量子科学技術研究開発機構 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2025年02月06日(木) 09:55~14:55
会場:オンライン開催
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、量子科学技術研究開発機構
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発表内容一覧
発表内容詳細
- 09:55~10:00
開会挨拶
量子科学技術研究開発機構 イノベーション戦略部 次長 石井 康友
- 10:00~10:25
- 材料
1)炭素担体の表面改質による電極触媒の性能向上と省白金化
量子科学技術研究開発機構 高崎量子技術基盤研究所
先端機能材料研究部・水素エネルギー変換デバイスプロジェクト 主任研究員 岡﨑 宏之
新技術の概要
白金触媒の担体として用いられる炭素粉体をイオンビーム照射により改質することで、担持した白金触媒の性能を最大で約10倍向上させる技術である。これにより、触媒の白金使用量を1/10程度に低減できるため、燃料電池の低コスト化、さらには普及拡大につながる。
従来技術・競合技術との比較
触媒性能を向上させるための従来技術として、白金微粒子の合金化、コアシェル化や粒径制御などが知られている。これに対し、新技術では、白金微粒子の組成や構造を変化させることなく、イオンビーム照射によって炭素担体の粉末を改質することで、担持した白金微粒子の触媒性能を向上させている。
新技術の特徴
・炭素担体の改質による電極触媒の高機能化
・イオンビームの欠陥導入に基づく改質効果
・炭素粉末に対する新しい高機能化の手法
想定される用途
・燃料電池用電極触媒
・水分解用電極触媒
・電気化学的物質変換デバイス
- 10:30~10:55
- 材料
2)アルカリ耐性に優れるアニオン伝導電解質材料の製造技術
量子科学技術研究開発機構 高崎量子技術基盤研究所
先端機能材料研究部・ナノ構造制御高分子材料プロジェクト 主幹研究員 吉村 公男
新技術の概要
アニオン伝導電解質材料のアルカリ分解の主たる原因である部位を化学的に保護することで、アルカリ耐性を付与したアニオン伝導電解質膜及びバインダー材料を作製した。本技術により、従来比約100倍の耐久性を有する電解質材料を提供できる。
従来技術・競合技術との比較
従来の電解質材料のアニオン伝導基は主にアルキルアンモニウム塩であるため、アルカリによる分解が起こり易かった。これに対し、本技術では、2、4、5位をアルキル基で保護したイミダゾリウム環をアニオン伝導基とし、それを放射線グラフト重合により高分子基材と複合化することで、アルカリ耐性の付与に成功した。
新技術の特徴
・アニオン伝導基の立体保護によるアルカリ耐性の向上
・汎用高分子基材の高機能化
・膜材料とバインダー材料の整合による電気デバイス性能の向上
想定される用途
・アニオン型燃料電池用の電解質材料
・水電解用の電解質材料
・空気電池用の電解質材料
- 11:00~11:25
- 建築・土木
3)コンクリートの損傷度をレーザーでデジタル診断
量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所
量子応用光学研究部・X線超微細加工技術研究プロジェクト 上席研究員 長谷川 登
新技術の概要
現在のインフラ検査では、検査員による打音検査によって損傷度が評価されているが、今後予測される人手不足及びメンテナンスコストの増大に対応するため、デジタルデータの活用による省力化及び効率的なメンテナンスが求められている。本件では、打音検査の遠隔/デジタル化及びそのデータを元に損傷度を評価する手法について報告する。
従来技術・競合技術との比較
現在行われているコンクリートの打音検査を遠隔/デジタル化すると共に、表面振動の減衰波形に着目することで従来の健全/異常のみの判定区分を多段階の損傷度として評価することを可能とする。本手法は、位置精度と損傷度の判定精度に優れており、メンテナンス計画の立案に必要となるエビデンスを得ることを可能とする。
新技術の特徴
・レーザーの特性を活かすことで、遠隔/非接触かつ高精度での打音検査の実施が可能
・従来の打音検査を2種類のレーザーで再現することで、同一原理かつ互換性の高い検査が可能
・損傷評価用プログラムは、他の打音検査で取得した振動・音響データへも適用が可能
想定される用途
・トンネル/橋梁等のコンクリート構造物の表面近傍の損傷度の評価
・損傷度を元にしたメンテナンス計画の立案
・複数の検査機器における損傷度評価指標の共有
- 13:00~13:25
- 計測
4)SiC半導体固体量子センサを利用した全光型磁場計測
量子科学技術研究開発機構 高崎量子技術基盤研究所
量子機能創製研究センター・光スピン量子制御プロジェクト 主任研究員 針井 一哉
新技術の概要
本発表は、SiC基板面に加わる磁場に応じてSiC中のケイ素欠陥からの蛍光量が単調に増加することを利用した、電気を用いないオール光による磁場センサヘッドの測定方法・装置に関する技術の紹介です。測定原理の説明に加えて、サブミリテスラレベルの磁場感度を持つ実証用試作機の紹介を行う予定です。
従来技術・競合技術との比較
既存の磁場センサのほとんどは電気で駆動しますが、本発明はセンサとなるSiC基板に光を照射した際に発生する蛍光の強度を測定するだけで磁場強度がわかる技術です。ミリメートルサイズの基板を光ファイバの先にセットした簡単な構造でサブミリテスラの感度で磁場強度が測定でき、絶縁性が求められる環境や、高温環境などでの利用が期待できます。
新技術の特徴
・光ファイバ接続するミリメートルサイズの小型の磁気センサ
・センサヘッドへの電力供給なしでサブミリテスラ以下の直流磁場感度
・量産性の高いSiC基板を使った安価なセンサヘッド
想定される用途
・高圧電線等の通電確認
・地下探査等の高温環境下磁場測定
・磁気スイッチ応用
- 13:30~13:55
- 計測
5)見えにくいものを時間変化を利用して鮮明に!時間微分干渉顕微鏡
量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部 上席研究員 森 道昭
新技術の概要
光学材料が持っている複屈折性を使い、時間微分型微分干渉顕微鏡を開発いたしました。本技術は普段分かりにくい現象を強調する、微分干渉顕微鏡と類似の性質を有しているため、特に過渡的な現象を逃さずコントラストを高めて見ることが出来る特徴を有しています。
従来技術・競合技術との比較
従来の技術は、単なる伝播法やシュリーレンなどの手法がありますが、本手法は通常の微分干渉と同じく干渉によって際立つため、特に動くモノに対し選択的に高感度に計測できる特徴を有しています。
新技術の特徴
・微分干渉顕微鏡を時間微分の形で実現
・大変な時間微分干渉をシンプルに実現
想定される用途
・モノのミクロな破壊現象など超高速現象の観察
・気体や超高温プラズマなどの希薄な材料の観察
- 14:00~14:25
- 分析
6)鉄表面化学状態を3次元可視化!鉄に高感度の放射光顕微鏡
量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所
放射光科学研究センター・磁性科学研究グループ 主任研究員 藤原 孝将
新技術の概要
鉄系材料表面で局所的に発生している鉄化合物を知ることは、品質評価、製造プロセスの理解において重要である。本技術は、放射光メスバウアー分光法により、直径20μm、深さ30nmの分解能で表面付近の鉄の化学相や価数、磁性等の3次元非破壊分析が可能である。発表ではレーザーピーニングを行ったα-鉄の例を示す。
従来技術・競合技術との比較
SEM-EDSなどの他の表面分析手法と比較し、鉄化合物の同定できることが本手法の特徴である。例えば、α-FeOOHやα-Fe2O3が混合した試料も区別でき、定量分析できる。さらに、価数や磁気モーメントの大きさも評価することができ、その結果を3次元マッピング描写することが可能である。
新技術の特徴
・非破壊で面内20μm、深さ30nmの分解能で鉄化合物の同定および定量分析が可能である
・2次元走査を行うことで、3次元マッピング計測が可能である
・鉄の磁気モーメントの大きさや向きが評価可能である
想定される用途
・鉄鋼材料における溶接部や腐食箇所のマッピング分析
・鉱物・岩石・セラミック材料などの局所分析
・強磁性体材料における結晶粒の磁気特性評価
- 14:30~14:55
- デバイス・装置
7)強力なレーザーを使った純度100%の陽子ビーム発生技術
量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所 光量子ビーム科学研究部
上席研究員 福田 祐仁
新技術の概要
超高強度のレーザーを、クライオ技術を用いて発生させた水素クラスターターゲットに照射し、エネルギーがそろった純度100%の高エネルギー陽子ビームを繰り返し発生させることに成功した。従来加速器では不可能な高エネルギー極短パルス陽子ビームにより、宇宙・原子力分野での材料損傷解明・新材料開発への応用、核融合反応を利用したコンパクトな中性子パルスビーム源開発への応用、などが期待される。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、ターゲット表面に付着している不純物に由来する炭素イオンや酸素イオンもレーザー照射によって同時に発生するため、陽子のみを選択的に発生させることが大きな課題であった。今回、陽子ビームの元となる水素そのもので作られた水素クラスターターゲットを用いることで、純度100%のメガ電子ボルトの陽子ビームを繰り返して発生させることに成功した。
新技術の特徴
・純度100%の高エネルギー陽子ビーム
・従来加速器では発生困難な高エネルギー極短パルス陽子ビーム
・高いエネルギー安定性を持つ陽子ビームの繰り返し発生
想定される用途
・放射線による材料損傷の解明
・宇宙・原子力分野での新材料開発
・中性子源開発などの基礎研究
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