機能性材料と化学変換技術の新たな展開 ~首都圏北部4大学連合~ 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2025年10月21日(火) 10:00~14:25
会場:オンライン
参加費:無料
主催:科学技術振興機構 、茨城大学、宇都宮大学、
群馬大学、埼玉大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- 10:00~10:25
- 製造技術
1)新規アルミニウム試薬を用いたアルキンからE体アルケンへの選択的水素化還元反応
埼玉大学 大学院理工学研究科 物質科学部門 准教授 木下 英典
新技術の概要
汎用試薬であるCsFとDIBAL-Hを混合した反応剤により、アルキンから選択的にE体のアルケンが簡便に合成できる。また、末端アルキンに対しては、アルミニウム基が選択的に内部側のsp-炭素に付加するため、α-ハロスチレも選択的に合成できる。
従来技術・競合技術との比較
CsFとDIBAL-Hを組み合わせた混合反応剤が、これまで知られていたアルキンに対するヒドロアルミニウム化とは全く逆の反応選択性を示すことを見出した。すなわち、内部アルキンに対しては、anti-付加し、加水分解によりE体のアルケンを選択的に与える。また、末端アルキンでは、内部側のsp-炭素にアルミニウム基が選択的に付加する。
新技術の特徴
・アルキンから選択的にE体のアルケンを合成できる
・汎用試薬であるCsFとDIBAL-H (水素化ジイソブチルアルミニウム)を混ぜ合わせるだけで活性種を調製可能
・α-ハロスチレンも選択的に合成で可能
想定される用途
・生理活性種(医薬品)の選択的合成
・高分子合成のためのモノマーの選択的合成
・目的化合物の選択的合成
- 10:30~10:55
- 材料
2)マンガンドープ新規酸化物赤色蛍光体・波長変換材料の開発
宇都宮大学 工学部 基盤工学科応用化学コース 教授 手塚 慶太郎
新技術の概要
新しい化学組成を有する赤色蛍光体を開発した。この材料は、紫外線と青色光で赤色に発光する蛍光体である。特に紫外線の変換効率が高く、太陽光中の紫外線を赤色光に変換する波長変換材料としての用途も期待できる。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、高価な金属酸化物を用いて合成されていたが、本技術では、構造と発光効率を維持したままより安価で安定性の高い金属酸化物で置換することに成功した。50%置換しても同程度の変換効率を維持させることに成功している。
新技術の特徴
・青色光と紫外光照射で赤色に発光する蛍光体
・紫外線を高効率に赤色光に変換
・従来技術と比較してより安価
想定される用途
・赤色蛍光体
・波長変換材料
- 11:00~11:25
- 材料
3)Siプラットフォーム上に作製可能な新規赤外センサー材料の開発
茨城大学 学術研究院 応用理工学野 助教 坂根 駿也
新技術の概要
現在、赤外受光材料として用いられているInGaAsやHgCdTeなどの化合物半導体は高価な基板や複雑な製造プロセスを必要とし、Si基板との集積化が困難です。そこでSi基板上に作製する新規赤外受光材料として、Mg3Sb2という材料に注目しました。我々は、初めてSi基板上にMg3Sb2薄膜を作製し、室温で赤外光における光応答性を示しました。
従来技術・競合技術との比較
赤外受光材料として用いられているInGaAsやHgCdTeでは高価な基板を必要としました。しかし、今回のMg3Sb2はSi基板上に作製可能なため、既存のSi半導体上に赤外センサーを搭載することができます。また、Biを添加すると様々な波長の赤外線を検出できるようにもなるため、高感度なセンサーとして期待できます。
新技術の特徴
・既存のSi半導体上に赤外センサーを搭載可能
・レアメタルを使用しない赤外センサー
・様々な波長の赤外線を検出可能
想定される用途
・環境モニタリング
・医療診断
・セキュリティ
- 11:30~11:55
- 材料
4)PETに匹敵する高透明な超高分子量ポリエチレン厚膜を作製
群馬大学 大学院理工学府 物質・環境部門(材料科学プログラム) 助教 髙澤 彩香
新技術の概要
合成と製膜を同時に行うことで得られる分子鎖絡み合いの少ない超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)膜をロール圧延することで、従来、不透明または半透明であったUHMW-PEフィルムをほぼ完全に透明化することに成功した。さらに、複数枚の膜を重ねてロール圧延することで、高結晶性・高透明性な厚さ5μm以上のUHMW-PE厚膜を製造することができる。
従来技術・競合技術との比較
UHMW-PE膜は、パウダー原料を焼結させたものを削りだす、あるいは、有機溶剤とともに押出・延伸する、ことで工業的に製造されているが、その透明性は低い。本技術は、PETに匹敵する高透明(低ヘーズ)なUHMW-PE膜を、厚さ5μm以上の厚膜として提供できる。さらに、低環境負荷なプロセス(無溶媒・省工程)で製膜できる点にも優位性がある。
新技術の特徴
・高結晶性かつ高透明性な、厚さ5μm以上の超高分子量ポリエチレン膜
・PETに匹敵する透明性(低ヘーズ)を実現
・低誘電率(比誘電率)、PTFE代替材料として期待
想定される用途
・医療容器包材
・食品用包材
・医療機器絶縁材
関連情報
・サンプルあり
- 13:00~13:25
- エネルギー
5)多層一括成膜によるペロブスカイト太陽電池の高速製造
埼玉大学 理工学研究科 数理電子情報部門 助教 石川 良
新技術の概要
自己組織化と自己偏析を利用し、ペロブスカイト太陽電池の正孔輸送層・光吸収層(ペロブスカイト層)・電子輸送層の3層を一括で成膜することにより、塗布・加熱回数が削減されて高速にペロブスカイト太陽電池を作製可能とする技術。
従来技術・競合技術との比較
従来の製造方法で必要だった5回以上の成膜プロセスを、3回以上に削減可能。これにより、製造時間を1日以上から1時間未満に短縮し、コストも削減可能と見込まれる。また極薄の電子輸送層でも太陽電池として機能し、材料代の削減も見込まれる。
新技術の特徴
・製造プロセスの効率化と高速化
・大面積への適用可能性
・低コスト化
想定される用途
・ペロブスカイト太陽電池
・発光ダイオード
・X線検出器
- 13:30~13:55
- 材料
6)電動車両駆動用電池リサイクルのための水素プラズマ還元技術
茨城大学 学術研究院 応用理工学野 物質科学工学領域 教授 篠嶋 妥
新技術の概要
リチウムイオン電池からのレアメタル酸化物の還元方法として水素プラズマ溶解による脱酸素が有効であることを見出しました。リチウムイオン電池から分離したレアメタルを含む正極を水素プラズマによって溶解すれば、酸化したレアメタルを30秒という短時間で容易に還元できます。しかもこの反応で生じる物質は水であり、環境ストレスフリーです。
従来技術・競合技術との比較
溶媒抽出法や加熱溶融法といった従来技術では、使用した溶剤の後処理が必要であり環境負荷が高いのに比べ、本技術で還元に使用するのは水素イオンであるため、発生するのは水と少量の二酸化炭素であり、環境負荷が小さく、かつ還元効率が高い。
新技術の特徴
・酸化したレアメタルを30秒という短時間で容易に還元できる
・発生するのは水と少量の二酸化炭素であり、環境負荷が小さい
・電極付きの正極から直接レアメタルを回収することができる
想定される用途
・リチウムイオン電池の正極からレアメタルを回収する
・金属酸化物の還元
- 14:00~14:25
- アグリ・バイオ
7)フェアリー化合物で果実糖度を高める新規処理法と上昇剤の開発
宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センター 准教授 謝 肖男
新技術の概要
フェアリー化合物(AOH)を果樹に施用すると、ブドウとイチゴで糖度が有意に上昇する。ブドウでは花穂浸漬、イチゴでは土壌投与が有効である。ジベレリンと同時施用が可能で、無核化処理と糖度向上を一工程で実現する。処理濃度は低用量で有効であり、栽培現場に適する。
従来技術・競合技術との比較
従来はジベレリンなどの成長調節剤で品質調整を行ってきたが、糖度の安定的上昇と粒肥大の両立は難しかった。AOHは低濃度で糖度と重さと体積を同時に高め、黒カビ発生も抑えるため、運用が容易で再現性が高い。処理工程も単純である。
新技術の特徴
・ブドウで糖度1.2~1.4倍、重さ・体積・直径も有意に増加
・黒カビ発生率を7.6%から3%以下に低減、25ppmを2回処理で0%を達成
・イチゴで糖度15%以上、25ppm処理で17.5%に上昇、空洞率低下と重さ増加を同時実現
想定される用途
・大粒ブドウの無核化処理と同時の高糖度化、シャインマスカット等の高付加価値化
・高糖度イチゴの生食・加工向け品質向上、空洞率低下による歩留まり改善
・ブドウ科・バラ科への横展開によるブランド果実の安定生産
関連情報
・サンプルあり
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
茨城大学 研究・産学官連携機構(日立オフィス)
TEL:0294-38-7451
Mail:iric
ml.ibaraki.ac.jp
URL:http://www.iric.ibaraki.ac.jp/
宇都宮大学 社会共創促進センター
TEL:028-649-5502
Mail:uu.cpsc
cc.utsunomiya-u.ac.jp
URL:https://www.sic.utsunomiya-u.ac.jp/
群馬大学 産学連携・知的財産活用センター
TEL:0277-30-1173
Mail:innovation_4u
ml.gunma-u.ac.jp
URL:https://www.ccr.gunma-u.ac.jp/
埼玉大学 オープンイノベーションセンター
TEL:048-858-3849
Mail:oic-info
gr.saitama-u.ac.jp
URL:https://www.saitama-u.ac.jp/research/coalition/coic/coic_about/
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