東京工業大学 新技術説明会【対面開催】
日時:2024年09月03日(火) 10:00~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、東京工業大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- 10:00~10:25
- 機械
1)悪路用ひし型四輪車両と後付け可能な車椅子電動化装置
東京工業大学 工学院 機械系 教授 遠藤 玄
新技術の概要
モータ2つで凹凸のある悪路の走行を実現する四輪車両である。前一輪・中二輪・後一輪の菱形に車輪を取り付け、中二輪を駆動する。リンク機構によってサスペンションを作ることで高い段差も登ることができる。車椅子電動化装置は、通常の受動型車椅子に取り付けることで電動化する装置で介助者が横に並んで歩くことが出来る。
従来技術・競合技術との比較
提案する四輪車両は通常の配置に比べて登ることのできる段差が倍以上であるとともに、左右回転速度を調節することで進む単純な制御で実現できる。車椅子伝統化装置については、従来は介助者が後ろで介助しており利用者とコミュニケーションが取りにくいが、並走することで会話が弾む。
新技術の特徴
・簡素な機構で高い踏破性
・既存の車椅子に後付け可能
・利用者との円滑なコミュニケーション
想定される用途
・歩行困難者のサポート
・小型且つ重量物の小移動(工程間の移動、TPS等のシステム支援)
・荷物保持困難者へのサポート
- 10:30~10:55
- 製造技術
2)新しい大気圧低温プラズマ装置の開発と表面処理等への応用
東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 准教授 沖野 晃俊
新技術の概要
零下から高温まで温度を制御できるなど、様々な新しい大気圧プラズマ装置を開発している。これを表面に照射すると、接着性向上、コーティング、クリーニング、殺菌、ウイルス不活化などが実現できる。発表者らは、プラズマ装置から処理法まで広く新技術を開発している。例えば、プラズマと紫外線やレーザーなどを併用すると、表面処理の効果を上げたり、コントロールすることができる。
従来技術・競合技術との比較
世界中で使用されている大気圧低温プラズマは放電電力等でしか温度を調整できないが、発表者らの装置では零下から200℃以上まで1℃単位で温度制御が可能であり、また、ほとんど全てのガスでプラズマを生成できる。この特性を活かした様々な表面処理法を開発している。
新技術の特徴
・零下から高温までの、様々なガスの大気圧プラズマを生成可能
・大気圧で低温なので、プラスチックや生体や液体もプラズマ処理可能
・接着性強化、細胞浸透性向上、殺菌などの多様な処理効果
想定される用途
・表面処理
・殺菌・ウイルス不活化
・ゲノム編集
関連情報
・デモあり
- 11:00~11:25
- 材料
3)力を蛍光で高感度可視化できる高分子
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授 大塚 英幸
新技術の概要
力学的刺激によって着色・蛍光発光などを示すメカノクロミックポリマーは、応力可視化や損傷検知などの視点から注目を集めている。今回紹介する技術は、力を蛍光によって高感度可視化できる高分子を簡便に合成するための架橋剤および添加剤である。得られるポリマーは延伸や圧縮などの力学的刺激によって、蛍光発光を示す。
従来技術・競合技術との比較
力学的刺激により蛍光性ラジカルを発生する分子は温和な加熱でもラジカルを発生し、汎用性が高いラジカル重合に適用できなかった。開発した架橋剤は、温和な条件ではラジカルを発生せず、ラジカル重合により簡便に高分子中へ導入できる。添加剤に関しては、既存の高分子との混合で、高分子鎖の切断を蛍光により検知できる。
新技術の特徴
・既存の架橋剤の一部を、本発明で開発した架橋剤に換えることで、簡便にメカノクロミック特性を付与することができ、温度安定性に優れ、ラジカル重合において操作性よく用いることができる。
・力学的刺激による蛍光発光の感度が高いため、少量の添加で十分な感度を有するメカノクロミック材料を得ることができる。
・添加剤に関しては、既存の高分子と混合するだけで、力学的刺激により高分子鎖の切断が生じると、発生するラジカルを蛍光により検知できる。
想定される用途
・高分子成形品の応力可視化
・損傷検知
・破壊予知
関連情報
・デモあり
- 11:30~11:55
- 創薬
4)ポリフェノール構造分子を基盤とした薬物送達システムによる細胞質移行の促進と新規バイオ医薬品の開発
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 助教 本田 雄士
新技術の概要
種々のモダリティの治療物質を生体適合性高分子と金属イオンで構築された複合体で被覆し、目的の疾病箇所まで効率的に送達する新規薬物送達システムを開発するものである。この技術によって、タンパク質や核酸などの生体内で分解されてしまい活性が制限される治療物質の効果を増強させ、新しいバイオ医薬品を開発する。
従来技術・競合技術との比較
従来の薬物送達技術では治療物質の効率的な内包が困難であること、内包できても肝臓など特定の臓器以外への送達が困難という問題を抱えていた。一方、本薬物送達シーズは種々のモダリティの治療物質を搭載可能である上に、分子構造の調製が簡便であり、様々な組織への選択性を付与することが可能である。
新技術の特徴
・有機溶媒フリーで混合するだけで調製ができる
・細胞質内で搭載した薬剤を放出することができるため、活性を低下させない
・様々な組織に薬剤を送達することが出来る
想定される用途
・バイオ医薬品(遺伝子治療薬など)
- 13:00~13:25
- 機械
5)機械要素振動のその場除去が可能な小型パッシブダンパ
東京工業大学 工学院 機械系 准教授 田中 智久
新技術の概要
Additive Manufacturingなどで一体造形した異方剛性を持つ構造物の内部に減衰材を内包させ、その減衰材に加わるせん断エネルギーを散逸させることで制振するパッシブダンパである。振動を発生する機械要素の内部に直接造形すれば、その場での減衰効果を得ることができる。
従来技術・競合技術との比較
従来のパッシブダンパと異なり構造が単純な一方、ダンパを構成する構造部品の形状パラメータや力学特性と、減衰材の物理特性を組み合わせることで広い周波数範囲に対応した小型のダンパが設計できる。このことから、機械要素の内部に様々な周波数に対応した小型ダンパを複数配置することで、多くの周波数の除去が可能である。
新技術の特徴
・ダンパを構成する構造部品の形状パラメータや力学特性と、減衰材の物理特性を組み合わせることで、広い周波数範囲に対応したダンパが設計できる
・構造が単純であり、導入が容易である
・異なる周波数特性に対応した小型のダンパをグリッド状に配置することにより複数の周波数を持つ振動を除去することが可能となる
想定される用途
・工作機械のテーブル案内
・工作機械のスピンドル
・振動を発生する一般機械要素
関連情報
・展示品あり
- 13:30~13:55
- 計測
6)スイープ加熱法による熱伝導式水素ガスセンサ
東京工業大学 物質理工学院 材料系 准教授 春本 高志
新技術の概要
気体熱伝導式センサは、従来、検出素子に加え補償素子が必要であったが、新たに提案したスイープ加熱法では、検出素子のみで動作できることとなった。その結果、金属細線1本のみという非常にシンプルな構成で水素ガスセンサなどの気体熱伝導式センサを実現可能となった。
従来技術・競合技術との比較
気体熱伝導式センサでは、通常、検出素子・補償素子を常時通電加熱する。これに対し、スイープ加熱法では、通電加熱量を小から大へと階段的に変化させる。これにより、1つの検出素子から多くの情報を取得可能であり、結果、補償素子を必要としない。そのため、金属細線1本のみで水素ガスセンサを実現可能である。
新技術の特徴
・気体熱伝導式センサの新しい駆動方法としてのスイープ加熱法
・1つの検出素子で、多くの情報(気体熱伝導度と室温など)を取得可能
・金属細線1本のみという非常にシンプルな構成で水素ガス検出
想定される用途
・水素センサ
・TCD(Thermal Conductivity Detector)
・ガスクロマトグラフィー
- 14:00~14:25
- エネルギー
7)プロトン挿入脱離型電極を用いた水溶液系二次電池
東京工業大学 物質理工学院 応用科学系 助教 池澤 篤憲
新技術の概要
本技術では、良好なプロトン挿入脱離特性を備える水溶液系二次電池用電極、及び水溶液系二次電池を提供する。本技術で提供する水溶液系二次電池は、正極および負極と、水溶液系の電解質とを備え、正極および負極のうちの少なくとも一方が、良好なプロトン挿入脱離特性を備えた水溶液系二次電池用電極からなる。
従来技術・競合技術との比較
現在最も幅広く使われている二次電池であるリチウムイオン電池は、リチウムイオン挿入脱離型の電極材料を用いており、高い可逆性と充放電効率を有するが、有機溶媒を主体とする電解質が可燃性であるため安全性の課題がある。本技術で開発する水溶液系二次電池は、高い可逆性、充放電効率と安全性の両立が期待できる。
新技術の特徴
・水溶液を用いるため高い安全性が期待できる
・移動度の高いプロトンを用いるため、高出力での充放電が期待できる
・プロトン挿入脱離型電極を組み合わせるため、高い耐久性が期待できる
想定される用途
・定置用蓄電デバイス
・車載用蓄電デバイス
- 14:30~14:55
- 医療・福祉
8)体内で明るく光る手術用ガーゼの開発
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授 安藤 慎治
新技術の概要
手術用ガーゼは、外科手術において止血や汚染術野を整え、また組織の圧排や進行方向のガイドに使われるが、体内でガーゼを見失う事故が絶えない。我々は、近赤外発光色素であるICGを用いた【光る手術用ガーゼ】の開発に成功した。このガーゼは、ロボット・腹腔鏡下手術で標準装備されている蛍光イメージングシステム(FIS)により、内臓組織(厚さ~10mm)を透過して明瞭に観察でき、術後の遺残を防ぐだけでなく、手術の進行方向のガイドに有効である。
従来技術・競合技術との比較
「光る手術用ガーゼ」の発想はこれまでも存在したが、ガーゼをICG水溶液に浸して絞っただけのものであった。特許出願に先だって、国内・国外の出願特許と類似製品を詳細に調べた結果、われわれが構築した染色技術に該当するものはなかった。よって、従来技術・競合技術は存在しない。
新技術の特徴
・近赤外光域での蛍光発光強度と量子収率がとてもに高く、厚さ~10mmの内臓組織を透過して、FISにより明瞭に認識できる
・染色の堅牢性が高く、手術中に臓器に密着しても、また血液・体液に触れてもICG色素が脱離しない(血液に触れると発光性は増大する)
・耐熱性に優れ、使用前のオートクレーブによる滅菌処理によっても発光性能が低下しない
想定される用途
・外科手術における体内ガーゼの遺残防止
・外科手術における手術方向の誘導
・外科手術における各種医療器具のICG染色(スポンジ・チューブ・手術糸等)
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
お問い合わせ
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東京工業大学 研究推進部産学連携課
TEL:03-5734-3817
Mail:sangaku sangaku.titech.ac.jp
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