東京農工大学 新技術説明会
日時:2019年07月09日(火) 09:55~14:55
会場:JST東京本部別館1Fホール(東京・市ケ谷)
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、東京農工大学
後援:特許庁、関東経済産業局
発表内容一覧
発表内容詳細
- 材料
1)未利用・非可食なカシューナッツの殻から作る機能性ポリマー
発表資料東京農工大学 大学院工学研究院 応用化学部門 助教 兼橋 真二
新技術の概要
非可食な食品廃棄物であるカシューナッツの殻から得られるカシューオイルは、有用なフェノール性化合物の混合物である。このカシューオイルを原料として室温で材料成形可能な環境調和型材料を開発した。耐熱性、耐薬品性、抗菌特性、速乾性、材料成形性に優れ、塗料、樹脂、フィルムなどの各種分野への展開に期待できる。
従来技術・競合技術との比較
従来のカシューオイルを使用した製品ではホルムアルデヒド、重金属触媒、揮発性化合物が製造に用いられているが、開発した材料では、材料成形時にこれらの化合物を使用しない環境調和型製造プロセスを特長とする。また従来の大きな課題のひとつである材料の無色透明化に成功した。
新技術の特徴
・未利用非可食バイオマス由来の環境調和型ポリマー
・無溶剤室温材料成形(塗膜、フィルム、シート、樹脂)
・高機能性(耐熱性、耐薬品性、抗菌特性、速乾性、透明、フレキシブル)
想定される用途
・塗料、コーティング材料
・機能性フィルム、シート、樹脂
・添加剤および反応性希釈剤
関連情報
・サンプルあり
・展示品あり
- デバイス・装置
東京農工大学 大学院工学研究院 先端機械システム部門 准教授 岩見 健太郎
新技術の概要
本技術は、可視光で大きな位相を発生させる光メタサーフェスにMEMSアクチュエータを集積化し、位相可変性を持たせたものです。メタサーフェスとして金ナノフィン構造を利用することにより、大きな位相差と高い透過率を両立しています。静電駆動方式を採用することにより、サブミクロンスケールの構造で波長532 nmにおいて位相変調を実現しています。
従来技術・競合技術との比較
液晶を用いた位相変調素子に比べ1/10程度小型であり、集積化に向いた技術です。位相変調範囲も液晶並みに大きくできる可能性があります。また、理論的な解析によって、液晶よりも速い数kHz程度の応答速度が期待できます。
新技術の特徴
・機械的に変形することで光の位相を変えるメタサーフェス
・静電駆動を利用することによる高速応答
・大きな位相変調範囲
想定される用途
・プロジェクタ向け透過率変調器
・立体ディスプレイ向け位相変調器
・ディスプレイ用偏光変調器
- アグリ・バイオ
3)効率的に虫に化学物質を食べさせる方法
発表資料東京農工大学 グローバルイノベーション研究院 テニュアトラック推進機構 特任准教授 鈴木 丈詞
新技術の概要
吸汁型の口器を有する小型の節足動物に対して適用できる給餌装置及び給餌方法。給餌装置の材料は安価で構成も単純である。液体を経口摂取させる領域を任意の形状とすることができ、その比表面積も大きく、化学物質の経口投与を効率化することができる。
従来技術・競合技術との比較
・従来の給餌装置と比較すると、より所望の形状に加工できる。
・従来の給餌方法と比較すると、低用量の液体をより多くの個体に経口投与できる。
新技術の特徴
・変形可能
・大比表面積
想定される用途
・殺虫成分の据置型施用
・生物農薬の機能強化
・遺伝子機能解析
関連情報
・サンプルあり
- 製造技術
東京農工大学 大学院工学研究院 先端物理工学部門 准教授 宮地 悟代
新技術の概要
光の波長程度の周期構造体を持った表面は、光の偏光や位相分布を制御することができるため、液晶ディスプレイの偏光子やインクを用いない発色表面、透明マントのような機能性光学表面となる。本発明は、レーザー光を固体に照射するだけで、数10nmから数100nmの間隔の周期構造体をあらゆる固体表面にダイレクトに形成できる技術である。
従来技術・競合技術との比較
微細加工の従来法ではレジスト剤の塗布と真空中での露光、レジスト除去、エッチングのように工程が複雑でかつ薬剤が必要である。本手法は、真空中である必要はなく、レーザーを照射するだけで直接固体表面を削り出すため、レジストのような薬剤や複雑な工程は不要である。
新技術の特徴
・ただレーザーを照射するだけで間隔を容易に制御、高いアスペクト比(市販のフェムト秒レーザー使用)
・ステンレス鋼や窒化ガリウム等、どんな材料にも使える
・レジストなどの薬剤や真空チャンバーがいらない
想定される用途
・液晶パネルの偏光子、無反射表面、構造色表面の作製
・ナノインプリント用造形用金型の作製
・電池電極の微細加工
関連情報
・サンプルあり
- アグリ・バイオ
東京農工大学 大学院農学研究院 生物生産科学部門 講師 鈴木 栄
新技術の概要
本技術は、DNAメチル化制御機構を利用した自発的に枯死する形質を、遺伝子組み換え(GM)作物にあらかじめ導入することにより、収穫後のGM作物が自発的に枯死するシステムである。また、飛散したGM花粉を由来とする雑種も枯死するため、GM作物の意図しない拡散や生態系への影響を防止できる。
従来技術・競合技術との比較
従来のGM作物拡散防止技術は、おもに花粉や種子形成を抑制する形質を利用しているが、この方法では、果実や種子が収穫物となる作物への適用は困難である。一方、本技術では、花粉や種子が正常に形成され、果実や種子を収穫した後、植物体が枯死するシステムである。
新技術の特徴
・植物が必ず保有するカロテノイド生合成経路を標的にするため、全ての農作物に適用できる。
・雄しべ、雌しべ、種子形成は正常なので、果実や種子が必要なGM作物にも適用できる。
・自発的に枯死するため外部からの薬剤処理などが不要で、毒性などのある物質を合成することもない。
想定される用途
・GM作物の拡散防止に加えて、品種の保護にも有効。
・農作物(特にイチゴなどの栄養繁殖性作物)の無断増殖の防止、外来植物や雑草の駆除など。
・様々な生物種へ応用することで、生態系への意図しない遺伝子の流出を防止する。
- 機械
6)プラズマアクチュエータにおける超高電圧不要の高出力化技術
発表資料東京農工大学 大学院工学研究院 先端機械システム部門 准教授 西田 浩之
新技術の概要
大気圧放電を利用した流体制御アクチュエータ、プラズマアクチュエータは、その汎用性の高さから様々な流体機器の性能改善が期待される。本技術は、放電電極の形状及び放電電圧波形を適切に設計することで高出力化を実現するものであり、プラズマアクチュエータの産業応用を加速させるものである。
従来技術・競合技術との比較
プラズマアクチュエータの高出力化には、絶縁性能を高めた上でより高い電圧をかける手法が一般的である。しかしながら、超高電圧の使用は安全性や流体機器の破損につながるため、望ましくない。本技術は、超高電圧を使用せずに高出力化を実現するものである。
新技術の特徴
・超高電圧を必要としないプラズマアクチュエータの高出力化
・複雑な形状・システムを必要としないプラズマアクチュエータの高出力化
想定される用途
・輸送機械の空気抵抗低減
・風車やタービンの性能向上
・熱交換器の性能向上
- デバイス・装置
7)エネルギー変換システムの構築:メディカル-エレクトロニクスデバイスに利用可能な分子性ナノコイルの開発
発表資料東京農工大学 大学院工学研究院 応用化学部門 講師 帯刀 陽子
新技術の概要
本研究で得られた材料は、全て有機物からなる分子性ナノコイルであり、磁場印加下で電気エネルギーを生じる素子である。この素子は配線を必要とせずにデバイスへ組み込むことが可能であることから、電磁波シールド材、無線通信システムといった幅広い範囲に渡り応用可能となる。
従来技術・競合技術との比較
これまでに報告されている電磁コイルは、殆どが金属材料であり、マイクロスケール以上の大きさを有していた。全て有機物からなるナノスケールのコイルが起電力を生じる報告例はこれまでにはなく、更にmVオーダーで電圧を発生させることができる点に新規性がある。
新技術の特徴
・全て有機物からなる分子性コイル構造を有する
・磁場印加下で起電力を生じる
・電磁波を吸収する
想定される用途
・ワイヤレス通信材料
・電磁波吸収材
- 創薬
東京農工大学 大学院工学研究院 応用化学部門 教授 平野 雅文
新技術の概要
生物活性物質に多く見られる部分骨格である共役トリエンやスキップジエンを容易に導入できるホウ素化共役トリエンやホウ素化スキップジエンを触媒反応により1段階で高い位置および立体選択性で合成する新技術である。
従来技術・競合技術との比較
従来技術や競合技術による共役ポリエンやスキップジエンの反応のほどんどは化学量論反応であり、段階的な構築が必要であった。また、最近では反復クロスカップリングによる合成も報告されているが、ホウ素の保護基導入と脱保護など量論反応と同じ操作が必要である。本新技術はワンポット(1つの容器での反応)合成が可能である。
新技術の特徴
・ホウ素化共役ポリエン/スキップジエンの直接合成法
・クロスカップリング反応に適用可能
・ワンポット合成が可能
想定される用途
・ホウ素含有分子標的治療薬
・抗生物質の骨格多様化/合成段階の短縮
・生物活性物質のフロー合成
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
東京農工大学 先端産学連携研究推進センター
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