京都大学 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2025年01月23日(木) 10:00~14:55
会場:オンライン開催
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、京都大学
<お申込み方法・聴講方法>
聴講をご希望される方は、「説明会のお申込みはこちら」よりお申込みください。
申込受付:開催日前日まで
・お申込み完了後、マイページが設定され「事前登録完了のお知らせ」が届きます。
・メールに従いログインIDとパスワードでマイページへのアクセスをご確認ください。
・開催日前日にマイページより聴講用URLをご案内いたします。
・当日はマイページよりご聴講いただけます。
発表内容一覧
発表内容詳細
- 10:00~10:25
- 創薬
1)老化細胞の病的生存能を標的とした加齢性疾患治療法の開発
京都大学 医学部附属病院 准教授 近藤 祥司
新技術の概要
我々は老化の観点から長年、解糖系酵素ホスホグリセリン酸ムターゼPGAMに注目する。その研究過程で、癌細胞と老化細胞の共通する代謝特性として、PGAMとChk1 キナーゼの結合による解糖系代謝亢進に気付いた。PGAM-Chk1結合阻害は、老化細胞の病的生存能を阻害し、「セノリシス(老化細胞除去)」効果があることを見出した。PGAM-Chk1結合阻害は、vivoでも慢性炎症除去に働き、加齢性疾患治療に有効と思われる。
従来技術・競合技術との比較
個体老化で蓄積する「老化細胞」は、炎症性サイトカインの盛んな分泌により(SASP; 細胞老化関連分泌形質)、慢性炎症の一因となる。新概念「細胞老化による慢性炎症」に基づき、「細胞老化」を治療標的とする「セノリシス」(老化細胞除去)薬が注目される。しかし、既報のABT263(Chang他 Nat Med 2016) や解糖系阻害剤などは、その副作用が懸念される。我々のPGAM-Chk1結合阻害は、老化細胞選択的であり、その副作用が最小化されている。
新技術の特徴
・解糖系酵素ホスホグリセリン酸ムターゼ(PGAM)とセリンスレオニンタンパク質キナーゼであるChk1 との結合阻害活性を測定することにより、新規セノリシス薬を効率的に見出すことができるスクリーニング法を確立した
・このスクリーニング系を用いて、安全性が確定している既存薬ライブラリーから約40種の新規セノリシス薬を同定している
・PGAM-Chk1キナーゼ結合経路の上流および下流シグナル伝達経路の解明がなされており、多様な視点からの薬剤効果評価系の設定が可能である
想定される用途
・慢性炎症のおおもとである老化細胞を除去することにより、個体老化を改善するセノリシス(老化細胞除去)薬の同定に有効である
・新規セノリシス候補薬の開発とその治療応用に有効である
・慢性炎症を原因とする種々の加齢性疾患の治療応用に有効である
- 10:30~10:55
- 製造技術
2)イオンビームアシスト成膜法による二次電池材料の低温形成と電気化学活性化
京都大学 大学院エネルギー科学研究科 エネルギー応用科学専攻 准教授 川山 巌
新技術の概要
Liイオン電池正極材料の作製にイオンビームアシスト成膜法を用いることにより、100℃以下の低温で結晶化し、かつ配向の揃った薄膜が成長する。本手法により、ポリマー等の低融点基板上の電池や直列多層電池の作製が可能となる。さらに、通常の手法で合成した場合よりもイオン伝導度が増加することを見出した。
従来技術・競合技術との比較
パルスレーザー蒸着法やスパッタリング法などの従来の成膜手法では、酸化物などの高融点材料の合成には数百度の基板温度が必要である。本手法では、照射するイオンビームの運動エネルギーが薄膜の結晶化エネルギーに転化されるため、低温での結晶化が可能であるだけでなく、配向制御した薄膜の形成が可能である。
新技術の特徴
・ポリマーなどの低融点基板の上や、金属シート、シリコンなど従来作成できなかった様々な基板の上ににLiイオン電池を作製可能
・イオンビーム照射により、構造が変化し(欠陥密度の増加など)イオン伝導度が増加するため、従来電池材料として使用できなかった材料を活用可能
・薄膜電池を多層化することにより、高出力電圧の電池が作製可能
想定される用途
・環境計測用の超小型センサーなどの電源
・生体センシングなどのためのフレキシブルデバイス用電源
・電動飛行機、電動ロケット用エンジンのための超高容量・高出力バッテリー
- 11:00~11:25
- 情報
3)事前設定不要で直感的なヒューマノイドコントローラー
京都大学 大学院情報学研究科 情報学専攻 助教 八木 聡明
新技術の概要
人からヒューマノイドロボットへの動作の変換には複雑な計算が必要です。本技術では、それぞれ別個に用意された体の動きのデータから、その対応を学習するAIを用いて、事前設定不要のユーザーが直感的にロボットを操作できるコントローラーを開発しました。
従来技術・競合技術との比較
ヒューマノイドロボットを遠隔操作するためには、手先や頭などの身体あるいは動作のキーフレームの対応関係をあらかじめ設定する必要があります。この作業には専門性とコストが必要ですが、本技術はこれらの事前設定を不要にして人の動作を高精度にヒューマノイドに表現させることが可能です。
新技術の特徴
・事前設定不要で直感的なロボットコントローラー
・ヒューマノイドやアームロボットに人らしい動作を表現させられる
・ユーザーはロボットに対する専門的な知識が不要
想定される用途
・サービスロボットの遠隔操作
・自律駆動ロボットのためのデータ収集
・ヒューマノイドロボットの動作生成
- 13:00~13:25
- エネルギー
4)ナノ・マイクロスケールにおける熱計測および利活用技術と材料開発
京都大学 大学院工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻 准教授 廣谷 潤
新技術の概要
本新技術はナノ・マイクロスケールの熱伝導率計測技術と熱の利活用技術、ナノ材料の特性チューニングに関するものである。ナノ・マイクロスケールをキーワードとしながら、熱の精密計測やリザバーコンピューティングと熱を融合させた情報活用技術、ナノ材料の特性変調などの技術である。
従来技術・競合技術との比較
熱伝導率技術は従来技術と比較してより高感度な計測、熱のリザバーコンピューティングは全く新しい技術であり、ナノ材料の特性変調については簡便な作製方法である点で従来技術と比較して優位性があると考えている。
新技術の特徴
・ナノ・マイクロスケールの熱伝導率計測
・熱を情報として利用したコンピューティング
・ナノ材料の電気特性・導電機構の変調
想定される用途
・集積回路やパワーデバイス等での熱特性評価・マネジメント
・熱を利用した革新的コンピューティング技術への応用
・ナノ材料を利用したガスセンサなどへの応用
関連情報
サンプルあり
展示品あり
- 13:30~13:55
- 創薬
5)細胞膜透過性の低い薬剤を光照射下膜透過させる新手法
京都大学 大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 准教授 三木 康嗣
新技術の概要
細胞膜透過性の低い核酸医薬などを化学修飾することなく、低侵襲な光照射により細胞膜を透過させ細胞内へと送達する新手法を開発した。本手法を用いれば、電荷をもつペプチド医薬や核酸医薬の細胞内送達が可能である。
従来技術・競合技術との比較
医薬分子を化学修飾せず膜透過させる手法として、リポソームに内包させエンドソーム経由で送達する手法があるが、エンドソーム脱出効率が低い。機械的に細胞内へと直接注入する手法は効率が悪い。本法は、細胞膜を直接透過させるため高効率な薬剤送達法である。光照射した時にその箇所のみ送達できるオンデマンド性をもつ。
新技術の特徴
・細胞膜を直接透過させる薬剤送達法
・光照射時のみ薬剤を送達できるオンデマンドな手法
・開発した薬剤の化学修飾不要
想定される用途
・細胞膜透過性の低い薬剤の薬効を高める補助的手段
・細胞膜透過性の低さにより実用化されなかった薬剤の再検討
・光照射箇所のみ治療できる副作用のない治療
関連情報
サンプルあり
- 14:00~14:25
- 材料
6)耐摩耗性Cr-Co-Niミディアムエントロピー合金の環境調和型電気めっき
京都大学 大学院工学研究科 材料工学専攻 准教授 深見 一弘
新技術の概要
ナノメートルスケールで相分離する電解液をめっき浴に用いることで、高い耐摩耗性をもつCr-Co-Niミディアムエントロピー合金の電気めっきを可能にした。この技術では、金属塩や支持電解質を含む水溶液とイオン液体からなる混合液体がナノメートルスケールで相分離することを利用し、金属イオンの供給が律速となる条件下で組成を制御した多元系合金の電気めっきを可能にした。
従来技術・競合技術との比較
この合金電気めっきは有毒なCr(VI)を用いることなく無害なCr(III)を原料に用いることができる。従来からCr(III)を原料とした硬質クロムめっきの検討が行われているが、耐摩耗性はCr(VI)を用いた硬質クロムめっきを超えられない。本手法で得られるCr-Co-Ni合金はCr(III)が原料であっても合金化によってCr(VI)で得られる硬質クロムめっきを凌駕する耐摩耗性が得られる。
新技術の特徴
・多元素(3以上)が固溶した合金薄膜を簡便な電気めっきで作製できる
・曲率や微細な凹凸をもつ導電性の表面に対して、高い耐摩耗性と耐食性を付与できる
想定される用途
・耐摩耗コーティング
・耐食コーティング
関連情報
サンプルあり
- 14:30~14:55
- 製造技術
7)CO2吸着分離の新技術〜次世代材料の賦形と革新的プロセス〜
京都大学 大学院工学研究科 化学工学専攻 助教 平出 翔太郎
新技術の概要
吸着法によるCO2分離回収に関する2つの新技術を紹介する。①次世代吸着剤として有力視されている柔らかい金属–有機構造体(Flexible MOF)の体積膨張に適応した賦形技術。②CO2を吸着した吸着剤を液体に浸漬することでCO2を脱着回収する新規手法とそのプロセス。
従来技術・競合技術との比較
上に凸の吸着等温線を示す吸着剤に対し圧力または温度をスイングすることでCO2の吸脱着を制御する現行の吸着分離法ではCO2の脱着工程に多大なエネルギーを必要とする。今回紹介する2つの新技術は、それぞれ、材料の側面およびプロセスの側面からこの問題を解決するものである。
新技術の特徴
・膨張性の微粒子をその特性を損なうことなくペレット状に成形可能
・吸着した気体成分を動力ゼロで脱着回収可能
想定される用途
・二酸化炭素分離回収
・吸着分離プロセス
関連情報
サンプルあり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
京都大学 京都大学成長戦略本部統括事業部イノベーション領域
TEL:075-753-9181
Mail:ip-worksaci.kyoto-u.ac.jp
URL:https://www.saci.kyoto-u.ac.jp/
新技術説明会について
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
TEL:03-5214-7519
Mail:scettjst.go.jp