櫻井 俊宏
新技術の概要
単純性脂肪肝を有する患者と比べて、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有する患者の血中高比重リポタンパク質(HDL)中に特定の酸化ApoAI(タンパク質)を多く含むことを見いだした。中でも、酸化apoAIと総apoAIの比がNASHで増加し、肝病理診断での評価における肝線維化と良好な相関を示した。本技術はNASHの診断に有用である可能性を示した。
従来技術・競合技術との比較
単純性脂肪肝とNASHを鑑別して診断する血液を使った方法が確立されていない。よって臨床診断では針を刺して肝臓を採取する生検が必要である。苦痛であるため、血液検体で診断できる評価系が熱望されている。本技術は、鑑別能の表すROC-AUCが0.97と、良好な成績であった。
新技術の特徴
・NASHで増加する、特定の酸化apoAIが増加することを突き止めた
・中でも、血中HDLに含まれるapoAIの「酸化修飾体」と総apoAIの比率がNASHの診断に有用である可能性
・NASHの肝組織の炎症や線維化の指標が悪化するにつれて、本酸化apoAI/総apoAIの比率の増加と深く関連したので、血中マーカーで肝の線維化などを予測するような用途に使用できる可能性がある
想定される用途
・より簡便な測定法の開発ができれば多数の臨床検体処理が可能になり、また研究用/臨床診断補助用に販売できる可能性がある
・開発できた測定法は、NASH鑑別の補助診断に有用である
・将来的に、酸化apoAIを標的とした治療薬の開発の進展も想定される
- 15:00~15:25
- 医療・福祉
8)難治性間質性肺炎の新規の非侵襲治療技術の開発
北海道大学 遺伝子病制御研究所 病因研究部門 教授 村上 正晃
新技術の概要
難治性突発性間質性肺炎患者には治療法がないと言っても過言ではない。今回、北海道大学病院で当該患者に非侵襲の迷走神経の微弱電気刺激を実施し病態を改善する可能性が示されたので、新規治療法として米国特許を取得した。今後、機器、電極などを改変し、治療法として最適化し、社会の福祉に貢献する。
従来技術・競合技術との比較
間質性肺炎の50%以上は原因のはっきりとしない突発性で「特発性間質性 肺炎診断と治療の手引き2022」に標準治療方針が規定されている。(1)ステロイド治療、(2)ステロイド治療で重篤な副作用があった場合には免疫抑制薬(シクロフォスファミド、アザチオプリン、シクロスポリン)。ただし「ステロイドや免疫抑制薬治療の有効性は限られているため、治療導入に関しては十分な検討を要する」。(3)抗線維化薬(ニンテダニブ、ピルフェニドン)や肺移植である。しかし、良い治療法がないと言っても過言ではない。
新技術の特徴
・痛み治療への保険適用機である低周波刺激装置や付着電極を用いた新規治療法である
・非侵襲の新規治療法で、患者負担が少なく、今後、刺激部位、刺激電流、刺激波形など改良し、さらに最適化が可能である
・当該治療法は、慢性炎症の関連する多くの他疾患への応用展開が可能である
想定される用途
・現状治療法のない難治性の間質性肺炎患者への新規治療法となる
・他の慢性炎症の関連する難治性疾患への新規治療法となる
・新規のバイオマーカー、創薬発見のためのプラットフォームとなる
関連情報
デモあり
展示品あり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
北海道大学 産学・地域協働推進機構 産学連携推進本部
TEL:011-706-9561
URL:https://www.mcip.hokudai.ac.jp/about/onestop.html
新技術説明会について
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TEL:03-5214-7519
Mail:scettjst.go.jp