立命館大学 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2025年10月09日(木) 10:00~15:55
会場:オンライン開催
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、立命館大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- 10:00~10:25
- 創薬
1)造血因子:IL-19の産業的利用
立命館大学 薬学部 薬学科 准教授 藤田 隆司
新技術の概要
造血因子:EPOやG-CSFと受容体が異なる機序で造血を刺激するIL-19の特性について述べます。IL-19は未分化なまま造血細胞を増産させることができます。赤血球だけでなく白血球も未分化な細胞として保存可能になります。未来の血液医療に向けて、新しい血液バンク創生に、IL-19が必要になります。
従来技術・競合技術との比較
赤血球減少ではEPOに不応の患者が存在し、顆粒球減少では、G-CSFに不応の患者が存在し、組換えIL-19が治療の選択肢にあげられます。IL-19はEPOと異なり、赤血球の最終分化を刺激しないため、赤芽球として凍結保存できます。このため、希少な血液型に対しても赤血球を安定供給できる可能性があります。
新技術の特徴
・赤血球の前段階である赤芽球のまま生産が可能になります。このため、凍結保存が可能です。
・エリスロポエチン製剤に不応の赤血球減少症に選択肢を与えます。
・フィルグラスチム(G-CSF製剤)に不応の顆粒球減少症に選択肢を与えます。
想定される用途
・赤血球の増産
・顆粒球の増産
・単球・B細胞の増産
関連情報
サンプルあり
- 10:30~10:55
- 情報
2)敵対生成ネットワークを用いた高精度な腫瘍(異常)検出
立命館大学 情報理工学部 情報理工学科 教授 陳 延偉
新技術の概要
本研究提案では、正常データに加え、腫瘍のある異常データ(画像レベルのアノテーション)も用いる弱教師あり学習法を新規に提案した。異常データを学習に加えることによって、検出精度を大きく向上させた。また、画像レベルのアノテーションしか用いないので、従来の教師あり学習法に比べ、アノテーションの時間と労力を大きく減少させた。
従来技術・競合技術との比較
従来の教師あり学習法による腫瘍検出は膨大な学習データが必要なので、その学習データのアノテーション(ピクセルレベルまたは腫瘍レベル)には非常に時間と労力がかかる。一方、アノテーションが不要な教師なし学習法による異常(腫瘍)検出は正常データのみを用いて学習するので、検出精度が低いという問題点があった。
新技術の特徴
・高精度な異常検出が可能である
・異常データを学習に用いるが、画像レベルのアノテーションのみである
・腫瘍検出だけではなく、さまざまな異常検出が可能である
想定される用途
・診断支援
・工業製品の異常検出
・監視・セキュリティ分野への応用
- 11:00~11:25
- 医療・福祉
3)多様な正常構造に対応可能な画像再構築法に基づく異常検知
立命館大学 理工学部 電子情報工学科 教授 中山 良平
新技術の概要
本技術は、Masked AutoencoderとVision Transformerを組み合わせた新しい画像再構築型異常検知手法であり、ラベルなしの大量の正常医用画像から学習することで、検診データに含まれる微細な異常を高精度かつ自動的に抽出することが可能です。
従来技術・競合技術との比較
従来技術は、工業製品のような外観が均一な対象に特化しており、医用画像に見られる多様な正常構造への対応が困難でしたが、本技術はこうした複雑性にも適応し、ラベルなしデータでも高精度な異常識別が可能となっています。
新技術の特徴
・Vision TransformerとMasked Autoencoderによる高精度な画像再構成と異常抽出
・医用画像に含まれる多様な正常構造に柔軟に対応
・ラベルなしの正常画像のみで学習可能な異常検知モデル
想定される用途
・医療分野の異常検知
・製造業の品質管理
・農業の作物健康モニタリング
関連情報
デモあり
- 11:30~11:55
- 創薬
4)ヒトiPS細胞由来の多系統オルガノイドの構築
立命館大学 立命館グローバル・イノベーション研究機構
准教授 加堂(アブドアルカーディル) ロディ
新技術の概要
本研究は、神経・網膜・筋組織など異なる細胞系譜を統合した多系統オルガノイドを構築し、ヒト特有の組織間相互作用を in vitroで再現する新たな試みである。
従来技術・競合技術との比較
従来の単一系統オルガノイドや動物モデルでは再現が困難であった、ヒト特有の組織間相互作用や疾患表現型を本技術はin vitroで可視化・解析可能とし、創薬研究に革新をもたらす。
新技術の特徴
・神経・網膜・筋肉など異なる系譜の細胞を統合した多系統オルガノイドの構築が可能で、再生医療や機能解析ツールとしても応用可能
・ヒト特有の組織間相互作用や疾患表現型をin vitroで再現可能で、病態解明や毒性評価など幅広い研究に貢献
・創薬スクリーニングや個別化医療はもちろん、ロボティクスやAI解析と連携したin vitro評価系としても展開可能
想定される用途
・難治性・加齢性疾患に対する創薬スクリーニングおよび候補化合物の薬効・毒性評価
・患者由来細胞を用いた個別化医療モデルの構築と治療法の最適化支援
・再生医療や機能再建医療に向けた多組織連関の模擬環境の提供
関連情報
デモあり
- 13:00~13:25
- エネルギー
5)大容量に適した双方向絶縁型DC/DCコンバータ
立命館大学 理工学部 電気電子工学科 教授 川畑 良尚
新技術の概要
大容量変圧器と正弦波電流・電圧出力のPWMインバータを組み合わせ、大容量スマートネットワークに必要な数百から数千kWの大容量の双方向絶縁型DC/DCコンバータを実現する。変圧器を通過する電力周波数を60Hzから400Hz程度の低い周波数とし、電流を高調波の少ない正弦波としたDC/DCコンバータである。
従来技術・競合技術との比較
従来のDC/DCコンバータでは、出力周波数とスイッチング周波数が高い1パルス方式であり、高周波変圧器が用いられているため、鉄心材料の都合により大容量化が困難であった。一方、新技術は、変圧器を通過する電力周波数を60Hz程度に選定できるので、実績のある大容量変圧器をそのまま適用でき、大容量化が容易である。
新技術の特徴
・正弦波電流・電圧出力のPWMインバータを用いたDC/DCコンバータ
・変圧器を通過する電力周波数が60Hzから400Hz程度と低い周波数である
・電圧制御型インバータ及び電流制御型インバータを組み合わせての構成可能
想定される用途
・大容量に適したDC/DCコンバータ
・電力貯蔵用バッテリと直流配電との絶縁機能
・異なる電圧定格をもつ直流配電システム同士の連系
- 13:30~13:55
- 製造技術
6)シリコン上に密な四角錐台配列をエッチングで作製
立命館大学 理工学部 機械工学科 教授 安藤 妙子
新技術の概要
シリコンの結晶異方性エッチングで微小な凹構造を高精度に作製できるが、本技術では凸構造となる四角錐台を複数高密度に配列して作製することができる。これは2回のリソグラフィと2回のウェットエッチングで可能であり、手法は簡単であるがきれいな傾斜線を持つ構造を実現できるものである。
従来技術・競合技術との比較
従来技術では、四角錐台のような凸構造を作製するためには、エッチング中のアンダーエッチングを想定してあらかじめ四角の角に余分なパターンを付加していた。これが構造の高密度化を妨げていた。本研究では従来技術とは全く異なるため、追加パターンのための面積を必要とせず、さらにきれいな稜線を持つ構造が可能である。
新技術の特徴
・ シリコン基板上に精密な凹凸構造を作製できる
・ 六角配列で最高密度となる製作方法である
・ 四角錐の面は原子レベルに滑らかな面である
想定される用途
・ イメージセンサなどの光電変換集光構造
・ マイクロセンサアレイの台座
関連情報
サンプルあり
展示品あり
- 14:00~14:25
- 創薬
7)Air actuatorを用いたin vitroヒト胃モデルによって経口医薬品の胃排出過程を解析
立命館大学 総合科学技術研究機構 客員教授 山下 伸二
新技術の概要
経口投与された薬物の消化管からの吸収速度および吸収量は、胃内での製剤からの溶出および胃から小腸への排出過程に大きく影響される。本技術は、ヒト胃の形態、機能および蠕動運動をin vitroで再現することにより、製剤投与後の胃排出過程を明らかにする。
従来技術・競合技術との比較
胃内での薬物の溶出性を測定する手法として、パドルの回転等を利用した日本薬局方の手法が広く用いられているものの、それらは実際の胃の蠕動運動とは全く異なるものである。本技術はアクチュエーターを用いてヒトの胃の動きを再現することで、よりin vivoに近い条件での薬物の溶出性を測定可能である。
新技術の特徴
・独立したair actuatorを用いて胃の前庭部の蠕動運動を再現
・蠕動運動の強弱、頻度、および経時的なプロファイルを自由に設定可能
・様々な製剤投与後の胃排出プロファイルをsimulation可能
想定される用途
・経口投与された薬物の薬の胃排出速度の違いによる薬物血中濃度のバラツキの解析
・薬物の吸収のバラツキを抑えたロバストな製剤の開発
・経口医薬品の生物学的同等性の予測
関連情報
デモあり
展示品あり
- 14:30~14:55
- デバイス・装置
8)ひずみと光の履歴に応答する軽くて柔らかい自己発電型人工シナプス
立命館大学 理工学部 機械工学科 教授 小林 大造
新技術の概要
「曲げやひずみにより光発電性能が増減する性質」および「光を繰り返し与える毎に光発電性能が高まる性質」を併せ持つ薄膜光発電デバイスを応用して、神経細胞同士の情報伝達の架け橋である「シナプス」を再現する。光照射の履歴によって視覚シナプスのように不揮発的に発電性能が変化する。網膜と脳の低消費電力な信号処理をハードウエアで実現する。
従来技術・競合技術との比較
1つめは自己給電動作である。光による刺激後、デバイスは、最初の光刺激と比較して、後続の光パルスに対してより高い短絡電流を生成する。これは光パルスを受けた履歴の記憶である。光パルスはデバイスの光電流を強化し、メモリを効果的に蓄積する。2つめはピエゾフォトトロニクス効果を利用して機械的曲げによってメモリを動的に変調または消去できることである。
新技術の特徴
・光(周期・照射回数・照度など)やひずみ印加に応じて光起電力が不揮発的に増強/抑制
・国内資源が豊富なセレン薄膜および工業生産に適した汎用成膜によるフレキシブルな光発電型シナプス素子
・光給電によるゼロエネルギーのニューラルネットワークハードウエア
想定される用途
・ソフトエレクトロニクス&ロボティクス
・視覚と触覚の統合
・省エネルギーインフラモニタリング
関連情報
サンプルあり
- 15:00~15:25
- 機械
9)脆弱かつ滑りやすい対象物の高速搬送を実現するロボットグリッパ
立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 准教授 王 忠奎
新技術の概要
ロボットを用いて脆弱で滑りやすい対象物を高速に搬送する際には、慣性力の影響を無視できず、対象物を崩さずに運搬するためにはロボットグリッパの設計に工夫が必要となる。本技術では、柔らかい素材を用いてロボットグリッパを製作し、対象物を包み込むような構造設計を行うことで、有限要素シミュレーションを通じて適切な剛性を実現し、カキフライや生牡蠣といった脆弱で滑りやすい対象物の高速運搬を可能にする。
従来技術・競合技術との比較
従来のソフトグリッパは汎用性を重視して設計されており、脆弱で滑りやすい対象物に特化していない。そのため、一定の速度での搬送は可能であるものの、人間作業者と同程度の速度で対象物を搬送することは困難である。さらに、従来のソフトグリッパは金型による製作が必要なため、カスタマイズには高いコストがかかり、少量多品種の対象物への応用には適していない。
新技術の特徴
・脆弱かつ滑りやすいものを把持し、高速で搬送することができる
・液体シリコン3Dプリンタで製作可能であり、対象物に合わせてカスタマイズしやすい
・剛性を設計することで、搬送する際に対象物への負担を減らす
想定される用途
・食品や農林水産物の高速搬送
・上記以外の脆弱かつ滑りやすいものの高速搬送
関連情報
展示品あり
- 15:30~15:55
- 材料
10)高強度・高電気伝導性を有する放電加工用電極材料の開発
立命館大学 理工学部 機械工学科 教授 藤原 弘
新技術の概要
放電加工用電極材料には、高熱伝導率(高電気伝導率)、高融点、高強度が求められる。そのため、銅とタングステンの複合材料が広く用いられている。本研究では、特異な微細構造を有する従来材より優れた力学特性と電気特性を有する銅タングステン材料を開発した。
従来技術・競合技術との比較
銅:タングステン重量比3:7のとき、従来材と比較すると、電気伝導率はほぼ同じで、硬さが85%向上する。また、銅:タングステン重量比5:5の銅タングステン材料は、従来材と同じ硬さを持ちながら、電気伝導率が37%向上した。このように新規の銅タングステン材料は、従来材と比較して、バランスの優れた強度と電気伝導性を有している。
新技術の特徴
・ネットワーク状の特異な微細組織制御
・粉末冶金技術による作製
・トレードオフ関係の両立
想定される用途
・放電加工用電極材料
・放熱基板材料
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
立命館大学 研究部 BKCリサーチオフィス
TEL:077-561-2802
Mail:liaisonb
st.ritsumei.ac.jp
URL:https://www.ritsumei.ac.jp/research/
新技術説明会について
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
TEL:03-5214-7519
Mail:scett
jst.go.jp





