ライフイノベーション 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2022年10月25日(火) 09:55~14:55
会場:オンライン開催
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、 岐阜薬科大学、横浜市立大学、静岡県立大学、名古屋市立大学
発表内容一覧
- 抗 CKD(慢性腎臓病)効果のある薬物のスクリーニングに有効なアッセイ系の構築 発表資料
- 大腸がん微小環境の抗がん剤抵抗性改善薬の開発 発表資料 プレゼン動画
- 使用済みリチウムイオン二次電池リサイクルに向けたコバルト・マンガン・ニッケルの選択的分離 発表資料
- in vitro試験とラットにおけるin vivo気管内投与試験を組み合わせた簡便急性毒性試験方法 発表資料 プレゼン動画
- 腎結石軌道予測シミュレーションシステム 発表資料 プレゼン動画
- アトピー性皮膚炎を改善する抗菌性脂肪酸の食品微生物生産法 発表資料 プレゼン動画
- 脳細胞の移動・再生を促進する人工足場の開発 発表資料
- がん幹細胞を標的とした抗がん剤創製 発表資料
発表内容詳細
- 09:55~10:00
開会挨拶
岐阜薬科大学 副学長 佐治木 弘尚
- 10:00~10:25
- 創薬
1)抗 CKD(慢性腎臓病)効果のある薬物のスクリーニングに有効なアッセイ系の構築
発表資料横浜市立大学 医学部 医学科 循環器・腎臓・高血圧内科学 准教授 石上 友章
新技術の概要
本発明は慢性腎臓病又は多嚢胞性腎症治療薬およびそのスクリーニング方法に関するものである。発明者は、疾患において重要な役割を果たしている分子の基質となるアンジオテンシノーゲンの高感度かつhigh-throughputな測定方法(αLISA法によるサンドウィッチELISA測定法、α:化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ、<略称、混ぜるだけELISA>)を考案し、自らが樹立したヒト不死化近位尿細管細胞を用いて、アンジオテンシノーゲン分泌抑制効果のある低分子化合物のスクリーニングを行い、数種の慢性腎臓病・多嚢胞性腎症治療薬候補を見出した。
従来技術・競合技術との比較
慢性腎臓病の治療に用いられている、既存のレニン・アンジオテンシン系阻害薬では、腎糸球体血行動態に対する作用と、尿細管に対する作用とを分離することができない。このため、既存のレニン・アンジオテンシン系阻害薬の投与には、腎機能の恒常性の維持を破綻してしまうリスクがある。そもそも尿細管中には、レニン・アンジオテンシン系の構成要素が、血中より高濃度に認められることから、既存薬の効果は尿細管レニン・アンジオテンシン系に対しては期待できない。
新技術の特徴
・尿細管レニン・アンジオテンシン系の基質である、アンジオテンシノーゲンの発現・分泌を制御する化合物を特定する。
・尿細管レニン・アンジオテンシン系が病態に重要な役割を果たしている疾患の創薬を可能にする。
想定される用途
・尿細管レニン・アンジオテンシン系を制御する化合物の探索・発見
- 10:30~10:55
- 創薬
岐阜薬科大学 薬学部 生命薬学大講座 生化学研究室 教授 五十里 彰
新技術の概要
生体内でがん細胞は生存に有利な微小環境を形成する。我々は大腸がん組織に細胞間接着分子のクローディン-14が高発現し、細胞増殖の亢進と抗がん剤抵抗性の獲得に寄与することを見出した。本発明で開発したクローディン-14発現薬は、新しいタイプの大腸がん治療薬になることが期待される。
従来技術・競合技術との比較
抗がん剤治療における治療抵抗性の原因として、薬物排出ポンプの誘導、代謝酵素の誘導などが報告されているが、効果的な治療抵抗性改善薬は未開発である。また、種々クローディン抗体が開発されているが、本発明はクローディン-14への結合、発現抑制、抗がん作用が実証された世界初の中分子化合物である。
新技術の特徴
・胆汁性胆管炎の治療薬の開発
・カルシウム代謝異常の治療薬の開発
想定される用途
・クローディン-14が高発現するがん細胞に対する増殖・転移の予防薬
・クローディン-14が高発現するがん細胞に対する抗がん剤抵抗性の改善薬
・クローディン-14の発現増加が関与するがん以外の疾患に対する治療薬
- 11:00~11:25
- 環境
3)使用済みリチウムイオン二次電池リサイクルに向けたコバルト・マンガン・ニッケルの選択的分離
発表資料静岡県立大学 食品栄養科学部 環境生命科学科 准教授 永井 大介
新技術の概要
CoOの核を持つポリマーをCo/Mn/Ni溶液中に分散させ、酸化物生成を行ったところ、核と同じCoOが集積され、Coを100 %選択分離することに成功した。MnOおよびNiOを核に持つポリマーを用いて同様の方法で行ったところ、MnおよびNiも100%選択的に分離できることが明らかとなった。
従来技術・競合技術との比較
電気自動車のバッテリーであるリチウムイオン二次電池に使用されているCo・Mn・Niはレアメタルであるが、化学的・物理的性質が類似しているため分離法が確立されていない。本研究の方法は、Co・Mn・Ni全てを高純度で分離できる優位な方法である。
新技術の特徴
・Co/Mn/Ni混合溶液から、Co・Mn・Niを全て選択的かつ高回収率で分離できる
・分離するために使用するポリマーの原料は、汎用性モノマーで(アクリル酸、ジビニルベンゼン)低コスト
想定される用途
・電気自動車、PC、スマートフォン用使用済みリチウムイオン二次電池のリサイクル
・Co・Mn・Niの回収用途
- 11:30~11:55
- 医療・福祉
名古屋市立大学 大学院医学研究科 特任教授 津田 洋幸
新技術の概要
本発明は、化学物質の急性毒性吸入曝露試験において、検体をin vitroにおける予備試験と、in vivoにおける気管内投与試験とを組み合わせることで、吸入暴露試験の LC50(4-6h)値またはその近似値を容易にして安価に得ることを可能としたものである。
この方法によって、ラットまたはマウスへの投与量が容易に得られ、従来の様に大規模な設備を使用することなく、狭い用量域を設定できるので、従来より少ない動物数でより正確なLD50値が得られるという特徴を持つ。
従来技術・競合技術との比較
日本国の毒物及び劇物取締法(毒劇法)においては、約500化合物が指定されており、その評価には吸入曝露試験が必要とされている。しかし、化学物質の吸入曝露試験は、世界的に施設が少ないこと、高額な費用がかかることより、多くの化合物が未実施または経口・腹腔内投与試験にて代替されているが、実際の標的臓器と異なるため、正確な暴露データは得られていない。また動物倫理の観点からも、実験において「動物数の削減」は必要であり、実験動物への負担を軽減し信頼度の高い吸入曝露試験の代替法が求められている。
新技術の特徴
・特別な機器を使用することなく実施できる。
・高額な吸入曝露施設を必要としない。
・実験動物数を削減できる。
想定される用途
・化学物質の毒性吸入曝露試験
- 13:00~13:25
- 医療・福祉
横浜市立大学 医学部 医学科 泌尿器科学 助教 古目谷 暢
新技術の概要
結石が腎臓内でどのように動くのか予測するコンピュータシミュレーションである。結石の大きさ、結石の比重、結石の腎臓内における初期位置、尿流、重力、患者の姿勢、運動の種類などを任意に設定し、結石の軌道を予測することができる。
従来技術・競合技術との比較
疫学調査に基づき結石の挙動のごく一部を検証した初歩的な研究は存在するが、尿路結石の軌道を予測するシミュレーション技術はこれまで存在しない。本技術は、日常生活における多様な運動や姿勢に対応して腎結石の軌道を患者毎に予測することができる世界で初めてのコンピュータシミュレーションである。
新技術の特徴
・運動や姿勢の変化による腎結石の挙動を予測することができる
・医用画像検査から得た患者情報に基づいて腎結石の挙動を個人毎に予測することができる
・数百~数万個の結石の挙動を短時間で同時に予測することができる
想定される用途
・腎結石リスク分類ソフトウェアとして医用画像診断機器に実装する
・腎結石排石指導ソフトウェアとして医用画像診断機器に実装する
・排石に最適と予測される姿勢、運動に則って患者を動かし排石効率を最大化する腎結石排石誘導機器を開発する
- 13:30~13:55
- アグリ・バイオ
静岡県立大学 食品栄養科学部 環境生命科学科 助教 菊川 寛史
新技術の概要
C16モノエン酸は、アトピー性皮膚炎を惹起する黄色ブドウ球菌に対して、選択的かつ強い抗菌性を示す。本技術は、ヒト皮膚への利用を念頭に置いて、安全な微生物によるC16モノエン酸の生産を発見し、菌体由来抽出脂肪酸の抗菌性評価およびC16モノエン酸の高生産化を目指した培養法の確立を目指したものである。
従来技術・競合技術との比較
これまでのC16モノエン酸の微生物生産法では、バイオセーフティレベル2の微生物およびその酵素を用いた方法が報告されている。一方で、本技術は食経験の豊富な食品微生物による生産を行っており、安全性および消費者に与える印象が良い。また、本技術の抗菌剤は、アトピー性皮膚炎を改善しつつ日常的に使用できるクリーム等に配合が可能である。
新技術の特徴
・食品微生物による抗菌脂肪酸の生産
・抗菌性脂肪酸の生産性を指標にした培養法
・菌体由来抽出脂肪酸による抗菌性評価
想定される用途
・日常使用によりアトピー性皮膚炎を改善するスキンケア化粧品
・日常使用によりアトピー性皮膚炎を改善する入浴剤
・日常使用によりアトピー性皮膚炎の改善が期待される健康食品
関連情報
・サンプルあり
- 14:00~14:25
- 医療・福祉
7)脳細胞の移動・再生を促進する人工足場の開発
発表資料名古屋市立大学 大学院医学研究科 神経発達・再生医学分野 教授 澤本 和延
新技術の概要
神経細胞接着分子の配列を自己組織化ペプチドに付加し、脳内に投与した後で分子集合体を形成させることで、神経細胞の移動を促進する技術である。この方法を用いることで、脳深部の傷害によって失われる神経細胞を再生させて、脳機能を回復させることができる。
従来技術・競合技術との比較
神経細胞接着分子を付加したスポンジ状の人工足場などは固形物であり、脳内の深部に投与することができない。また、スポンジ状の足場では、内部のポアの多くが行き止まりになっており、中に侵入した細胞が移動できなくなるという課題がある。
新技術の特徴
・神経細胞接着分子を付加した自己組織化ペプチドによる神経細胞の移動・再生促進技術
・インジェクタブルな低侵襲材料であるため細い針を用いて脳深部へ投与可能
・脳内で形成される分子集合体の中を神経細胞が効率よく通過し、脳機能を回復させる効果がある
想定される用途
・新生児脳傷害の再生医療に用いられる
・細胞移植など他の技術と組み合わせることで脳梗塞など成人の脳疾患の治療にも応用可能
- 14:30~14:55
- 創薬
8)がん幹細胞を標的とした抗がん剤創製
発表資料岐阜薬科大学 薬学部 薬理学研究室 教授 檜井 栄一
新技術の概要
私たちは、Smurf2というタンパク質分解酵素が、がん幹細胞の機能を制御することを発見しました。そして、薬理活性が既知の既存薬を含めて、Smurf2の活性化を調節する低分子化合物を複数種類同定し、それらをリード化合物として、がん幹細胞を標的とした新規抗がん剤の創製を行っています。
従来技術・競合技術との比較
創薬標的は私たちが世界に先駆けて見出したSmurf2の新規リン酸化修飾です。がん幹細胞のSmurf2のリン酸化修飾が膠芽腫の発症機序において中心的な役割を担うことを見い出しており、そのリン酸化調節はアンメットニーズを充足しうる治療効果をもたらします。
新技術の特徴
・がん幹細胞を特異的に制御する化合物
・がん幹細胞のタンパク質分解系を標的とした創薬
・膠芽腫を含む難治性がんに対するドラッグリポジショニング
想定される用途
・膠芽腫に対する治療薬・予防薬・診断薬
・難治性がんに対する治療薬・予防薬・診断薬
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
岐阜薬科大学 事務局庶務会計課
TEL:058-230-8100
Mail:syomuk gifu-pu.ac.jp
URL:https://www.gifu-pu.ac.jp/research/collaboration.html
横浜市立大学 研究推進部 研究・産学連携推進課
TEL:045-787-2442
Mail:sangaku yokohama-cu.ac.jp
URL:https://www.yokohama-cu.ac.jp/res_pro/collaboration/02.html
静岡県立大学 教育研究推進部 地域・産学連携推進室
TEL:054-264-5124
Mail:renkei u-shizuoka-ken.ac.jp
URL:https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/cooperation/collaboration/joint-research/
名古屋市立大学 産学官共創イノベーションセンター
TEL:052-853-8309
Mail:ncu-innovation sec.nagoya-cu.ac.jp
URL:https://www.nagoya-cu.ac.jp/science/
新技術説明会について
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
TEL:03-5214-7519
Mail:scettjst.go.jp